メリーの後輩、ストロベリーの登場
天翔牧場の事務所内
「ねえ、天馬 何見ているの?」
パソコンで添付されたメールの内容を見ていた天馬が美鈴へ答える
「処分予定の馬のリスト」
普段そんなメール来ないので不思議そうな美鈴
「毎回そんなリスト送られてくるの?」
「今回初めてかな、今までは、リストの馬を馬バスで届けます
だけだったからな 今回たまたまじゃないのかな」
「それで馬房の空きは、」
「今現在は2つだけ空いている」
「それで家で繋養したい馬はいた?」
天馬はリストを上から下へ見ていく
するとリストの一番下に懐かしい牝馬の名前があった
「今回この馬を牧場で引き取り繋養するよ」
「どれどれ、牝馬のストロベリーか G1馬よね」
「それ以外の理由もあるけどね」
数日後、到着した馬バスから1頭の牝馬が降ろされた。
「それでは天馬さん受け取り確認お願いします。」
馬バスの運転手から明細書を渡され受け取りのサインをする
「はい、確かにお預かりします ご苦労様でした。」
伝票の受け取りを確認すると
「それじゃあ、失礼します」
運転手はお辞儀をすると馬バスへ乗り込み
牧場を後にする
天馬はストロベリーの手綱を握り話しかける
「お久しぶりですねストロベリーさん
俺のこと覚えていますか?
メリーの引退レースで会いましたけど」
不意に話かけられて驚くが、そのおかげで思い出す
ことができた。
「15年前ですかね はい、覚えていますよ
馬と話せる人間なんて貴方だけですからね
ということはここにメリー先輩いるんですか?」
「はい、あれからいろいろありましたけど
なんとかメリーを繋養できるようになりました。」
「メリー先輩に会えますか?」
勿論ですと答える天馬
「それじゃあ今から案内しますね
あと今日からこの牧場で繋養しますから
のんびりと過ごしてくださいね」
辺りをキョロキョロ見渡すストロベリー
「へえ、いい感じの牧場ですね綺麗だし」
「ありがとうございます、何か不便なことありましたら
何でもいってください
うちの馬たちは皆遠慮しませんからね」
ストロベリーを厩舎へ案内する天馬
また今回もいつもと同じで厩舎へ入ると
「うわ~なんですかこの涼しい風 気持ちいいですね」
「牧場の自慢の一つのエアコンですよ
トレセンでもあったと思いますが」
ストロベリーは、頭を左右に振る
「私がいた厩舎は、羽根が回る扇風機だけでしたよ
夏は死ぬほど暑かったです。
ここは天国ですね」
「それとこの厩舎変わってますね、
同胞たちが、馬房から出てきてますけど
これが普通なんですか?」
「はい、外部からのお客が来ないときは馬房を開放してますから
厩舎内は、自由に散歩できますよ」
俺の声で反応したメリーが馬房から顔を出す
「あら~懐かしいわね ストロベリー」
「え、あ~メリー先輩 お久しぶりですね」
突然俺の顔をペロペロ舐めるメリー
「ここにいる天馬のお陰で私は元気よ」
「それで、ストロベリーはどうしてこの牧場へ
きたのよ、繋養先の牧場は?」
「はい、潰れました。ほかの仲間も
他の牧場へ連れていかれたりして
バラバラですよ」
「牧場の厩務員さんたち みんな いい人でしたから
潰れてしまって残念でした。」
ストロベリーさんが繋養されていた牧場は
規模も小規模なので生産馬が上場され売却されないと
すぐに経営難になる 今回借金が返済できなくなり
牧場の土地建物が競売にかけられた。
「でもあなた ここへ来れて幸せよ
貴方は死ぬまでのんびりとここで暮らせるわ」
「それじゃあ、他の牧場にいた仲間達は何処へ
連れていかれたのでしょうか?迎えに来た
馬バスはなんか汚くて変な匂いがしました。
そこに4頭載せられて行きました。」
メリーがストロベリーに近寄り
耳に小さい声で呟く
「*****の餌にされるのよ」
メリーそれは変だろ 念話ができるのにそれ意味があるの?
「え~嘘ですよね ライオンの餌ですか?」
「せっかく伏字にしたのに意味がないじゃない」
「ねえ、天馬さん メリー先輩のいったこと嘘ですよね」
「ストロベリーさん今メリーがいったことが
真実かどうか俺にもわからないのですが
ただ、ストロベリーさんが繋養されていた牧場の馬は
ストロベリーさん以外は用途変更されてますので
最悪のケースは、メリーのいっていたのと同じ
ことになります。」
「え、それじゃあ 私だけが助かったのですか?」
「今の時点ではわかりません、どこか別の引退馬繋養牧場へ
引き取られた可能性もありますからね」
俺は嘘をついた用途変更された馬はまず
処理施設へ送られる そうしないとDRAが馬の個別管理できないからだ。
「そうですか 離れ離れになるのは寂しいですが
生きていればまた会えますからね
メリー先輩と私のようにね」
「離れ離れと言えば、メリー先輩
シルバー姉さん 何処へいったか知りませんか
出走したレースで姉さん転倒して医務室へ
運ばれたんですけど それ以来音信不通なんです。」
ストロベリーさんもあのレースに出ていたのか
俺たちが会話しているところへ当人登場
「誰かと思ったら ストロベリーではありませんか
貴方もこちらで繋養されるのですか?」
シルバーさんが目の前に現れて幽霊かと
思ったストロベリーさん慌てる
「姉さん 何でここにいるんですか?
肢はありますか?」
「この子は何を言うかと思えば、
肢はちゃんとあるわよ」
「ほんとだ、姉さん生きてたんだ。よかった」
ストロベリーさんは、シルバーに頭をこすりつけ
泣き出した。
「ほんと心配しましたよ。風の噂で骨折して
予後不良と診断されて安楽死処分されたと
聞かされたので」
「あなたは、いい子ですね
でもね、半分は当たっているかしらね
ここにいる天馬のお陰で命拾いしたわ
本来なら安楽死処分されていたでしょうね」
ストロベリーさんが頭をこすりつけるのをやめて
涙目で俺を見る
「天馬さん ありがとうございました。」
「あの時は、偶然競馬場にいましたからね
そのおかげで安楽死処分前に無事手術できました。
馬主さんにも感謝しないといけませんよ
この牧場で繋養できたのは馬主さんが許可してくれた
お陰ですからね」
「それでですね、突然話変わりますが、聞いてくださいよ
私が前にいた牧場での話ですが、種付けするときにですよ
毎回言われたんです、天翔牧場の産駒に負けない仔馬を生んでくれと
それってメリー先輩やシルバ―姉さんの産駒のことですよね」
ほんといきなり話が変わったな
「恐らく私たちの産駒のことよね
それでそのあとどういわれたのかしら」
「私に種付けする種牡馬って毎回お爺ちゃん馬なんですよ20歳以上の
それでその中には、種付け中に病気でお亡くなりになる
お爺ちゃんもいましてね もう大変でしたよ」
興奮して心臓発作でも起こしたか脳卒中だろうか
それ以外の可能性だと牝馬に蹴られて倒れたときの怪我で予後不良
と判断されて安楽死処分されたケースもあるけど
その場合は賠償問題に発展するのかな
「貴方ねえ はやく結論を言いなさい」
「ここからが盛り上がる話なのに~せっかちですね
まあいいでしょう お二人とも種付けしたの
プラチナさんですよね プラチナさんが種付けした産駒に
勝てるわけないじゃないですか」
「まあ、確かに私たちに種付けしたのあの馬だけだけど」
照れながら言うのやめてください
可愛いすぎるから
「もう、これだから恵まれた環境で繋養された牝馬に
敵うはずがありません、それにメリー先輩の娘さん
世代は、無敵で無双してましたよね
親子2代で日本ダービー勝つなんて普通あり得ません」
私たちのことですねとローズとスターが顔を出す。
ストロベリーは、それにはスルーした
「私にも優れた種牡馬が種付けしてくれてれば、
牧場は潰れませんでした。」
「それじゃあ、ストロベリーさん試してみますか?
その優れた種牡馬に種付けを」
「でもでも プラチナさん引退してますよね」
「プラチナは引退しましたけど娘のローズに
種付けした日本最強種牡馬の後継馬がいますよ」
「それは、伝説の馬と言われたメテオプリズム様の
息子さんですよね」
「そうです、最後の産駒と言われたメテオライアンは、
ここで繋養していますからね どうです」
俺は、メテオライアンを連れてきてストロベリーさんに
逢わせるとその瞬間大興奮する
「私、3年ぶりに発情しました 是非種付けしてください
お願いします これで思い残すことありません」
善は急げとばかり2頭が 空いてる馬房へ駆け込み種付けが
行われました。
これで来年春には、元気な仔馬が生まれますね
それとストロベリーさんは、用途変更されてません
繁殖牝馬のままでした。
ストロベリーさんはこの小説の1話目で出てきます。
引退レースでシルバーさんと共に登場しています。




