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安奈編 突然の死の宣告 前編

天翔牧場の食堂で昼食中の玲奈とミハイル


「ねえ ミハイル 昨日の食事会何だったんだろうね?」


「玲奈がわからないのに僕にわかるわけないだろ

 でもお父さんの料理美味しかった

 流石三ツ星シェフだね またみんなで食べたいな」


「いや 料理は凄く美味しかったけどそれよりも

父さんと母さんたちの様子が少し変だったから」


「どんなとこがだい」


「父さんが母さんたちを見て涙ぐんでいたとこかな?」


「まあ 気にしてもしょうがないよ 気のせいかもしれないしね」


「そうね さあお昼食べたら厩舎巡回しよ」


食堂にはテレビが置いてあり今はバラエティー番組が放送されている

突然画面が切り替わると男性アナウンサーが真剣な顔して登場


「番組の途中ですがニュースをお伝えいたします。」


「何だろう 地震速報かそれともミサイルアラートかな」


「本日 午前11時30分ごろ 札幌市※※※の公園に

天翔牧場所有のヘリコプターが不時着しました。

乗務されていた二人の女性は緊急搬送

されましたが病院で死亡が確認されました。」


「事故調査のため道警と航空事故調査委員会の調査官らが直ちに現場へ

向かい事故原因の究明にあたるとのことです

亡くなられた方がたのご冥福を心よりお祈りいたします。」


画面がバラエティー番組へ戻る


「うそ うそでしょ 母さんたちじゃないよね...」


「でも現場の映像みると天翔牧場の文字とショコラ号

 の文字が映っていたよ...玲奈」


ミハイルは玲奈を優しく抱きしめる そこへ翔平と爽太が


「玲奈、ミハイル大変だ 今道警から連絡が来て..

ミハイル、玲奈はどうしたんだ 何かあったのか?」


「今、ニュースでヘリが不時着したと聞いて...」


「そうか、もうニュースで報道されたんだな

道警からは病院で安置している遺体の身元の確認に

来てほしいと連絡がきた。」


「まあその様子じゃ無理そうだから確認は俺と爽太で

いってくるから玲奈のこと頼んだぞ」


「はい、わかりました。」


「いや~ 噓だといってお父さん...」


あまりの驚きで意識を失って倒れる玲奈を抱きかかえるミハイル


「それじゃあ いってくる」


玲奈の頭を撫でて食堂を出ていく二人をミハイルと

厩務員たちが見送る


数時間後 翔平と爽太は二人の遺体を牧場へ連れて帰ってきたが

玲奈はまだ眠っているようだ


「今は そっとしておこう」


  葬儀の準備が始まった。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


時は遡って...


早朝 安奈の寝室


「安奈さん 起きてください...」


「何ですか? 誰ですか急患ですか?」


「急患じゃありません 私ですよ安奈さん」


「え、誰かと思ったら 神さまじゃないですか

どうしたんですこんな朝はやくに

それにいつもと雰囲気違いますね

実に神々しいです」


「私は神ですからね たまには真面目な時もあります

それは、どうでもいいんです。 重要なお話です

安奈さん あなたは明日 お亡くなりになります。」


神様の突然の死亡予告で慌てる安奈


「え、本当ですか?」


「紛れもない事実です。

今回は特別に夜ではなく朝に来ました

明日に備えてこの世に未練残さぬようにしてください

それとくれぐれも運命に逆らうことは厳に謹んでくださいね」


「ちなみに逆らったらどうなりますか?

私は病気ではありませんから死亡の原因は災害か事故ですよね

だとすると一番考えられるのはヘリでの往診の時ですか?」


「ノーコメントです。」


「そうですか 一つだけ教えてください

其の事故で死ぬのは私だけですか?

他人を巻き込むことはないですよね

例えば穂香とか?」


「安奈さん 忠告です 穂香さんを乗せないで往診へ

いってはだめですよ 強制力が発動し他人を巻き込む事態に

なりますから それにそんなことしたら安奈さんを

馬の国へ招待できなくなります。」


「やっぱり 穂香もなんですね

穂香にも 伝えたのですか?

事故で亡くなると」


「もう、安奈さんには敵わないですね

穂香さんにも先ほどお伝えしました

驚かずに動揺もしないのでこちらが驚きました。

でも最後に一言穂香さんが呟きました...」


「安奈と二人で死ねるのなら怖くないそうです

一人残されるほうがつらいからといってましたね」


「そうですか 穂香がそんなこと

恐らく翔平のことも関係してますね

翔平の余命があまり残されていないと知ってますから」


「翔平さんですか? 進行が速い癌だと聞いてます

症状が出て診察に行かれた時には既に手遅れで

体中に癌細胞が転移していたと…余命はあとひと月ですね」


「あ、翔平の余命も あとひと月なんですね…

神さまですもんね 神様お願いがあります。

私たちが明日死ぬこと翔平にだけ伝えていいですか

出来れば最後に家族で晩餐会をしたいので

どうかお願いします。」


「わかりました。特別ですよ 使徒として今まで頑張ってくれた

安奈さんへのご褒美です。

それじゃあ 私はこれで また明日迎えにきますね」


神さまは 安奈の前から姿を消した


「そっか 私の寿命は明日で終わるんだ。

もっと長生きして馬たちを助けたかった

やり残したことは多いけど後は玲奈と花音に託そう

私の娘たちだから大丈夫だよね」


「さあ、私の死後に玲奈が困らないように

準備しなくちゃね まずは顧問弁護士さんへ

遺言書と委任状を書いて 代表権は既に玲奈へ渡しているから

問題はホースパークの経営者かな 花音が力になってくれると

助かるのだけど一応手紙を出しておこう

さあ、忙しくなるわ」


※花音が就職した会社はレジャー施設の運営会社です

 千葉県にある千葉ドリームランドの経営母体です。

 だからノウハウはあります。


相続に関する書類と玲奈と花音への手紙を書いて朝食を食べようと

廊下へ出るとそこには穂香がいた。


「穂香...おはよう 悔いが残らないようにしようね」


「安奈 おはよう 安奈もね それと相談があるの

今日の夕飯家族で食べましょうよ」


「ちょうどいいわ 今から翔平の所へいくところ

だから穂香もついてきて」


「やっぱり 安奈は親友ね 以心伝心かな

私の考えがわかるなんて もっと安奈と長生きしたかった」


「穂香 でもこれでおわりじゃないわよ

私たちにはまだやることがあるのだから

この世でもそれと馬の国へいってからもね」


「そうだった ごめんね」


二人で翔平の元へと向かう


「それで二人してこんな朝からどうした?」


二人は翔平に今朝のことを包み隠さず話した


「そうか俺の余命もあとひと月か

それよりも二人は先に逝ってしまうのだな

最後の晩餐は俺に任せろ

俺の集大成の料理を食べさせてやる」


「それはとても楽しみね

花音も呼べたらいいのだけどね

平日に呼ぶ理由も思い浮かばないしね

ほんと残念だわ」


朝食の時に玲奈と爽太に今日の夕食はレストラン天翔で

食べることになったと言ったら

やっぱり驚かれた。


そして午前中の往診も済ませ安奈は一人格納庫にいた。


安奈は名残惜しそうに機体を撫でる

今日のフライトでも点検でも異常は見つからなかった。


「此の子と明日でお別れだなんて信じられないわ」


そこへ


「安奈、やっぱりここにいたんだ

翔平から時間どおりで大丈夫だと言われたわ。」


「そお それは楽しみね 最後の晩餐」


最後の晩餐は玲奈の様子が少し変だった以外は問題もなく

今日の翔平の自慢料理はとても美味しかった。


翌日早朝 天候晴れ


安奈と穂香を乗せたヘリコプターが最後のフライトへと飛び立つ


それを見送る翔平の姿が悲し気だった。


安奈と穂香は窓を開けて翔平に手を振る


「いってくるね翔平」


「ああ、悔いのないようにな

産駒が無事に生まれるのを祈っている

安奈、穂香、また会おう」


「翔平も...またね

私たち少し先に逝って向こうで待ってる」


翔平を残し飛び立つヘリコプター

見えなくなるまで見送る翔平の姿があった。


往診先の牧場までは1時間ほどのフライト


最後の患者さんは、難産が予想される繫殖牝馬だが

安奈と穂香にかかれば造作もない


無事に出産を終えて帰路につくここからが正念場


安奈にとってどんなトラブルが待つかわからない今の状況が怖い


今の高度は600メートル 時速は200キロで巡航中

今のところエンジンも問題なく快調そのもの


※ヘリコプターは3000メートル以上でも飛べるそうですが

 低酸素状態に陥る可能性もあり山岳での救難作業以外だと

 高度は1000メートル以下です。また民家がある場合は

 300メートル以上で飛行するそうです。


神様のお茶目なジョークなのか?


ちょうど住宅地の上空を飛行中


安奈にしてみれば何もない草原の上を飛行して帰りたいところだが

飛行経路は提出しているプランで飛ぶのが決まり


こんなヘリポートもない住宅街でトラブルが発生したら

タダじゃすまないわ 墜落したらたくさんの死傷者が出る事に

このまま何も無ければいいのに...


ドカーン プシュッー ぐらりと揺れる機体


「安奈どうしたの?」


「穂香、きたわ 運命に逆らえないようね

 穂香 窓から後ろの様子見える?」


「待って 煙が見えるのとなんかオイルが漏れてる」


油圧警告灯点灯、アラーム音が鳴る


先ず管制に連絡かな


「メーデー、メーデー、メーデー こちら○○○○です、

 千歳タワー 応答願います。」


「はい、こちら千歳タワー ○○○○どうしましたか」


「こちら○○○○です。緊急事態発生

 油圧系統にトラブル 緊急着陸を要請します。」


「○○○○緊急着陸許可します。

  安全な着陸は可能な状態でしょうか?」


「こちら○○○○今のところ油圧系統が1つダメになりましたが

オートローテーションでの着陸は可能です。ただ

市街地上空なので着陸できる場所を探しています。」


「○○○○了解しました。また何かありましたら

連絡してください。」


「了解しました。通信終了」


「安奈 何とかなりそう?」


「場所が悪いかな 速度も出せないし

ここを抜けるの難しいわ

穂香進行方向に空き地を探して

今なら不時着できるけど他の油圧がダメになったら

安全に降ろせなくなるから」


※ヘリコプターは油圧系統は2系統あります

 テールローターに関しては1系統油圧と

 電気か人力でも操作可能な安全重視な作りです。

 着陸するならエンジン故障でもオートローテーションで

 着陸できますが今回は上手くいかないです。


ここで安奈も予想出来なかった事態に陥ります


「安奈、11時の方向に公園があるわ」


「あそこなら なんとか着陸できそうね」


「千歳タワー こちら○○○○応答願います。」


「はい、こちら千歳タワー○○○○どうぞ」


「こちら○○○○着陸可能な公園がありましたので

これから緊急着陸します。

警察と消防署への連絡よろしくお願いします。」


「こちら千歳タワー 了解しました。

直ちに手配します。」


※一応レーダーで補足してるから場所はいってません


「穂香、着陸するわ 何も起こらなければいいけど」


「安奈 それはフラグよ。」


アラーム音と警告灯が点滅し同時にエンジン故障で

メインローターの油圧がダウンし機首が下がる


安奈はサイクリックとコレクティブとペダルを使い機首を上に

上げるがメインローターが回転しないトラブル発生

これではオートローテーションできない


「もう、公園が目の前なのに あと少し頑張って」


「安奈、よく頑張ったわ」


「穂香 ごめんね」


奇跡が起きた 突如メインローターが回転をはじめ

落下速度も落ちたことで機首上げに成功

機首を公園へ向けることに成功したが

このままでは機体は減速できず地面に激突するだろう


「ショコラありがとう

これで住宅への被害は出ないわ」


穂香は安奈の手を握り目を閉じた。

その直後機体は地面に激突し大破


ドーンと言う音とともに地面が大きく揺れた


驚いて外へ飛び出してきた住民の目には

激突したヘリの残骸が目に入り慌てて携帯電話で消防署へ連絡する姿が


それと同時に遠くからサイレンの音が聴こえた。


奇跡的に民家への被害は避けられたが当初は操縦ミスでないかと

憶測が広がる


事故調の調査で飛行に必要な部品が機体から脱落しているのが見つかり

捜索し不時着地点から2キロ手前で脱落部品を発見


フライトレコーダーの記録からこの部品脱落が事故原因だと

特定され安奈の操縦は問題ないとされた。





後編で安奈編終わりです。

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