スターの引退と新たな要請
佐藤牧場
ブリリアンスターは、美浦のトレセンで次戦に備え休養してます。
「天馬クン ブリリアンスターアリーナ記念で引退させるの?」
「はい、彼女はけっこう無理してますからね
当人は大丈夫問題ないですわといってますけど
半年ほど休養しても靭帯の炎症は完治しないと思います
それに無理をすると繋靭帯炎を発症すると獣医の先生にも
指摘されました。」
「成績も4歳馬としてずば抜けていますし
もう、牧場へ連れて帰りのんびりさせたいと
思います。」
「そうか、君が決断したのなら名目上の馬主の私には
反対する権利はないよ。ブリリアンスターは、君が所有している
繋養馬だからね」
「それで盾騎手にはもう?」
「ちょうど外旋門賞帰りの休養を兼ねて天翔牧場へ来れられたので
そこで引退の話はしました。」
「ということはそれ以外に何か問題があってここへ来たんだね君は」
さすが年の功ですね。
「盾騎手にスターの引退の件をお話したら盾騎手が、
そうかそれじゃあ僕もアリーナ記念で騎手を引退しようと
言われました。」
「それは随分と急な話だね、理由は聞いたのかな?」
「それが、引退の件は年齢のこともあり前々から
考えてはいたらしいのですが、決断したのは
スターの主戦を任されてドバイで優勝したその日に決断したそうです。
夢は叶いもう思い残すことはないと奥さんにも帰国後
告げたそうです。スターが引退したら自分も騎手を引退すると」
「そうかレジェンドと呼ばれた騎手にも決断する日が来たんだね
でも夢が叶ったのならそんな喜ばしいことはないよね
オマケに外旋門賞も勝っちゃったからね」
「オマケは騎手の方にも大変失礼ですよ。
美鈴に聞きましたけど、DRAの騎手になると
最初の目標は、まずはとにかく1勝することで次は重賞レースに勝つこと
それも叶うと次はG1レースで勝ことで特に憧れは日本ダービーとアリーナ記念で
勝利することだそうです。そして一流の騎手と呼ばれるようになると
新たな目標は、ドバイで勝ことでそれと同じくらいで外旋門賞で勝つことだそうです。」
ドバイで勝った時楯さん涙ぐんでいましたから
本人も感無量だったんでしょうね
「そうか、わかった引退レースの件は私からDRAの方へ
申請しようDRAも観客動員できるから喜ぶだろうね
それも今回は、競走馬と騎手両方の引退だからね
頑張って勝利してウイナーズサークルで有終の美で飾りたいね」
そんな夢のような展開を叶えてしまうのは
ブリリアンスターの凄いところでしょうか
DRAのホームページで引退レースが年末の中山アリーナ記念と発表されて
指定席の申し込みが殺到しオンラインが一時不通になる異常事態が発生
指定席が確保できなかった観客は、入場制限がかかるのが明白なので
1週間以上前から入場ゲートの前で泊まりこむ猛者が多数現れた。
当日早朝、前日の深夜からNR船橋法典駅から競馬場までの歩道に
〇万人の行列ができ、警備員と所轄の警察の人が警備に当たっている
俺たちは2日前から競馬場内の厩舎の馬房に入厩して準備を整えていた。
混乱を避けるため早めに移動してきました。
馬バスが非常に目立つためです。
朝8時、入場ゲートが開くとここでも人間達の熾烈な競争が行われる
我先にと自由席の確保と撮影場所の確保にグループで対応
第一レース前から競馬場は熱気に包まれています。
天気が冬空の快晴でほんとよかった。
引退のセレモニーは、レース終了後行われる
肝心のレースですか? 1番人気に押されたスターが負けるわけもなく
2着に大差をつけての勝利です。
「スター肢は、痛くないの?」
『お父様。わたくし 大丈夫ですと言いましたわよね
あの程度の炎症なんてダートで遊べば1日で治ります
獣医さんもお父様も大袈裟です。
まあ、その ありがとうございます。
ご心配おかけしました。』
「ほんとこの子、ダート好きだな
あ~あそうか泥遊びが好きなんだ」
それでも俺は獣医さんの意見を尊重して引退させます。
素人判断は危険ですからね
中山競馬場 日が沈み 月が浮かぶころセレモニーが始まる
いや何度体験しても感動するな
ウイナーズサークルには、楯騎手が
司会者からの質問に答えている
定番なら一番記憶に残るレースはとかだろう
最後の質問は、引退後は何をされるのですか?
まあ、騎手なら引退後は調教師を目指す人も多いけど
楯さんの答えは、
「はい、妻にこれまで苦労を掛けましたので
暫く二人きりで海外へ旅行へ行きたいですね
それ以降のことはまだ決めていません」
楯さん まだ決めていないのか
最後は拍手で見送られて競馬場を後にしました。
忙しい年末が終わり 新年を迎える
今年からは、牧場の仕事しかしないと初日の出の時誓いを立てたが、
数か月後 もろくも崩れされる出来事が舞い降りた。
そんなに大ごとではありません。嘘つきました。
お義父さんのところへDRAから使者が来訪
その席へ呼ばれた俺
「天馬クンまあそこの席に座ってくれ
紹介するよ、DRAの君の元上司の宣伝企画担当部長の関根さんだよ」
俺は言われたとうり椅子に座り名刺をもらう
確かに上司ですね 懐かしい
「それでお話と言うのは何でしょう?」
「天翔君、そんなに身構えないでくれないかな
君にも悪い話ではないのだから」
「天馬クン僕から説明しよう」
なんでも今年のDRAは、新年から業績があまりよくないらしい
平たく言えば客を呼べるスターの馬がいないとのこと
馬券の売り上げが昨年に比べて大幅に減少しているため
対策として何かイベントを企画することにしたが
ことごとく頓挫して打つ手がないらしい
まあ、今年はうちの牧場からの目ぼしい産駒出ていないからな
でも昨年2歳馬デビューしたメリーとローズの産駒が
いたはずなんだけどあの2頭はどうしたのだろう
「天馬クンは、昨年2歳馬でデビューした馬がいるはずと
考えているよね」
どちらも牡馬だったから上場したんだよな
名前は、ローザリオベルガーとメロンソーダの2頭
ローザリオベルガーは、夕日杯勝って
メロンソーダは、ホープフルの勝ち馬
「普通に成績はいいのだけどインパクトに欠けるんだね
それに3歳馬4歳馬にスターホースがいないから
G1レース開催日でも競馬場に観客呼べないんだよ」
「いや、普通に白毛のスターよりインパクトがある
馬なんていないでしょう」
「天翔君それだよ、ブリリアンスターがインパクトがありすぎて
その反動が今年の減収につながっていると
DRAの幹部も認めているよ」
「なんか無茶苦茶な話ですね
それで俺にどうしろというのですか?」
「単刀直入に言うとね
今度の日本ダービーの開催日のイベントに
エクセレントローズとブリリアンスターの2頭に
出演依頼をしに来たのだよ
なんとか頼むよ 昔のよしみでね 助けてくれないかな」
引退馬に出演依頼ですか?
まあ、ないこともないですね客寄せパンダと同じです
引退馬を連れてきて当時の主戦騎手も参加して
司会者を交えてのトークショーです
「これがねえ、企画書なんだけど
一度目を通してくれないかな
断るとしても読んでからでも遅くないから」
企画書を渡された。お義父さんは既に既読済みのようです。
どれどれ、その企画書には文書だけでなく
絵コンテも描いてあるので内容が頭に入りやすい
へえ、騎手も当然2名用意してメインスタンド前を軽速歩で走り
ウイナーズサークルへ戻り馬から降りる
その後はトークショウで終了 企画書を読み終わると
「わかりました。このご依頼受託しましょう」
「そうですか、ありがとうございます。助かります
詳しいい説明と契約の方は彼が担当しますので」
後ろで立っていた黒縁眼鏡の人が頭を下げる
契約を済ませた後で
「天馬クン 契約を済ませた後でなんだけど
ほんとによかったの エクセレントローズとブリリアンスターは、
繁殖牝馬登録してるよね今年は空胎なのかな?」
「勿論です、受胎してれば馬バスにも緊急時以外乗せませんよ
エクセレントローズは、3年ごとに1年は空胎期間をもうけて
リラックス出来るようにしています。
ブリリアンスターは、相手がいないので来年からの予定でしたから
依頼を受けました。」
「それもそうか、君がそんなミスする訳ないよね」
こうして前代未聞と言われるイベントが日本ダービーの日に行われることになりました。




