無敗の3冠馬 誕生したが、まだ終われない
日本ダービー当日朝
お義父さんは本日の口取りのため正装で競馬場まで向かった。
何があるかわかりませんよ、ダービーは運がいい馬が勝ちますからね
それだと運がいい俺の娘のスターが負けるわけないか
東京競馬場11Rのパドックでは、牡馬が大人しく厩務員に連れられて
周回しているが、時々こちらに視線を向けため息をつく馬がいる
今回レースの枠番は、東京競馬場では有利とされている1枠1番を抽選で
手に入れた。まあこの段階で運があると言えるのかな
左回りのこのレースでスタート後に1コーナーに向かうが
スタートが上手いスターには好都合の枠番先行逃げ切りもできるからだ
鞍上の盾騎手も普通なら周りを囲まれて窮屈な思いして
1コーナーへ向かう馬もいるが、スターの肢なら囲まれる前に
抜け出して1コーナーを通過できるから問題ないとのこと
パドックで牡馬の皆さんの愚痴です
「あ~あ 今日のダービーもあの娘に取られそうだな」
「先行逃げ切りが得意な馬に1枠1番なんて最初から1着が
約束されたものじゃないのか?」
「ああ、そうだな お前が差しが得意でも
ゴール前5馬身は離されたままゴールするだろうな」
「俺なんか2歳の時G1夕日杯勝ったんだぞ」
「勝てたのは彼女がいなかっただけだよ
いたら確実に負けてたよ」
「それにしても可愛いい牝馬だよな~
引退後に是非種付けしたい」
「それは俺も同感だが、種付けするのには成績が良くないと
種牡馬になれないってお前知ってるか
彼女にクラシック3冠もってかれたら俺たち同世代の牡馬は
種牡馬になれないぞ」
「俺頑張る、1着は無理でも2着を取るぞ
とって彼女に告白するんだ
種付けさせてくれとな」
「お~頑張れ 8枠17番 タニンマカセ君」
「スター周りの雑音気にしないでね
皆、雑魚ばかりだから
俺が種付けなんてさせないから」
『大丈夫ですよ、お父様、わたくし 天翔家の娘として
良家の牡馬の殿方を選びますから
相手になんかしませんわ もし来たら 蹴り飛ばします』
蹴り飛ばすといいながら 周りに蹴りをアピールするスター
「やべ~俺蹴り飛ばされそうだ」
「それにしても 良い肢してるな」
まあ、こんな牡馬の皆さんですからレースでも
スタートから飛び出して先行逃げ切りで楽勝でした。
ウイナーズサークルでは盾騎手が観客の声援に答え手を振る姿
お義父さんは口取りの手綱を持ち笑顔で挨拶しながら
カメラマンの写真撮影ににこやかに応える
俺はまあ
『お父様 ご褒美にいつもの飴いただけますか』
ちょっとまっててね
「はい、いつもの飴ね」
クリームソーダ味の飴を口の中へ入れてあげる
「スター暫くお休みできるからお母さんに会えるぞ」
『本当ですか? またほかの方にご迷惑かけていなければ
いいのですが 娘として心配です』
そこまでローズは手がかかるドジっ子じゃないけど
娘から見たら ドジ馬なのかもしれないな
レース後 関係者の方々に挨拶をすませ馬バスで静内を目指す
さあ、暫らくはメリーに甘えることが出来る
~~次のレースは菊の花賞トライアイル兵庫新聞杯GⅡ距離2200メートル~~
この年の開催は競馬場の改修工事の関係で中京競馬場で行われた
スターには初めての競馬場だが、2冠馬をひと目見ようと
詰めかけた大観衆の声援に答えることができるのか
パドックでは、皆さんスマホやデジカメでしきりにスターを撮影してる
『お父様 耳栓お願いします』
恥ずかしそうにお願いしてくる愛娘
「騒がしいからね はい、耳栓つけたよこれでいい」
『はい、大丈夫です、でも是非ファンの方の声援には答えたいです』
「そうだね、優勝して答えてあげようね」
『はい、お父様』
賞金総額的には、そのまま菊の花へ行けるが、調教だけで
レースへ挑むのは、少し不安なため
トライアイルである兵庫新聞杯へ出走をして
危なげなく優勝した。
中京競馬場へは今年中にまた来るかもしれない フラグかな
さていよいよ3冠目である阪神競馬場 G1菊の花賞距離3000メートル
パドックでは、
「牝馬の姉ちゃん 2冠までなら取れるかもしれんが
この距離はどうかな未知の距離だぞ
3000メートルはステイヤーじゃないと勝てないからな」
「おいおい、虐めてやるな 2冠馬様が泣いてしまうぞ
お嬢ちゃんは大人しく俺たちの後ろから走ってくればいい
ゴールするのみんなで待っているからな」
確かにこの牡馬の言うことも間違いではない
短距離から長距離までこなせる馬なんて
過去の名馬にも僅かしかいなかったからな
スピード、スタミナ、パワーがないと短距離と長距離は走れない
ただし、長距離はスタミナがあればなんとかなる
別にスピードがずば抜けていなくても1着はとれるからだ。
『わたくしに苦手な距離はございませんわ
お父様とお母さまからいただいたこの体は、その両方が可能な体
短距離から長距離まで馬場だって芝でもダートでも問題はありませんわ』
「強気な嬢ちゃんだな 最初はだれでもそう思うんだよ
走ればわかるぞ あ~自分にはこの距離はあっていないんだなってな」
『お言葉返しますけどあなたは、3000メートルをレースで走ったことが
ありますか?』
「は~ あるわけないだろ 俺たち3歳馬だぞ 今回が初体験に
決まってるだろ」
『じゃあ、貴方も3000メートル走ればわかりますね
あ~俺には長距離は、無理なんだと』
「何だとこのアマ じゃあレースで勝負だ
負けたら俺に種付けさせろ」
この牡馬もスターが好きなんだな
「じゃあ、俺も参加するぞ」
「俺もだ」
こんな感じで牡馬の皆さん同じ権利を要求しましたね
『よろしいですわよ 受けて立ちますわ』
俺は楯さんに今日のレースはスタートしてから
暫く後方待機で、直線で大外から捲ってくださいと
お願いした。
「まあ、天馬さんがそういうのでしたら
指示に従いますけど何か企んでますか」
「スターに喧嘩売った牡馬に吠えずらかかしてやるだけです
あいつら全員スター目当てですからね
何が種付けさせろですか 潰してやります」
「そうですね、ここまでほとんど先行逃げでしたからね
差しも追い込みも試してませんからいい機会ですね」
こんな感じで珍しくスタートで出遅れ演出したもんだから
スターに賭けてたお客さん勝ち馬投票券を撒きました
これまでのレースで出遅れありませんからね
しょうがないですが、あとで拾うの大変ですよ
1週目のメインスタンド前を通過するときの大ブーイングに
楯さんもさすがに驚いた。
「このレース大丈夫ですかね
頼みますよ スターさん 走ってくださいね」
「大丈夫です、すべてお任せくださいまし
あのような下品な牡馬なんて
蹴散らしてあげますわ」
まあ、このスターのつぶやきは楯さんには聞こえてません
スターの宣言どうり 4コーナーを抜けて直線へ出ると
すぐさま大外からごぼう抜きを見せるスターに
観客も興奮状態になる
残り200メートルでトップに並ばずそのままあっさり抜き去る
最後は2着に5馬身の差をつけてのゴール
ここにクラシック3冠を無敗で制覇した牝馬が誕生した。
スタート直後に投票券を撒いた人は
踏まれた馬券を探してますね
勝ち馬投票券は、確定するまでお持ちくださいね
ウイナーズサークルでは
楯さんとお義父さんは記者からの質問攻めにあう
「盾騎手、スタート出遅れましたけど
あれは、どうしてでしょう?」
「あれはですね、先生からの指示で
後方から直線で差しの練習をしたいと
言われましたので良い経験になりました」
「この大舞台で差しの練習ですか?」
「はい、そうです 普段は先行逃げでしたから
今回は差しで行こうと言われました。」
「そうですか、驚きましたけど
ブリリアンスターのそこ力見せていただきました
このあと休養に入ると思いますので4歳レース楽しみですね」
まあ、普通3歳馬はアリーナ記念でませんからね
だが俺たちにはあと1戦残っている
ローズの時は残念な思いしました。
「いいえ、このあと12月中京のチャンピオンCでます」
その言葉で競馬場内でどよめきが起こる
「お言葉ですが、ブリリアンスターは、得意なのは芝では
ないのですか?」
「いえ、調教では芝よりダートと坂路のほうがいい時計出してますよ
この馬に苦手な馬場はありません」
この言葉で観客はどよめく 芝クラシック3冠馬が実はダートが得意と
聞いて驚かない人はいないだろう
だが、昔の名馬にも地方から出てきた優秀な葦毛の馬もいた
最後に盾騎手は、
「12月の中京でお会いしましょう」
という言葉を残した。
さあ、スターあと残り1レース頑張ろうね
まあ、この小説は架空のお話ですが、過去に史実馬が存在してますね
笠松競馬から出てきたあの名馬、ダートほんと得意でした。




