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三郎 DRAへ営業にいく

アイドルデビューです

育成牧場で馴致を始め数か月後いよいよアイドルデビューの時が来た


ここは東京都府中市東京競馬場

本来営業は本社がある港区へ行くが馬たちを連れているので東京競馬場へ

来ていただきました。


ある部屋に案内され担当者を待つ三郎


「失礼します」


「はい、どうぞ」


お互い初対面なので席を立ち名刺交換が始まる


「どうも初めましてわたくし天翔牧場で営業を担当してます

 相良三郎といいます。」


名刺には天翔牧場代表補佐の肩書きの横に営業と書かれている

今現在の代表は母親の玲奈です。


「初めまして わたくしDRAイベントプロモーション課

 七瀬ひとみと言います どうぞよろしくお願いいたします。」


とりあえずソファーに座り


「失礼ですが天翔牧場の相良さまがどうして営業されて

 いるのでしょうか?」


馬を生産し育てるのが業務であるのに何故か


「いや、まあ 私も普段は牧場長補佐として

 厩務員をしていますが今年からマネージメント業務を

 兼務することになりました」


三郎は2頭の資料を七瀬に手渡した。


七瀬は資料を受け取り中を見ると

2頭の可愛らしい牝馬がウインクしている

写真が目に入る


「まあ、ウインクしてる姿が可愛いですね 

 でもこの写真撮影するの大変そうですね」


まあ、馬が人のお願いを素直に聞くはずがないので

この瞬間を撮影するのは大変だと考えたようだ


それに対し三郎は


「いえ、うちの子 頭がいいのでお願いしたらすぐでしたよ」

 

「え、噓でしょ...あ、すいません」


「まあ 驚かれるのも仕方がないでしょう

 だから こうして売り込むことが出来るのですから」


三郎は七瀬に頭をさげ


「どうかお願いします。仕事ください」


驚いた七瀬さん 


「相良様、どうかおやめください

 DRAの最大の功労者でもある天翔牧場の方

 なのですから 頭をあげてください」


その言葉を聞いて三郎は頭をあげ

ニコリと微笑み


「それじゃあ お仕事頂けますでしょうか。」


「はい、企画の担当と協議し速やかに返答いたします。」


この後馬を2頭とも連れてきているのでと七瀬さんを連れて

競馬場の厩舎へ案内する


厩舎前には綺麗な白い車体の馬運車が駐車していた。

馬運車のボデー側面には、天翔牧場のネームプレートと

かわいい馬のイラストが描かれている


「七瀬さん この馬房にいる白毛の馬がシラユキで

青鹿毛の馬がミゾレです。

さあ、七瀬さんに挨拶しなさい」


すると三郎の指示に従い七瀬さんに


シラユキが頭をさげてウインクして笑顔をみせ

続いてミゾレも同じ仕草で挨拶する


七瀬さんは2頭にメロメロになる


「相良さん 撫でていいですか?」


「はい、どうぞ」


その言葉を聞くと2頭に近寄り

わしゃわしゃと頭やら首筋を撫でまわす


「うわ~綺麗、かわいい 目がくるくるしてる」


三郎はその姿を見て


「うん、プレゼンは上手くいった」


とつぶやいた


本日の東京競馬場の厩舎には週末の開催日にむけ早々と

トレセンから入厩されてきてる競走馬がいたが

彼らの興味はまだ2歳馬デビューの月でもないのに

厩舎の馬房にいる彼女たちだった。


三郎の手厚い手入れにより見事に磨かれた白毛と青鹿毛の牝馬を見て

興奮しない牡馬はいない


「ずいぶんと綺麗な嬢ちゃんたちだがまだデビュー前だろ

 どうしてここにいるのだ」


牡馬たちの念話の問いかけにミゾレが答えた。


「牡馬の皆様 ごきげんよう 私たちは使徒様の下で

 アイドルになるため日夜努力しております

 残念ながら競走馬にはなれませんがファンの皆様方に喜んでもらえるように

 頑張っておりますのでよろしくお願いいたします。」


「ああ、そうか使徒様の手伝いなんだな

 俺たちとは道は違えどいずれ馬の国で再会できるのを

 願っているからな」


その優しい言葉に


「ありがとうございます。皆様方と再会できるのを楽しみにしておきます」


この後すぐに東京競馬場レース開催日での

初仕事の契約が執り行われた。


仕事は正面スタンド前でのお出迎えファンサービスと

お昼休みに行われる楽隊演奏の際の2頭での模擬レース


競馬開催日当日 入場開始時間になり正門前で

2頭に騎乗したDRAの職員の姿があり


入場してきたファンの人たちに笑顔で手を振る

シラユキとミゾレも頭を上下に動かし

歓迎をアピール


お子様が


「撫でていい」


と言うとシラユキが撫でやすいように首を下げる


「うわ~お馬さん サラサラだ~」


わらわらと寄ってくる子供たち


三郎は近くで見守り2頭に指示を出している

その顔は満足そうだ


「よし。いい感じだ 」


お昼休み時間


スタンド前のターフでは楽隊が演奏が始まる

いつもと違うのは、この後G1のファンファーレの後

2頭による模擬レースが行われる

2歳馬と思えない力強い走りにお客さんも興奮気味だ。


騎乗した現役の騎手からも


「相良さん ほんとにデビューさせないのですか?」


デビューするなら是非騎乗したいと頼まれ苦笑いし


「あの子たちは競走馬ではなく歌って踊れるアイドルなので

 申し訳ございません。」


まあ、確かに三郎も馴致の際にこの子たちデビューしたら

いい成績残せるかもとふと考えていた。


この2頭には生産牧場で生まれたが競走馬になれず

別の馬生を歩む馬たちの礎になってほしいと願っているので

今回は見送るつもりだ。


産まれてくる7千頭余りの幼駒がデビューして3歳までに1勝できるのか

1勝出来ない場合は地方競馬へ行くか引退するしかないが

その分岐点の先には残酷な運命が待っている場合もあるのが現実


引退した馬たちに新たな選択肢を与えるため三郎は頑張っている

今回は試験的に1歳馬からの取り組みだが現実的には4歳以降の

馬たちの行く末を考えた取り組みを模索しないといけないだろう




 

デビューして3歳の8月までに1勝出来ないと現実的に中央でレースに出走できません

引退しても牝馬なら繫殖牝馬になれる未来もありますが牡馬には厳しい現実が待ってます

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