皐月、激怒する 前編
天翔皐月は中学卒業後9年の歳月をかけ念願の
臨床獣医師の資格を手にした。
※医師とは違い管轄は農林水産省の管轄であり
皐月が目指す臨床獣医師の資格を取るには
大学入学から最低6年かかる長い道のりです。
皐月は在学中に知り会った相良優駿からプロポーズされ
二人は婚約者になりましたが、まだお互いの両親の了承を
貰えていないので皐月は地元へ帰る前に
婚約者の家に報告に向かいました。
実は相良優駿の自宅は、天馬の両親の家からも近く
近所でも有名な相良総合病院の次男坊でした。
優駿は、両親に皐月のことを簡単に説明する際
北海道の静内で小さな牧場を経営していると
両親に告げていたため両親は、牧場への多額の援助を
頼まれるのではないかと疑心暗鬼になっていた。
優駿と皐月は座敷へ案内されて座布団の上に座る
対面には優駿のご両親が
「天翔皐月さんご両親が静内で牧場経営されていると優駿から
聞きましたが、産駒で重賞レースの勝ち馬は
いたのでしょうか?」
優駿の父は、重賞レースの勝ち馬が出ていれば
優秀な産駒を生産している牧場なので
経営は大丈夫ではないかと思ったためだが
皐月はこの言葉で不信感が芽生えた
「はい、国内の重賞レースの勝ち馬はいますけど
婚約の許可をいただくのにそれは必要なことでしょうか?」
「父さん 皐月に失礼ではないですか?」
優駿の父親は優駿をにらみ黙らせ皐月を見据え
「正直に伺います。失礼ですが牧場の経営は順調でしょうか
それとも借金でお困りの状況でしょうか?
援助目的で優駿との結婚を望むのでしたら
こちらからお断りいたしますので
どうぞお引き取りください。」
頭のいい皐月はお父さんの言いたいことが
理解できた。失礼な勘違いですけどね
姿勢を正し正座する皐月
「ではこちらも正直にお答えいたします。
うちの牧場の産駒には、ドバイワールドカップ
とパリ外旋門優勝馬がおります。
経営は順調です。また昨年のセレクトセールでは
**億円で落札された当歳馬がおります
借金など1円たりともございません」
「父さん はやく皐月に謝って
彼女相当怒っているから
父さんにも説明したよね
皐月の家の牧場は全国でも有名な
天翔牧場だと失礼なのは父さんだからね」
皐月の返答を聞いた優駿の父親は
相手を見下した大変失礼な言い方をしたのに
気がついた。俺は何様なんだよ
え、天翔牧場だと俺は聞かされていないぞ
「もう、いいです私帰ります。
優駿悪いけど婚約の件はなかったことにして
私両親と牧場のことバカにされるの一番
腹が立つから さよなら」
「父さんのせいだ もういい俺もこの家出て
皐月と北海道へ行くから 母さんサヨナラ」
「皐月、待ってよ~」
皐月の名前を呼びながら駆け出す優駿
これは結婚してから尻に敷かれますね
「あなた優駿相当怒っていましたよ
あのように怒った顔私でもみたことありません
本気で皐月さんのこと好きなんでしょうね」
「恐らくあの子皐月さんについて静内へ
いったと思いますけどどうされますか?」
「すこしほとぼりが冷めるまで時間を置くよ
今回は私の驕りが原因だからな
時間をおいてから謝罪に行くよ」
「それがいいでしょうね
でも皐月さん親御さん思いのいい子ですね
優駿にはもったいない才女ですよ」
「そんなこと お前に言われんでも
最初で気が付いた。
優駿のやつ 静内の牧場といったが
天翔牧場だと聞いてなどいない
聞いていればこんなことにならなくても
よかったのにな」
「今度の週末にでも謝罪に行くとしよう」
「それがいいでしょうね」
皐月と優駿は荷物をまとめ週末飛行機で静内へ向かいました。
新千歳空港で、
「ねえ、皐月さん このヘリなに?」
優駿の目の前には綺麗なヘリコプターが待機していたが
その機体には佐藤牧場と天翔牧場の名前がペイントされている
「お爺ちゃんが、迎えによこしてくれた
自家用のヘリですよ、さあ、乗ってください」
親父のバカやろ~ どうやって落とし前つけるんだ
皐月のお父さん佐藤さんの娘さんのお婿さんだぞ
俺の立場が悪くなるいっぽうじゃないか
なぜそうなるかと言いますと優駿の就職先は
佐藤牧場だったからですね
元々相良総合病院を継ぐのは上の兄と決まっていたため
優駿は獣医師を目指すことが出来ました。
なので就職先は大好きな馬がいる場所北海道ですよ
皐月は、久しぶりに対面するお爺ちゃんに
経緯を説明、お爺ちゃんは優駿を責めることはなかったが
その父親に関してはあまり良い印象を持ってはいない
「最初に確認していればこんな状況にならなかったのにな
総合病院の経営者だから田舎の牧場経営が悲惨だと
最初から疑ってかかるからこうなるんだよね
で、君はこれからどうするんだ。」
「はい、私は佐藤牧場で獣医師として働きたいです
相良家と縁を切り天翔優駿になります。
まあ、皐月のご両親が認めてくれればいいのですが」
「それぐらいの覚悟があれば私も力を貸すよ
孫の泣き顔なんて見たくないからね」
それから2人は天翔牧場へ向かいました。
そこは優駿にとって夢のような牧場でした。
子供のころに憧れていた馬たちが元気に歩き回る姿を見て
感動している
「うわ~~~ 皐月から聞いていた世界が夢の世界が
目の前に広がっている~~
え、あの馬は、エクセレントローズでその横にいるの
ブリリアンスターだよな 引退後にまた会えるなんて
なんて幸せなんだ~」
お客が来ない日は、厩舎内を自由に徘徊しています
皐月が近くにいるので馬たちも優駿に警戒なんてしてません
「優駿そんなとこで感動してないで
お父さんたちに会うのでしょう
しゃっきりしなさいよ」
「あ、そうだった。 皐月行こうか」
まあ、この厩舎初めて見ればこうなるかな
皐月に案内されて向かうは母屋だ。
さあ、優駿の運命はいかに… 次回へ続きます。
優駿と名前をつける時点で馬好きとわかるお父さんですので
誤解が解ければなんとかなりそうです。
因みにこの相良さんは、天翔牧場の会員です。




