もしも白毛の馬と出会っていたら 和馬馬の国へ 完
天翔牧場の経営は優秀な産駒や繁殖牝馬たちのおかげで順風満帆であった
カノン引退後の翌年に例のジュピタードールさんが引退したので
約束どおり馬主さんと契約を結びうちで繁殖牝馬生活をすることになった
彼女も厩舎と馬房を見て快適に余生を過ごせると喜んでいた。
その2年後には高齢を理由に今枝さんが退職した。
これまで俺たち厩務員へのご指導に感謝しております。
ただ厩務員を退職されただけなのでソラシドの顔を見によく訪れてますよ
それとうれしいことに俺にも新しい家族が増えた
紫苑と麗華とのあいだで生まれた可愛いい二人の姉妹たち
どちらも母親似の容姿で麗華との娘はブロンドヘアーだった
二人とも順調に育ち大学卒業後の進路は
妹の榛名は大学卒業後に姉の明菜は資格を取得後獣医師としてDRAへ
就職した。 いずれは牧場へ戻り俺の後を継いでくれると言われ
その時俺は泣いてしまった。 しかしいいことばかりではない
時は残酷で俺の最愛の愛馬のシオンとソラシドは30歳でこの世と
お別れをして馬の国へ旅たっていった 最後の言葉は
「和馬 さよならは言わないわ また向こうで会いましょう」だった
傷心した俺の慰めはミソラとカノンだった
この子たちがいればまだ生きていられる
一応俺も50歳をすぎてから健康に気をつけて生活をするようになり
年に一度の人間ドックも欠かせなくなった。
だから怖いのは防げない自然災害と交通事故だろうか?
え~これフラグかな
そんな変なことを考えていた夜中いつもの神様が枕元へ現れた
いや いつもと違う 何処か真剣な神様の顔だと俺は思った
「和馬さん 明日が命日になります 身辺整理があればお早めに...」
神さまは俺に説明してくれているが俺はうわの空で理解出来ていなかった
俺の寿命は明日で終わるんだ いや俺は健康だぞ 病気なんてない
それじゃあ 原因はなんだ 災害か? 事故か?
「和馬さん いいですか?
注意してほしいのは、まず運命は変えられないということです
確かに一度運命に逆らいわたしは助けましたけど2度目はありません
それと家に引きこもりなどしても明日死ぬのが変わることもありません
下手な抵抗は周りの人たちも巻き込む危険性があります」
和馬
「巻き込む危険性ですか? 俺が素直に死を迎えないと紫苑たちが
巻き込まれるというのですか?」
神さま
「和馬さんにしてみれば理不尽かと思いますが
本来命日を知る手段は人にはありません
これは特別なことなんです
明日は抵抗せず身を任せてくださいね
そうじゃないと和馬さんを馬の国へ召喚できなくなります」
召喚できないと言われ和馬は冷静さを取り戻し覚悟を決める
それに俺が引きこもることで牧場へ隕石でも落とされたら
洒落にならないからな 覚悟決めろ和馬
和馬
「馬の国へいけないと困ります。シオンやソラシドと約束してますから
わかりました 覚悟決めます 明日迎えに来てください」
神さまはすまなそうな顔して天界へ戻られた
さあ こうしてはいられない やることは山ほどある
和馬はまず顧問弁護士宛に遺言書を作成し遺産相続について
あとでもめないようにした
まあ出かけるときにポストへ投函しよう
次は言葉で説明しにくいし最悪止められるので
紫苑と麗華それと母さんと姉さん宛に手紙を書こう
それと榛名と明菜への説明は紫苑たちの判断に委ねようか
「娘たちよ 何もしてやれん父さんを許してくれ」
外が明るくなり時計を見るともう朝の4時過ぎだった
少し早いが馬房へ行きミソラとカノンの2頭連れて散歩へ出かける
カノン ミソラ
「ねえ パパどうしたの? なんか変だよ」
23歳のむすめにまだパパと呼ばれている和馬
和馬
「父さんな今日でミソラとカノンとお別れなんだ
そして馬の国へ行く お前たちのママの所へ
先に逝くから お前たちはあとでゆっくり
くればいいからな 今日までありがとう」
ミソラとカノンは2頭歩を止め和馬を見る
頭のいい二人は理解したらしい
「それじゃあ もう神様来たの?」
和馬
「そうだよ。お別れといってもまた会えるからな
すこしさみしいが父さん 我慢するから
急いで来なくていいからな」
和馬はこの子たちが死に急ぐことがないようにと
くぎを刺したが
ミソラとカノン
「いやだ パパといっしょに逝くよ」
和馬
娘たちをなだめ慰め また会えるからと説き伏せたが
はたしてどうなることやら
朝食の準備をすませ馬房を出るときミソラとカノンは
和馬の後姿を見えなくなるまで見送っていた
いつもと違いすごく寂しげな様子だった
その様子をみて紫苑はいつもと違う違和感を感じていた
そして今日の和馬の仕事は函館競馬場への馬の輸送だ
一人馬運車に乗りこみ一路函館を目指す
いつもよりも慎重な運転を心がけていた。
最初は緊張して空から隕石でも落ちてくるのかと心配したが
1時間もすると
「あ~あ やめた 気にするな 自然体でいこう
もしかすると神様のいたずらかもしれん
ひょこり夜に現れてテヘペロするかもな」
そんなこと考えながら無事に函館競馬場へ到着し馬房へ馬を届けた
さあ気分転換にいつもの美味い定食屋で昼飯にしようと
競馬場近くにある店へ徒歩で向かう和馬
大きな交差点の向かい側に目当ての店がある
歩行者用の信号が青信号に変わると和馬は普段と違い
周りの安全確認をしなかった。
※いつもは渡る前に左右を確かめていた
車道は全部で3車線で右側は右折専用車線だが車は当然赤信号で
停止しているが中央の車線には停止車両はいなかった
和馬はそんなことは気にしないで正面をみて歩き出した
右側からは大型のトレーラーが走ってきてるが
周りの歩行者たちはみな停止線で停車するとこの時
思っていたが速度を落とすそぶりもみせず違和感を感じた
信号交差点へさしかかろうとしているが目に映る
ドライバーはハンドルへ覆いかぶさるような不自然な様子で
正常な運転操作しているとわ到底思えなかった
「危ない 逃げろ」 「轢かれるぞ」
周りの掛け声で和馬は不意に目線を右へ向けるが
もうよける時間は残されていなかった
まじかにせまるトラックを見て和馬は悟る
ああ、俺は死ぬんだ 紫苑、麗華暫しのお別れだ
和馬を跳ね飛ばしたトラックはその衝撃で偶然ドライバーの右足が
アクセルからブレーキへ移動し速度が落ちていき最後は
中央分離帯側の車線上で停止した。
周りの歩行者たちは迅速に行動し119番へ通報するもの
和馬とトラックへと向かうものへとわかれた
和馬は20メートルほど跳ね飛ばされ意識は朦朧としていた
即死は免れたが誰が見ても助からないとわかるほどの
重傷だった
「大丈夫ですか? 今救急車呼んでますから
それまで頑張ってください」
和馬はその声に対しわずかに頭をさげて反応した
3分ほどで救急車が到着してその場でできる処置をすませ
和馬はストレッチャーに載せられ救急車の中へ移動
その時和馬の視界には天から舞い降りてくる馬の神様がみえた
これが和馬が見たこの世の最期の記憶になった
救命救急センターへ搬送されたが到着前にすでに
和馬の心肺は停止していた。
心肺蘇生処置も当然行われたが意識が戻ることもなく
紫苑と麗華は冷たくなった和馬と対面することになった
和馬にすがり泣き崩れる紫苑と麗華
其の姿をすまなそうに天からみてる和馬と神様
神さま
「和馬さん 紫苑さん麗華さんにはお別れの言葉かけられましたか?」
和馬
「いいえ、引き留められると思いましたから
手紙にしました。どうせまた会えますから
その時にもう一度謝りますよ」
神さま
「そうですか そうですね」
和馬
「神さま 今更なんですが俺を跳ね飛ばしたトラックのドライバー
俺を轢いて逮捕されましたか」
神さま
「運転手さんも和馬さんと同じ病院へ搬送されましたが
病院で死亡が確認されました。死因は脳出血ですね」
和馬
「やっぱり 病気でしたか じゃあその人も不運ですね」
神さま
「和馬さん 怒らないのですね まあ確かに3週間ほど休みなしで
働いて睡眠もフェリー乗船時の3時間の仮眠だけのようでした
深刻ですね現在のドライバー不足」
「それでは和馬さん そろそろ逝きましょうか
馬の国でソラシドさんとシオンさんも
首を長くして和馬さんが来るの待ってますよ」
和馬
「そうですね それよりも心配なのはミソラとカノンのことです
俺のあとを追わないですよね 自○とか
飼い葉は朝与えたときは食べてましたけど」
神さま
「...」
和馬
「神様 まさか」
神さま
「和馬さんに嘘はつけませんね あの子たち
和馬さんの与えた飼い葉を最後にこのあと
何も食べません そして衰弱死してしまいます
馬の国へきたらしかってあげてくださいね」
和馬苦笑いする
「そんなに俺のこと慕っていたなんて
喜んでいのか 怒っていいのかわかりませんね」
神さま
「それだけ 和馬さんがあの子たちに愛情を注がれて
いた証拠ですよ 誇ってください
正直褒められた行為ではないですけど」
では行きましょう 馬の国へ
馬の国へ到着した和馬はそこで懐かしい人と馬たちと再会を
果たしますが その後すまなさそうに現れた
ミソラとカノンはどうなったのやら
もしも編はこれで終わりですが馬の国での話はアフターストーリーで書く予定です




