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思い出の忘れ形見

セレクトセールの会場へ向かう馬バスの中での会話


「ねえ、天馬 20歳になって最初に購入した勝ち馬投票券

どこのレースか今でも覚えている」


「藪から棒の質問だな、でも覚えているよ

京都競馬11R GⅡローズSだな」


俺の誕生日は8月だから最初の重賞レースは秋華賞トライアルの

ローズSからが俺の競馬人生の始まりだ。


「その時の1着の馬の名前って今でも覚えているものなの」


「そうだな、確かトライアルで1着だから秋華賞に進んで

鼻差2着だったんだけどそのレース後すぐ故障して引退したよ

まだ、10歳だからどこかの牧場で繫殖牝馬になっているのかな

名前は確か、エレガントペルシャだよ」


美鈴は取り出したカタログをペラペラと捲る


「あ、天馬いるよ エレガントペルシャ産駒 

今回の当歳馬で上場されているよ

上場番号が最初のほうだから私たちもセリが見えるよ」


カタログに記載されている画像は、鹿毛の牝馬だった。

住所は、北海道伊達 松田牧場か

一度見学に行こうかな


会場に到着といっても当日に行われることはない

3日前には入厩していろいろあります。


※ここからの内容は、詳しくわかりませんので違うところが

 たくさんあると思うので気にしないでください


当日 佐藤牧場は、最後のセリなのでゆっくりできます。


ただ目当ての馬がいるので座席で見学します。

一応競り落とすこともありますので

お義父さんと相談ですね。


ここからは素人の考えです。

会場の中は、扉が2つありセールを仕切る人が3人いて

左側の扉から入り終われば右側から出るらしい

開始の価格はおそらく売る側で決めるのだろうか?

最低これだけは欲しいとか

当歳馬は、親子の場合と子供だけの場合がある


セールが始まった、


「天馬つぎよ」


「それでは、上場番号100番 母親 エレガントペルシャ202X 2月1X日生まれ

鹿毛、牝馬、父親 ナルタボロン になります 

母親は、ローズS 1着馬 秋華賞2着馬です。」


「天馬クン 母親は重賞勝ち馬ですが、種付け馬があまりよくないですよ

競走馬として難しいと私は思いますよ」


「私も競り落とそうと思わないな」


「ねえ、天馬どうしたの そんな悲しい顔して」


俺はこの仔馬の表情が悲しげなのが気になり

仔馬に語りかけている


「ねえ、どうしてそんなに悲しいの 教えてくれないか」


「私のママはもういないの 私を生んで何処かいっちゃったの」


仔馬を生んで直ぐに売却するとわ思わないけど

  まさか病気かな


「ねえ、お義父さん 子供産んで母親がいない場合は、

売られたからですか?」


「それはないですよ、まだ離乳のできるほど日にちも経過してない

この時点で母親がいないのは、出産後に亡くなったのではないですか」


「お義父さん この仔馬 俺が競り落とします」


「なんか理由がありそうですね、わかりました」


仔馬が暴れもしないし大人しいがあまり良い印象もなく

金額は安めでスタートかとおもったが、いきなりの高額スタート


2000万~ いませんか? 2000万~


誰も手を上げない そりゃあ 重賞馬の産駒だから

200万くらいなら 手を挙げる人もいるかもしれないが

いきなり2000万か


「天馬クン これはダメです なんか理由ありそうですが

適正な価格ではないですよ。」


「誰も手を上げないなら好都合ですよ ハイ 」


俺は手を挙げて、競り落とした。


「お義父さん ちょっといってきますね」


俺は、上場主を探して走る


扉を出たところで100番の札を付けた仔馬を見つける


「すいません 松田牧場の関係者の方ですか?」


「はい、そうですけど どちら様ですか?」


「すいません 私はこの仔馬を競り落とした

佐藤牧場の天翔天馬といます。」


「ああ、そうですか ありがとうございます

おかげ様でなんとか借金を返すことができそうです。」


「お恥ずかしい 話ですが、牧場は私と家内の二人で

馬を育てていたのですが、今までの借金を返すために

繫殖牝馬2頭を売りに出したのですが、安く買いたたかれましてね

借金を返すためには、どうしても2000万欲しかったのです。」


「でも優秀な牝馬いますよねエレガントペルシャが、

今も元気じゃないのですか?」


「ペルシャはもういないです。この子を産んだあと死んでしまいました

直ぐに獣医を呼んだのですが手遅れでした。牧場を辞めるのもペルシャがいなくなったからです

借金返したら東京の息子の家に世話になります。」


「そうですか、それは残念でした。」


頭を何度も下げるご夫婦を見送った。


会場に戻ると


「天馬どうだった牧場の人に会えたの」


「ああ、会えたよ ペルシャは亡くなっていた」


天馬の悲しそうな表情を見てそれ以上

聞く気になれない 美鈴は黙り込んだ。


「天馬クン いよいよ セリが始まるよ

どうする 厩務員変わろうか?」


「大丈夫です。 俺が最後見送ります」


メリーローズ202Xは、生きている

これからの馬だからな笑顔で旅たちを見送ろう


「それでは、本日最後です。上場番号353番

メリーローズ202X 栗毛 牝馬 

父プラチナシップ....」


「それでは、1億からスタートです。」


「はい」、 「エリアAの方 」


俺は仔馬を見ながら語り掛ける


「ごめんね、俺が君を引き取れればいいけど」


「引退したら直ぐに購入するから

暫くの我慢だよ、」


『約束だよ… パパ』


「それでは、ラストコールです。」


「5番の方 ありがとうございました。」


俺は、頭を下げた覚えはあるが、

金額は、まるで覚えていなかった。


セレクトセールから戻ってきた。


俺は、馬房へ走り


俺が愛する愛馬たちに抱き着いた。

メリーには帰り道で慰めてもらった。


ローズ、マロン、プラチナの順だが、

抱き着いた時間が短いのは、わかるだろ


俺はこの日誓った。セレクトセールには2度といかないと


数日後


セレクトセールで競り落としたペルシャの子供が到着した。


馬バスから降りる時も悲しげな表情を浮かべていた。


俺は厩舎の馬房へ連れていった。


連れていった先は、メリーの馬房だ。


「メリーにお客さんだよ」


仔馬は馬房に入ると目の前の馬を見上げると仔馬は、

メリーにすり寄って甘える


「ああ、ママだ 帰って来てくれたんだね

 会いたかったよ~」


「ごめんね、もうどこにもいかないからね」


俺にはこの方法しか慰める方法をしらない

素人の浅知恵だろうが、仔馬が悲しい顔を

するのが、耐えられないからな


メリーには会話が出来るからお願いできるけど

本来自分の子供以外は、なつかせないだろうな


マロンにしなかった理由は毛色だよ

ローズだとね 友達感覚になるからかな

遊ぶのはいいけどローズまだ仔馬

産んだことないからな


「天馬優しいわね」


「母親のことを思い出すかもしれないが

暫くは幸せな時間を与えようと思う」


「大きくなって自分で理解できるように

なったら俺が教える

お母さんは、凄い牝馬だったよってね」


メリーも子ども連れていかれたからな

ちょうどいいだろう


ただ、俺はこの時 この馬をどうするかまるで考えていなかった。








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