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年末のG1に向けてローズは走る その時天馬は

早朝 朝もやが立ち込める幻想的な風景 俺は一人牧場建設予定地を柵の前で眺めていた。


自宅の建物も厩舎もまだ何もない放牧地だがここは間違いなく俺の所有する土地だ。

2区画隔てた向こうにはお義父さんが経営する牧場の厩舎も見える


来年からいよいよ自宅と厩舎の建築が始まる


俺の夢が今現実になろうとしている


現在の俺はDRA職員だが、それも今年ローズの育成が終われば退職することに

なっている。 これは前から決まっていたことで当然お義父さんも

妻になる美鈴も承知している話


ローズの育成は当初3歳馬までの予定だったが、今年で打ち切ることが会議で決定された

その背景には俺を全ての馬主に平等に派遣しないと多くの馬主が不公平になると苦情が届いたからだ。

DRAもまさかここまでローズの育成が順調にことが進むと考えていなかったので

馬主からの陳情を受けとめ試験運用を取りやめたことになる


どのみち俺一人しかいない段階で平等に対応はできないことは明白


それでDRAをやめて何をやるのか?


それは当然、引退馬繋養牧場を運営することに決まっている

引退馬の保護と繋養できれば引退馬の再就職へのお手伝いもできたらいいと

考えている。この国にも引退馬を保護しようとするNPOの法人はあるので

その推進に協力できたらいいと考えている


俺は来年からお義父さんの牧場で厩務員見習いとして働き

牧場が完成したら引退馬を受け入れる準備を始める

いずれはメリーもローズも俺の牧場で余生を楽しく過ごしてもらう

プラチナもいればメリーも喜ぶかな


ローズが3歳馬になっても俺は厩務員としてローズに同行して

全国をまわることになる

だからDRAを辞めてもやることは変わらないということでもある


ただ、俺の雇い主がDRAからお義父さんに変わるだけ

DRAの施設に申請なしで入ることはできないがトレセンには入れるので

問題ない


「天馬、やっぱりここにいたのね」


「どうした美鈴 まさかローズにトラブルか?」


天馬の真剣な表情を見て美鈴は笑顔で首を横へ振る


「ローズはとても元気よ」


「朝起きてねメリーの馬房へいったけど貴方いなかったから

多分ここじゃないかなと思っただけよ」


この周りの土地は全部お義父さんの所有地だが

このあたり5区画の地主は俺


「来年から建設が始まるからな 

牧場が完成したら何をしようか考えていたんだ」


天馬は腕組みして美鈴にこたえる


「私もあと数年で引退して手伝うから

2人で頑張りましょうね」


にこりと笑う美鈴


美鈴はローズの主戦騎手を辞めたら現役を引退して

厩務員として牧場で俺と働く


「ほんとに後悔しないのか? まだ10年は現役で頑張れるだろ」


「う~ん どうかな 貴方と出会う前なら

あと10年はやれると私自身思っていたけどね

今は少しでも早くあなたとここで働きたいと思っている

だから騎手を辞めても後悔はしないわ」


「それに牧場の運営も私の夢でもあるしね

騎手の目標は、既に達成してるから

悔いはないわ」


騎手の目標は、中央のG1レースで勝つこと

勝利すれば称号でもある

G1ジョッキーと呼ばれる栄誉を与えられる


DRAの現役女性騎手は、10名ほどで

男性騎手と違い50代まで現役で活躍することもなく

引退して調教師の資格をとるか寿引退が通例とされている


美鈴は寿引退になるかな


「ねえ天馬 」


「なんだい 」


「牧場の厩務員は私たちだけよね」


「まあ、最初はまだ1頭もいないから

2人で十分だと思うけど

誰かほかに厩務員に推薦できる子いるの?

給料はもちろん出すけど」


引退牧場の収入源は寄付で賄うか

経営者の自己資金の切り崩し

軌道に乗れば会員を募集してグッズの販売

中には乗馬クラブへの再就職支援

観光牧場として入場者から入場料をいただくケースもある


俺の場合は自己資金の切り崩しで賄うつもりでいる

競馬で儲けた金を引退馬たちに還元するわけだ


[引退馬たちはには余生を楽しく生きる権利がある]


「候補は一人いるわよ 元同僚だけどね

名前は七草奈々(サエグサナナ)よ

聞いたことないかな?」


「勿論 知ってるよ 元DRAの騎手だろ

美鈴の同期で確か落馬の怪我がもとで

引退したんだよね」


「さすが 毎週競馬場に通っていただけあるわね

今は別の仕事してるけど

もう一度馬と触れ合う仕事がしたいと私に相談

して来たのよ お父さんに紹介してよと」


父親が牧場経営者の美鈴に頼むのも理解できる話だが


「でもその人、生産牧場や育成牧場の仕事じゃなくてもいいのかな

 元騎手なら調教の助手もできるよね」


「それがね、落馬の怪我の後遺症があってね

彼女激しい運動ができないのよ

当初はボランティアでもいからと私に相談に来たから

それなら天馬の牧場でいいかなと…ダメかな?」



上目づかいで見上げる顔が可愛いい 美鈴


「勿論 大歓迎だよ 馬に詳しい人のほうが助かるしね

でもボランティアではなく給料も出すよ

なんなら衣食住の面倒も見るよ

自宅の部屋もたくさんあるからね」


「天馬乗り気よね、まあ、あの子現役時代新人騎手ファン投票で

1位とれたくらいの美人だしね」


「僅差2位の美鈴も綺麗だよ 俺は美鈴に投票したから」


これはお世辞ではなくほんとのこと


美鈴は顔を隠して照れてる


「わかった。牧場が完成したら彼女呼ぶから

  お願いね、牧場長様」


「了解ですよ 牧場長の奥様」


天馬のDRA職員としての仕事はあと3か月余り

来年からは牧場の厩務員見習いになる


その数日後の札幌2歳ステークスもエクセレントローズは快勝して


年末のG1レースに挑むことになるが、

ローズの選択肢は、阪神JFか中山でのホープフルSと2つある

距離は1600と2000メートル


果たして佐藤陣営の選択は何処へ向かうのか?









本来この小説で書きたかったのは、G1レースをチート能力で勝利するお話ではなく

引退馬繋養牧場のお話です。なのでレースの内容は深く掘り起こさない簡単な

描写になりますのでご了承ください

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