プラチナよ安らかに眠れ
相良さん親子が馬を見るたび歓喜している
馬好きに悪い人はいませんよ
俺は皐月と美鈴がいるところへ案内した。
皐月も今回の件について納得したようなので
婚約は無事に成立した。
「ところでお父さん私最初から気になっていたんだけど
どうして最初から相良さんのこと疑うこともしなかったの」
「皐月は親父の家に9年間住んでいたけど
家の前に何があるか覚えているか?」
「毎日見ていたのよ覚えているわ
相良総合病院よ、それがどうしたの」
「元々親父がその家を購入した理由は
俺に関係しているんだよ
お前にも話したよな子供のころに事故で40日間
意識がなかったことわ」
「聞いているけどそれが関係するの?」
「引越しする前に通院していた病院の先生が
東京でおすすめできる脳神経外科があるのは
相良総合病院だと紹介されたからなんだ。
そして優駿君のお父さんが俺の主治医だったんだよ」
「天翔さん昔のことですよ。
今では私はほとんど隠居の身分ですからね
今は長男が外科部長をしています。」
「皐月俺が相良さんのこと信頼している理由わかったか
それにな相良さん天翔牧場のプレミアム会員でもあるんだ
この牧場が出来たばかりの時に入会された恩人だぞ」
「それは知らなかった。優駿なにもいってなかったし」
「父さん 俺も知らなかった」
「家内には話していましたが優駿には話して
いなかったなすまん」
それより気になることがあるお父さん
「天翔さん病院前の豪邸よく購入できましたね
あの頃はたしか景気がいいころだったので
価格が高騰していたと思いますが。」
「そうでしょうね、土地100坪で駐車場と庭つきで
価格は、値引きしてもらって*億くらいでした
私が現金で支払いましたよ、」
驚く美鈴
「え、天馬 中学生か高校生のころよね
そんな大金どうしたのよ」
天馬が説明
「その年のアリーナ記念の当たり馬券
本命が降着で1着が15番人気で2着が14番人気で3着が12番人気
の馬を3連単で購入しました。勿論購入したの父さんだけどね
俺は、馬番を教えただけだよ」
「私その日中山でレース見てました。
確か1番人気が斜行で降着の16着で
1着が15番人気で2着が14番人気の大波乱の時ですね
凄いですね超万馬券じゃないですか?」
「ねえ、天馬それが例のパドック会議なの」
「もう時効だから話すけど、その日の1着と2着の馬の
引退レースだったんだよ。1番人気の馬が
わざと斜行して降着になってお膳立てしたレースでね
仲間思いの名馬だったよ、翌年は見事に1着だしね」
「なんか聞かなければよかったですね、
そんな秘密があったなんて
天翔さんほんとに凄い人ですね」
相良さんには馬と念話で会話ができると
この時初めて伝えたらやはりそれは競走馬好きには
たまらない喜びでしょうなと言われた。
まあこんな感じで和やかな雰囲気のなか
婚約と式の日取りまでとんとん拍子で決まり
善は急げ仕事で忙しくなるまでにと結婚式は
この日から2か月後に執り行われた。
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天馬が愛した馬との別れが現実のものになる
プラチナが30歳を迎えまだまだ元気で大丈夫と思っていた矢先に
まさかあんなことになるなんて天馬は思いもよらず
前日にプラチナから朝の散歩を久しぶりに頼まれた俺は
内心凄く驚きながらもとても嬉しかった。
プラチナの元気な走りが戻ったからだ
その走りは、現役時代の走りを彷彿するほどだ
牧場への帰り道上機嫌のプラチナが
「天馬、今日は無理をいってすまんな
なんか無性にお前と走りたくなったものでな
まあ、なんだ礼を言う」
「珍しいな プラチナがお礼を言うなんて
明日は雪が降るのかな」
「俺だってな 礼ぐらい言えるわ
バカにするな」
「そうだったな すまんな牧場の功労馬だもんな
正直お前がいなかったら牧場も今みたいに
経営が出来ていたとわ思えないからな
ほんとにありがとうプラチナ」
「何だ、天馬の中ではメリーが功労馬ではないのか」
「勿論牧場の功労馬の1頭だけどな
メリー1頭だけでは、ローズは誕生していないからな
お前がいてくれたおかげだよ」
「それにしても珍しくないか
こんなに体調がよかったの最近なかったよな」
「天馬よ、馬の平均寿命は27歳だといっておったな
俺も今年で30歳だ。もういつ死んでもおかしくない
体調の管理はお前の娘がしてるからな
まあ、こんな日もある ただそれだけだ。」
牧場へ戻るとプラチナを綺麗に洗う
気持ちよさそうにしている
プラチナを見ると俺も嬉しくなる
「なあ、天馬いつもありがとう
俺みたいなひねくれた馬の世話ができるのは
お前くらいだ。おかげで30歳まで生きられた
もう、思い残すこともないな
今日馬の神様が来ても俺は文句言わないだろう」
「プラチナ なんかお前変だぞ
なんか俺に隠し事していないだろうな」
「何もない 拭き終わったなら馬房に帰って
ひと眠りするから飯は後でいいい
それと天馬、明日も散歩へ行くからな
寝坊するなよ 寝坊したら騒いでおこすからな」
「わかったよ。寝坊なんかしないから安心しろよ」
俺は違和感を感じながらもプラチナを馬房へ連れていく
馬房の掃除を済ませ一応プラチナがお腹すいても
いいようにといつものように食事の支度もしておく
「じゃあ、プラチナまた明日な」
「そうだな、また 明日な」
プラチナは名残惜しいのか 天馬の姿が厩舎から
見えなくなっても暫く扉のほうを見ていた
「天馬よ ほんと世話になったな 感謝するぞ」
その日の午後
「メリー ちょっと俺のところへ来てくれ
お前だけに大切な話がある」
「私だけなの?わかった 今からいくわね」
メリーがいつものように馬房の扉を鼻で開けて
プラチナの馬房の中へ入ると
プラチナが珍しく寝藁の上で寝ころんでいた。
「あら、珍しい いつも寝るのも立ったままで
めったに寝ころばないのにどうかしたの」
メリーはこの時 プラチナの表情がいつもと
違うのに気がつく
「昨日の夜 俺のところへ馬の神様が来た。」
「え、それって まさか プラチナ」
「ああ、そうだ 俺にもお迎えが来たようだな
でも天馬がいっていたとうり馬の神様
ほんとメリーと同じで綺麗だったよ」
「そのこと今日天馬に話したの?」
「話せるもんか こんなこと話したら
今頃大騒ぎになっておるわ
話すのはお前だけだ」
「正直いって最後に天馬に看取ってもらいたい
気持ちもあるが、天馬に泣かれると辛いからな
だから俺は一人で逝く お前も今日の夜は
俺のところへ来なくてもいい最後の挨拶は
今済ませたからな 天馬のこと頼んだぞ」
「アイツはお前に心底陶酔してるから
下手するとお前の死に耐えられない可能性もある
最悪自暴自棄になり自ら死を選ぶこともあり得るだろう
だからメリーには1日でも長くあいつの傍にいてほしい
まあそれまで俺は我慢するとしよう」
「え、でも 私人間ではなく馬なのよ」
プラチナは首を横へふり否定すると
「お前は天馬との距離が近すぎるからな
わかっていないだけだ
恐らく天馬はお前の死に耐えられない」
「俺も心残りだけど馬の神様が来てしまった以上
俺が明日にも逝ってしまうのは決まっているからな
天馬のこと頼むぞ それと約束は馬の国へ天馬が来た時に
かなえてもらうと伝えておいてくれ」
「プラチナ、私が看取るの迷惑なの?」
「惚れた女に死に際の情けない姿を見せたくない
男心だ。これは厳守してくれ メリーいずれ会うことはできる
今は1日でも長く天馬の側にいてやってくれ」
プラチナの最期の願いを承諾するメリーだが
「プラチナ わかったわ 私、我慢するでも
マロンはきっと悲しむわよ
シルバーはプラチナも好きだけど天馬のことも
好きだからなんとかなると思うけど」
プラチナは話すのもつらいのか横になり目をつぶる
「悪いなメリー 少し眠たくなった
馬房へ戻ってくれ 俺のところへ来るのは
明朝だからな これだけは頼む
愛していたよ 天馬と仲良くな」
メリーは、最後に瞼に焼き付けるようにプラチナの顔をみると
名残惜しそうに馬房を後にした。
「愛していたよ…か もう過去形なのね
私も頑張って生きないとダメね
さよなら私の愛したプラチナ
また 馬の国で再会しましょう」
メリーはプラチナの話を聞いた後でもまだ
半信半疑だった。あのプラチナが自分の前から
いなくなるということが信じられなかったから
メリーは後で後悔することになる あの時強引にいっしょにいればよかったと
メリーが馬房を去り プラチナは夜半過ぎ馬の国へひとり旅立った。
旅立った瞬間 メリーは感じた ああ、もうあの笑顔を見ることが出来ないのだと
メリーは自分の馬房を飛び出してプラチナのもとへ行くが既に息絶えていた
プラチナの姿がありその死に顔はまるで笑っているようだった。
プラチナに縋りつくようにメリーは声を殺して泣き出す
メリーの涙が枯れはてたころプラチナとの約束を守るため
厩舎へ天馬が顔を出し泣き顔のメリーとその傍らには
変わり果てたプラチナの姿を目の当たりすることになる
『さらば 天翔牧場の功労馬 プラチナ』




