ミソラ 馬の国でママにしかられる
アフターストーリーです
和馬の姿が二人の馬房から見えなくなると
2頭は和馬が最後に準備してくれた飼い葉を一粒も残さず平らげた
『パパの用意してくれた最後のご飯美味しかったよ』
この食事がこの世での最後の食事になりました。
ここからミソラとカノンの譲れない戦いが幕を開け
飼い葉も食べず水も飲まない絶食を敢行することになる
その数時間後ミソラとカノンは胸騒ぎを感じ
和馬が馬の国へいってしまったと直感で理解した。
和馬が生きていればよかったが2頭にはこの世で頼れる人が
いなくなった喪失感から彼女たちが選ぶ最良の選択肢に
なってしまったのであろう
『あ、大好きだったパパがカノンを置いて逝って
しまった すぐにパパの所へいくからね』
その数分後病院から連絡を受けた紫苑と麗華が慌てた様子でヘリで飛び立ったが
この時点で既に和馬の死亡は確認されていました。
その夜 病院から和馬を乗せたヘリが無言の帰宅をした。
「さあ、和馬ついたわよ あなたが愛した馬たちがいる牧場にね」
紫苑と麗華が慌ただしく葬式の準備をした
忙しくしているときは唯一辛く悲しいことも忘れることができる
式には当然娘の榛名と明菜も母親の手伝いをしている
式が無事に終わり火葬された和馬の遺骨は生前和馬の希望で
牧場内の墓地へ埋葬された
ちょうどシオンとソラシドが眠るお墓の横だった
悲しむ紫苑と麗華に厩務員からショッキングな出来事が
伝えられた
「え、カノンとミソラが何も食べないですって
それもちょうど和馬が亡くなった日から
いっさい水も飲まなくなって
このままだと衰弱死してしまうと
獣医から言われたと」
紫苑
「まさか あの子たち和馬の後を追うつもりなの」
麗華
「おそらく そうでしょうね 頑固だから
そこまでして和馬といっしょにいたいのね」
獣医さんにはなんとか栄養のあるものを
与えて下さいとお願いするしかなかった
遺品の整理中に和馬の部屋の机の引き出しから手紙が見つかった
紫苑と麗華 それに母親と姉宛の手紙だったため
紫苑と麗華はこの手紙は馬の国の話だと考えた。
紫苑と麗華は和馬の部屋で手紙を読み涙を流した
「そんな 和馬は私たちに話さないで
ミソラとカノンの2頭にだけ
お別れを済ませていたんだ 妻である私ではなく
愛馬にだけ伝えて先に逝ったのね」
紫苑
「でも和馬らしいと思うわよ あなたなら和馬を引き留めて
家から出さないと思われたんじゃないのかな
私たちに被害が及ばないよう一人で死を受け入れる
決断をしたんだ和馬」
麗華
「でも 一言いってほしかった だって私たちは
和馬の妻なのよ...それを愛する馬たちにだけ
お別れを言ってくなんて
それじゃあミソラたちが和馬のところへ行くの
止めれないじゃないの 私も和馬に今すぐ会いたい」
紫苑
「麗華 それはわたしも同じよ
今はこの牧場を守り役目を終えたら
和馬に会いにいきましょうね
会いに行くのは娘たちへ譲ってからでも
遅くないわ」
麗華
「そうね そうしましょう」
獣医と厩務員の努力も虚しくミソラとカノンは数日後安らかな顔で
馬の国へ旅たっていった。
紫苑
「この笑顔 きっと今頃和馬と再会しているんだわ」
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馬の神様に先導され噴水広場で和馬との再会を果たした2頭は
和馬に怒られるとわかっているので終始俯いていた
其の2頭のところへ和馬が近寄り頭に手を乗せ
カノンとミソラ
「あ、パパに叩かれる」
まあ怒られることをしてしまったのでしょうがないと
覚悟を決めたが
和馬
「ミソラ、カノン 会いたかったよ」
和馬は頭を優しく撫でたのであった
神さま
「まあ こうなるのは予想できましたし 和馬さんほんとに
娘さんに甘いですね」
カノンとミソラ
「パパ ごめんなさい でも やっぱり パパといっしょに
いたかったの」
2頭は和馬に擦り寄り甘えていた
其の姿を静観していたミソラの母親であるソラシドが2頭に近寄った
ソラシドママの眉間に皺が
「あなたたち 和馬は優しいから許してくれたけど
母親である私からはあなたたちにお話があります
ちょっとこっちへきなさい」
和馬から許可をもらいいつも寝泊りしてる厩舎へ入っていく
ソラシドとミソラ シオンとカノン
和馬はソラシドから親子だけにしてくれと頼まれ席を外した
ミソラ
「ママ ほんとにごめんなさい 反省してます
でもね わたし パパが死んでしまった瞬間
胸に大きな穴があいてしまったの
それですごく虚しくなって パパの後を追うこと
選んでしまったの 今は少し後悔してます」
カノン
「わたしもね ミソラと同じなの
ほんとごめんなさい ママ」
娘たちの言いたいこともわかるのでソラシドは
ため息をつく しかし 今言わなくてはならない
ことを娘に話し出す決意をする
ソラシド
「ミソラ いいこと周りの同胞に死んだ経緯を聞かれても
けっして自○したなんていってわだめよ」
ミソラはどうしてママがそんなこと言うのか理解できず
ぽかんとしている
ソラシド
「そうね ママが樫木賞へ出走する以前
トレセンで先輩に聞かされたことを話すわね」
ソラシドは先輩から聞かされた話を娘たちに話した
毎年競走馬として生まれてくる産駒は約7千頭はいること
そのうち2歳でデビューできるのは僅か1千頭以下になること
それじゃあそれ以外の馬たちはどこへいったのか?
2歳デビューできても3歳の8月までに最低1勝しないと
4歳馬としてレースに出走できない その場合
中央から地方へ行くか 牧場で繁殖馬になるか
それとも乗馬クラブへ売られるかなど分かりやすく説明し
ミソラとカノンも大人しく聞いていたが
この先の話で顔色が悪くなる
「けどね残りの馬たちは皆 殺処分されるのよ
レースで怪我して予後不良なら諦めもつくけど
ママみたいに和馬に救われる運のいい
馬なんてほとんどいないのよ
ママもほんとは予後不良で殺されていたのよ」
ミソラはママの言葉を聞いて
「え、じゃあ パパがいなければ わたしは生まれて
いなかったんだ」
「そうね 私もミソラを産むことも出来なかったわね
ほんと和馬に感謝しないとね」
ソラシド
「私が言いたいのは馬たちは自ら死を選ぶ権利も自由もなく
人間の身勝手な理由で殺処分されてしまうのよ
馬肉として食用にされるか家畜やペットの餌としてね」
「馬の国にいる同胞のほとんどはいずれ転生して
また競走馬として走るのよ ママたちみたいに
ここでのんびり暮らせる幸せな馬のほうがはるかに
少ないのよ だから自ら死を選べたなんて
言ってわだめよミソラ」
ミソラは母親の言葉を聞いて
自分の愚かさを知ってしまった
「ママ ほんとにごめんなさい
それに紫苑さん麗華さん
獣医さん厩務員さん自ら死を選んでごめんなさい
わたしは頑張って生きなければならかったんだ
みんなのためにも...」
ソラシド
「そうよ。こんどは同胞のために
役に立ちなさい 和馬といっしょに
転生するみんなのために働きましょう
ママたちも協力するから」
ミソラ
「うん ミソラもパパのお手伝いするよ」
ミソラとカノンはこのあと和馬にもう一度謝り
翌日から調教を手伝うことになります
そして和馬の孫の安奈編へ進みます




