日本ダービーレース前のイベントで何かが起こる
5月 日本ダービーの開催日当日
エクセレントローズとブリリアンスターは金曜日
無観客での予行演習は無事に終了していた。問題があるとしたら
ブリリアンスターの騎手役がまだ決まっていないことだろう
トークショウは俺の奥さんがいるから問題なく進行できるし
楯さん現役引退しているから誰が騎乗するのかな
予行演習では俺が代役で騎乗したが、当日は現役騎手が乗るはずだ
ローズと娘のスターがはしゃいでスタンド前を普段のように走るから
DRAの企画担当の人、慌てていたな 怪我しないでくださいよと
涙目だったしな
怪我したら賠償問題大変何ですから~そんなに走らないで~だからな
DRAのホームページにはゲストが来場されます
当日のイベントを楽しみにしてくださいと掲載されていた
イベント内容は、当日朝発表にしてるけど
内容が非公開で当日お客来るのか?
俺は危惧していたが、レース開催日当日は指定席完売で入場制限まで
していますよ。
どうもDRAの職員の誰かが予行演習画像の一部をネットへ投稿し
それを見たファンが拡散したらしい おい、しっかり管理しろよな
いやこれもDRAの作戦か?
それと当日の朝、俺は相手役の騎手の方とお会いしました。
「これは、楯さんお久しぶりですね
ご旅行はどうでしたか?」
「天翔さん、ご無沙汰しております
はい、久しぶりの水入らずでしたからね
妻も喜んでいました。」
楯さんは、勝負服を着ている
「その勝負服、それでは楯さんがスターに騎乗するんですね」
「当然です、スターには僕以外は騎乗させませんよ」(笑い)
「実を言いますと旅行から帰ってきて偶々
DRAの知り合いからイベントのこと聞きましてね
その時すでに騎乗する騎手は決まっていましたが、
権利を譲ってもらいました。」
その後楯さんから旅行の思い出話を時間が来るまで聞くことになる
イベント前の打ち合わせ時間
美鈴と楯さんのイベントでのミーティングが行われる
俺は会話に参加できなかった
会話が騎手にしか解らない専門用語なので
疎外感を感じます。
「天翔さんイベント盛り上がりますよ。」
楯さんのいかにも自信ありげの言葉
イベントは、11R前の10Rの時間を利用して行う前座のスタイル
民放の女子アナが司会者となりウイナーズサークルで
観客に呼びかけるところからスタートする
日本ダービーを盛り上げるイベントが始まる
「まずは、大型モニターをご覧ください」
モニターに映る映像は、過去のレースを振り返る映像がながれる
その中には当然、エクセレントローズとブリリアンスターの
映像も含まれる ここからだな
次に映される映像は、エクセレントローズの3年間の軌跡として
ダイジェスト映像がながれる
勿論若い時の美鈴の姿も映し出される
今でも綺麗だけどやっぱり綺麗だよなうちの奥さん
エクセレントローズの最後のレース、アリーナ記念の映像がながれ
観客から大きな悲鳴があがる そう故障した瞬間の映像が含まれるからだ
この映像は、正直俺も見たくない
そして画面が暗転してテロップがながれる
『エクセレントローズから娘へのバトンタッチ』
そしてそこからはブリリアンスターの名勝負の映像がながれ
その中には勿論 ドバイでの勝利と外旋門賞での勝利も
映像として映し出される。
最後は昨年の引退レースアリーナ記念
また再び暗転後
『そして2頭の名馬はここに甦る、そう不死鳥のように』
おお、なんか盛り上がってきた~
モニターに映し出された映像は、4コーナーの中央付近
シートで囲まれた何かがある
次の瞬間シートが外されて中から出てきたのはスタートゲート
ゲートの中に馬が2頭いるのがわかるが遠くて確認できない
出走係員が、赤旗を振るとG1レースのファンファーレが
楽隊により演奏される
演奏が終わるのを合図にゲートが開き
いつもの実況アナウンサーの声が競馬場に響き渡る
「スタートしました。」
「2頭ならんで綺麗なスタートです。」
「ハナを取り先頭を行くのは、3番エクセレントローズ
そのあと1馬身遅れて1番ブリリアンスターが追走して
4コーナーに向かいます。」
この馬番は、当時の馬番のまま再現されているが
なんか予行演習の時よりも明らかに速度が速い
本番さながらなので実況にも熱がこもる
「2頭並んだまま最期の直線へ ここからは上り坂だ。
だが、2頭どちらも譲らず 並んで勢いよく駆け上がっていった~」
直線に入るとスタンドにいるお客の目にも走る馬が
誰なのかわかると歓声が巻き起こる
「ブリリアンスターが走っている」
「え、その横の馬って まさかエクセレントローズ」
「引退した名馬にまた会えるなんて夢か幻か?」
「ゴールまで200を切ったが、2頭はまだ並んでいる~」
「オイ見ろよ 引退馬と思えない見事な走りだ
現役の馬より 速いかもしれない」
最後の直線でも2頭は離れず ほぼ並んでゴールした。
実況しているアナウンサーも大興奮で叫んでいる
「2頭ともほぼ同時です。わずかに内のブリリアンスターが優勢か」
「いや、エクセレントローズの鼻が先だよな」
「バカ いえ ブリリアンスターが優勢だよ」
本番さながらのレースでモニターにはゴールの瞬間が表示される
モニターでの表示は、わずかに鼻差でブリリアンスターが先にゴールしている
掲示板にも1着…1番 2着…3番 確定と芸が細かい演出
1コーナー付近まで走っていった エクセレントローズとブリリアンスターが
正面スタンド前を返し馬並みの速度で観客に手を振りながら
ウイナーズサークルへ戻ってきた。
ウイナーズサークルで騎乗してる二人の騎手が馬から降りる
俺は2頭の手綱を握り声をかける
「ローズ、スターお疲れ様 肢は大丈夫か?」
『パパ、疲れたけど 久しぶりで楽しかったよ』
『わたくしも お母さまと走れて楽しかったです
勝負も私の勝ちですわ』
『娘なら母親に勝ちを譲ってくれてもいいのにね』
『勝負である以上母親でも関係ありませんわ
でも、今まで走った誰よりもお母さまが
一番速いと思いました。』
『まあ、それならいいいか
また、しようね』
もうないと思うよ 恐らく多分 でもな~
お、そろそろ インタビューが始まるが
2人がヘルメットとゴーグル外し素顔を見せる
司会者は、2人が誰か知っているので慌てないが
観客には知らされていないので大歓声が
「盾騎手と佐藤騎手です。 皆さん 拍手でお迎えください」
パチパチパチパチ~
モニターにも二人の素顔が映し出される
「引退した盾騎手と佐藤騎手だよ
もう、会えないと思っていた人に会えるなんて
今日来てよかった~」
「確か佐藤騎手は引退後結婚したよな」
「そうだ、今は牧場経営してるよ 夫婦でね」
「ちょうど、2頭の手綱を引いてるのが旦那さん」
アナウンサーの司会者が
「盾騎手、凄い走りでしたけど 本気でしたか?」
「勿論本気ですよ ほとんど差がつかないなんて
驚きです。昨年のレースでも鼻差なんてなかったですからね」
「え、それじゃあ エクセレントローズは、現役の馬より
速いということですか? それはないですよね
引退してもう5年ですよ」
「そうですね、短距離ならまだ現役で通用すると思います。」
「え~と 普通現役引退したら調教はないから
走らないのが普通ではないのですか?」
「普通の繋養牧場ならそうですけど
天翔牧場では繋養馬はすべて同じくらい
走りますよ 例えばプラチナシップも今でも
走りまわってますからね」
「そうですか、今日はこちらに牧場の厩務員さんがいますから
聞いてみましょうか?
天翔美鈴さん ほんとですか?」
ナイス 司会者 本名で呼んだね
「はい、楯さんの言葉どうりです
繋養馬は、今日ぐらいのこと普通にしますね」
ここで台本にないが、モニターに映しだされた映像
天翔牧場の厩舎と各馬房のネームプレートが映り馬の映像がながれる
エクセレントローズの馬房には今でも千羽鶴が飾られている
プラチナシップ、メリーローズ、エクセレントローズ、
ブリリアンスター、ホワイトマロン、ラベンダーライク
シルバーと最後にチャコちゃんが映る
「スゲーG1馬ばかりじゃん」
「一度 いってみて~この牧場」
「なんか、オールスターメンバーですね」
司会者、まじな感想です。
そしてまた楯さんへ話が戻り
「盾騎手は今後は、どうされるのですか?」
「そうですね、調教師を目指そうと思います
ブリリアンスターのような名馬を
預けてもらえるような調教師になりたいですね」
楯さん 進路が決まったんですね
調教師開業したらうちの牧場から競走馬預けますからね
まあ、こんな感じで 余興は終わりました
日本ダービーですか、
1着と2着は、家の牧場の産駒ですね
ただお客さんが帰るときに話題になったのは前座の2頭のレースでした。




