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安奈編 安奈と白い子との出会い

競争馬の命運を握るのも獣医さん次第なのか?

札幌競馬場


手術室ではホワイトノエルの手術が行われていた。


明菜がメスを握り安奈へ指示を出しながら手術は進行中


普通なら痛みで暴れる馬を職員が抑え込むこともあるが


安奈が優しく問いかけ安心感を与えているので馬が興奮することもなく


手術は順調に進んでいた。


時折 明菜から安奈へ手術がしやすい位置への移動指示が入る


その場合は安奈がノエルにお願いして少し体の向きを変えてもらう


安奈はノエルが不安にならないよう念話で話す


「ねえ、ノエルちゃん 今までの成績はどう?

 G1は勝ったの?」


「成績ですか? そうですね わたし馬場は芝でもダートでも

問題ないのですが距離適性が短距離からマイルなんですよ

おかげさまで3歳の桜と4歳でビクトリアマイルを勝ちましたよ

ほんとあの時は馬主さん 私以上に喜んでいましたね

もう、走れなくて残念です」


「へえ、ノエルちゃん G1を2つも勝ったんだ

すごく優秀なんだね それじゃあ来年からは

繫殖牝馬として沢山優秀な産駒が生まれてきそうだ」


「わたしの産駒ですか? わたし子供産めますか

怪我は治るんですか? ほんとに...失礼しました

使徒様の前で申し訳ございませんでした

前にトレセンで仲良しの牝馬がいたのですが

レース中の怪我で骨折してしまい そのまま予後不良で

安楽死処置されたと厩務員さんの会話で知り

とても悲しい思いをしたものですから」


安奈は安心させるため


「ノエルちゃんは昨日の夜はよく眠れましたか?」


「はい、飼い葉ももりもり食べて熟睡しました

厩務員さんもレースの前なのによく眠れる馬だと

感心されてました わたしおかしいですか?」


どうやら馬の神様には会っていないようだ


『そうですね ノエルちゃんはあと30年は長生きできますよ』


「あ、馬の神様 お久しぶりです それじゃあ今回の事故は

最初からお母さんが治療することになっていたんですね

よかった 安心しました。」


『正確にはこのノエルちゃんの運命が変わったのは安奈さんが

 わたしの使徒になったからなんですよ 本来ならこの子は

 この怪我がもとで馬の国へ逝くところでした』


「それじゃあ 私が使徒になっていない並行世界だと」


『残念ながら ここの獣医の田中さんの腕では治療は無理です

ノエルちゃんは長く痛みに耐えましたがその後の蹄葉炎併発と

再度の骨折などで最終的に安楽死処置されてます

なのでこの世界のノエルちゃんは幸運の持ち主なんです』


馬の神様の話を聞いて 安奈はノエルちゃんを抱きしめ呟く


「わたし 使徒になってほんとに良かった

ノエルちゃんを救えることができた」


そこで出番が終わった馬の神様


『それでは、安奈さん また 会いましょう』


馬の神様は名残惜しそうに安奈の前から消えた


その後 無事に手術は終わり馬主の加藤さんから

感謝された。 そして明菜さんは一つ提案をした


「加藤さん手術は無事成功ですが術後のケアと経過観察が必要なんです

ホワイトノエルをホースパークへ連れていってもかまいませんか?

別の牧場と契約などあればそちらを優先されても問題はありませんが」


「懇意にしてる牧場はありますが私としては

ノエルは天翔牧場で繫殖牝馬として繋養してほしいと考えています

ノエルの命を救っていただいた恩もありますし

ノエルのことどうかよろしくお願いいたします。」


そういうことでノエルはホースパークで暫く

術後の経過観察を経て加藤さんからの委託で

天翔牧場で繫殖牝馬になることになりました。


DRAの計らいで移動用の馬バスが手配された

馬バスの名前はミソラ号


ノエルの血脈をたどるとミソラの孫なんです

これも何かの縁ですね


安奈が札幌競馬場から同乗しホースパークへ到着し

医療棟の厩舎へ移されるノエル


担当者は安奈と穂香のふたり


「安奈、良かった 無事に成功したんだね

ノエルちゃん 白くて綺麗な子」


「穂香ノエルちゃんのことお願いね

わたしといっしょに頑張ろう

手術は成功したけどまだ何が起こるかわからないから」


ノエルのほうは頑丈なギブスで固定され

骨折箇所は特殊なボルトで接合されている

材質は昔よりも遙かに軽くて丈夫で500キロの馬を

余裕で支えることができる


※昔の話ですが骨折した競争馬を手術したさいボルトの強度不足で

 体重を支えることができなかったため治癒に至らなかった

 ケースがあったそうです 500キロですからね


安奈が傍にいるおかげでノエルも安心したのか

暴れることもなく大人しい


ノエルを馬房へ案内すると


「安奈さま ここの馬房すごく快適ですね

夏なのに涼しいし 寝藁は綺麗な紙ですか?

自由に動けない以外 元居た馬房と大違いです。」


大げさに喜んでいるノエルを見て安心する安奈


「ところでノエルちゃん 今更なんだけど

どうして私の事 知ってるのかな?」


最初から使徒だとバレていたから


「あ~それはですね 前に競馬場のパドックに

お母様とご一緒されていた時のレースに出ていた

知り合いの子から使徒様にお会いしたと聞かされたからです。」


「あ~あのレースに出ていた子からの情報なんだ

納得したわ ありがとう」


「いえいえ どういたしまして。

それとですね わたしこれからどうなるのでしょう?」


周りを不思議そうにキョロキョロと見てるノエル


馬房の前には穂香以外の獣医もいるため落ち着かないようだ


「ノエルちゃん 心配しないでね ギブスが取れたら

ここから天翔牧場の厩舎へ移って

来年からはお母さんになるんだよ」


「わたしが...お母さんになれるんですね

良かった 馬主さんに恩返ししたいです

たくさんいい子を産みたいです。」


すこし興奮気味ですが


「産めるよ まずは怪我を治そうね

慌てなくてもいいから

肢以外は怪我もないし丈夫な子産めるよ」


術後まだ間もなく安静が必要なので安奈は馬房から出ていくことにした


「それじゃあ ノエルちゃん 何かあれば

念話で呼んでね すぐ来るから」


「はい、ありがとうございます。」


安奈と穂香は休憩室へ


椅子に座ると穂香がお茶をいれてくれた


「はい、どうぞ それとお疲れさま

やっぱり安奈は頼りになるね

わたしより場慣れしてるし 馬ともすぐに仲良くなれるし

ほんと獣医は安奈にとって天職だね」


穂香に褒められた 天職か?

馬のこと大好きだし使徒になったし 確かに天職だ


「穂香もこれからだよ いっしょに頑張ろ

わたしも協力するから」


「わたしもなれるかな 安奈みたいな獣医に...」



やっぱり 安奈はすごい 

ホースパークの獣医さんは皆さんベテランなんだけど

その方たちもみな安奈を信頼している まだ見習いの研修医なのに

母親の明菜さんそれと伝説の獣医でもある安奈の祖母の弥生さん


日本にいる獣医師が憧れる存在 安奈もいずれ天翔牧場の代表に

就任する わたしも微力ながら安奈を支えていきたいな

親友でもありわたしの憧れの存在でもある安奈を


「大丈夫 穂香ならね」

まだまだ研修は終わりません

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