追憶 天馬のお葬式
本文で明確に描かれていない補足的なお話です
20XX年 父親の俺よりも先に息子が天に召された
告別式が終わり火葬場へ 煙突から天にのぼる白い煙を眺めていると
隣に寄り添う妻あゆみが
「今頃 天馬馬の国かしらね?」
息子が亡くなり意気消沈していた妻の声でふと我にかえる
「ああ、そうだな きっと馬たちと仲良くやっているさ」
この二人も天馬から馬の国のことは知らされていたが
馬の国へ行くか?の提案には即答しなかった
確かに馬は好きかと問われれば好きと答えるが
息子ほど馬に愛着がない自分たちがいっても役に立てないと
「すまんな 天馬 俺も母さんもこの世界で輪廻転生するから
悪いがお前の所へはいけない」
天馬はその返答に少し寂しげな表情を見せるが
「まあ、俺も強制できないからな 二人の意思を尊重するよ」
まさか 天馬がいる馬の国へ美鈴はともかく 娘とその旦那
それに騎手で調教師のあの二人までその誘いに乗っていると
天馬の父親の翔馬も考えていなかった
「ねえ、お父さん 天馬はほんとは7歳の時の事故で
死んでいたのよね?」
翔馬にとってそれはトラウマ的な嫌な思い出だ
いつものように天馬を連れていつもの競馬場へ行くときに
事故にあい重傷を負ったが 奇跡的に快復して医者も驚いていたが
あの奇跡的な出来事は馬頭観音様のご加護であったなんて
俺も天馬に聞かされて心底驚いた
「ああ、今でもあの時のこと昨日の出来事のように
忘れることはないな 俺は最初天馬のもとへ向かうとき
最初から助からないと考えていたからな」
天馬は右折車に横断歩道上で跳ね飛ばされ十メートル先の
馬頭観音様の祠の草むらに着地したが
跳ね飛ばしたのが大型トラックだったため周りの通行人も
皆即死だと疑うものはいなかったほど酷い惨状だった
「それじゃあ 天馬は新たに50年以上の寿命を
神様から与えられてその恩返しのため
馬の国へいったのね」
妻のその言葉を聞き
「それでもな 親の俺たちよりも先立たれるなんて
これほどつらいこともないな」
「そうね 美鈴さんもこれからが大変よね
皐月ちゃんと優駿君がいるけど無理しなければいいんだけど」
「まあそれに関しては佐藤さんと伊藤さんに頼るしか
ないのが心苦しいが俺たちにも支えられることもあるだろう
今はまだ見守ることしかできないのはほんと不甲斐ない...」
あゆみが話題を変える
「それにしても告別式で参列していただいた
方の中に貴方が勤めていた会社の社長さんがいたから
驚いたけど どなたの関係者なのかしらね?」
翔馬が定年を迎え退職して10年ほどになるが
定年前は部長職を任されていたので
社長クラスのVIPも妻ともども面識があった
ああ、そのことかと翔馬
「今はもう馬主を息子さんへ譲っているが
馬主の現役当時天翔牧場の産駒を競り落とし
所有していた馬がG1勝利しているんだ
まあ その関係だよおまえも紅白の饅頭覚えているだろ?」
あゆみは記憶をたどる
「あのお饅頭 その記念だったのね
それじゃあ あなたが部長に昇進したのも
天馬のおかげなのかしら?」
翔馬その言葉にぐうの音もつげず
「それはまあ..俺の実力だと信じたいな...」
これはまずい
「あなた そんな顔しないのよ 誰も天馬のおかげだと
思わないわよ 一部上場企業なんだから
そんな私情を挟まないわよ 幼なじみの私の言葉信じなさい」
その話題から 翔馬が栄転で本社勤務の話に
天馬がまだ学生のころ翔馬の転勤で東京本社勤務となったが
単身赴任なら住宅手当の補助で1Kくらいのアパートなら
会社から電車で30分圏内でも探せばあったが
家族3人で住むとなるとせめて2Dkか2LDKは必要となり
早朝5時起きで通勤電車に揺られのも覚悟で不動産屋で
賃貸住宅を探す予定だったが
天馬が通院する病院の近くで会社からほど近い山手線沿いの高級住宅地
でもある不動産屋で優良な物件を見つけた
会社まで電車で15分と近く 天馬の通院する病院まで徒歩でわずか3分
病院の目の前の住宅が新築で売りに出されていた
価格は庭ないが1階が車庫で3階建ての洒落た間取りで価格は
庶民では買えそうもない億に手が届くような豪邸だった
その新築の住宅を購入できたのは天馬の力のおかげ
年末のアリーナ記念での当たり馬券の配当だった
競馬場の窓口で現金で受け取り 警備員さんの護衛つきで
最寄り駅までその足で不動産屋に出向き現金で支払った
※ 当然税務署へ申請して税金を支払いました
「まさかその病院の院長先生の息子さんが皐月のお婿さんになる
なんて 何があるかわからないわね ほんと」
「そうだな 俺もあのアリーナ記念以降は馬券購入辞めたからな」
あゆみもどうして競馬をやめたのか理由を今まで聞いていなかったので
「でも どうして辞めたの?」
「天馬を見て目が覚めた 天馬が競馬場へ向かうとき
ボストンバッグを持参したのをみてな
心底恐ろしくなった 俺は小心ものなんだ
あの衆人環視のもと窓口で現金を受け取るなんて
二度としたくないよ」
※どうして高額賞金でも現金で手渡すのでしょう 銀行振り込みしてほしい
ネットでの購入だと税務署に即ばれするからでしょうか?
宝くじは購入の際 消費税が含まれるため非課税ですが競馬の配当金は
購入時に非課税のため 50万以上は申告納税の対象になるとのこと
あゆみはあきれる
「貴方が判断して購入した馬券ならそんな心配いらないでしょう?」
「まあ、そうなんだがな」
そんな 会話をしているところへ
「お義父さん お義母さん」
声の主は 美鈴だった
「美鈴さん 気を落とさないでね 天馬の分まで長生きして
牧場のこと私たちでは力になれないかもしれないけど
話を聞くことはできるから ねえあなた」
「そうだぞ それに天馬は望む場所へ行けたんだ
美鈴さんも そこへ行けば必ずもう一度会えるから
それを励みに頑張ることだ 俺たちも力になるから」
美鈴は心労のため 顔色もあまりよくないが笑顔で答える
「そうですね 馬の国で再会したときに胸を張って再会したいですから
皐月たちと牧場をもり立てて今以上に大きくしていきますね」
「私たちも微力ながら力になるから
これからもよろしくね 美鈴さん」
天馬の両親と美鈴は煙突からでる煙を見ながら天馬に誓う
「天馬 見ていてね あなたの分まで皐月たちと頑張るから
こんど私がそこへいったら 私のこと褒めてね
天馬 さよならは言わない またね」
昨日旅行で札幌競馬場でG2のレース見ました
白毛馬が2頭出走したこともありお昼前からパドックは満員で一度離れると
元の所へ戻れないほどでした 当日の気温は北海道とわいえ30度超え
風が心地よいけれどさすがに3時間ほど炎天下にさらされ大変でしたが
白毛2頭が現れその苦労は報われました。
これからも怪我無く無事に引退してほしいと願います
その日は過密スケジュールで午前中はホースパークに行きウインド母さんを見にいきました
30歳を超えても元気そうにいなないているのを見て安心しました




