外伝 爺さんと仔馬の運命的な出会い 後編
すいませんいつものようにレース場面を省略しています
G1を何勝したのか皆様のご想像にお任せします
渡辺牧場から長時間移動の末到着したのはDRA美浦トレーニングセンター
馬バスはそのまま厩舎へ向かい 俺はトレセンへ入場するためのIDパスを
受け取りに事務所へ向かう 手続きは済んでいるため挨拶がてら
事務所へ行くことにした 俺の知り合いにも会えるかもしれないからな
事務所の扉を開けて中へ入り 事務机で書類整理をしている女性に声をかける
「お仕事中 すいません 今日から福永厩舎で厩務員助手として働く
ことになりました 天翔サトシと言います IDパスを受け取りにきました。」
事務処理中の女性が天翔の名前を聞いた途端顔をあげこちらを見て
「あ~先輩 お久しぶりです 桜井です 覚えてますか?」
そこにはDRAの札幌競馬場勤務の際、同僚だった桜井千沙さんがいた
「あれ、桜井さん お久しぶりです よかったですね念願が叶って」
「ありがとうございます。 天翔さんも 退職後に叶ったようですね
おめでとうございます」
実は二人とも競走馬と触れあえる職場を希望していた仲間でした。
桜井さんも 毎日大好きな競走馬を通勤途中でも見学できるので
満喫しているようです
桜井さんは 会話をしながらでも天翔のIDパスを引き出しから取り出し
カウンターの上に置いた
「天翔さん ご確認ください」
以前所持していたDRAのIDパスと似ている これがあればトレセンの中も
競馬場のパドックにも関係者として入場することができる
一度でもカムイを連れてパドックを歩けるといいな
そんな二人で和やかに会話しているところへ
「天翔さん すいません至急馬房へ来てください
スーパーカムイが大変なんです」
馬バスで渡辺牧場まで引き取りに来た厩務員が凄く慌てている
まさかカムイが怪我でもしたのだろうかと
不安になったサトシは桜井に会釈すると走り出す
「天翔さん 今度二人で食事に行きましょうね...あ、いっちゃった」
桜井千沙 年齢25歳で独身 見た目小柄で可愛いい女性
男性職員からの人気も高く 未だ独身なのが不思議な女性である
好きな男性のタイプがなんと天翔サトシだった。
サトシは迎えに来た厩務員の田中さんの後を追いかけた
到着すると周りは騒然として馬房の中にはカムイが暴れている
姿が目に入る
よかった 怪我はしていないようだ サトシは大声で呼びかける
「カムイ どうした 俺はここにいるぞ」
耳をぴくぴくさせ 周りを見て サトシを見つけたカムイは
すぐに大人しくなり サトシ近寄ると鼻をこすりつけてくる
「お前はいつまでたっても寂しがりやの甘えん坊だな」
その姿を見ていた福永調教師
「やっぱり天翔さんに来てもらって正解でした
やっぱり才能がある馬でも大切なのはメンタルです
安心できる環境を用意しないと馬は気持ちよく走りません」
カムイの首筋を撫でながら
「カムイは幼駒の頃から私の言葉には素直に従んです
私としては不思議なんですけどね」
その言葉を聞いて サトシに甘えてくるカムイでした
翌日以降カムイは2歳デビューに向け調教に励んだ
当然その現場へはサトシが連れていくことになるがカムイはサトシが
自分を見ていることで精神的にも安定するのか他のデビュー前の2歳馬より
実力も抜きん出ていた。そしていよいよデビューの時を迎える
舞台は東京競馬場新馬戦 カムイは下馬評どうり1番人気になるが本人は気にもしない
カムイのそばにはサトシがいる カムイにはそれがとても心地良いのだろう
今もパドックを周回しながらサトシに甘えている
本来であればこの場には先輩の厩務員がいるのが普通だが福永がサトシを指名した
「天翔さん カムイのこと頼みました」
サトシは福永へ返答する
「微力ながら 頑張ります カムイをターフへ送り出しますよ」
そして時間が来る
「止ま~れ」
その掛け声がかかると騎手の方が整列して騎乗する馬のもとへと向かう
カムイに騎乗するのは福永先生の息子さん 福永純一さん
福永純一さんは重賞勝ちはあるがG1勝利はないのでカムイで
G1ジョッキーの仲間入りを目指している
「純一さん カムイのこと宜しくお願いします」
「父と天翔さんのためにも頑張りますよ」
純一はカムイの首筋を撫でて
「それにカムイに騎乗して重賞勝てないようなら僕は引退しますよ
それほどこの馬には力がありますからね」
新馬戦スーパーカムイは皆の声援を背に受け見事1着でゴールしその後同世代の馬を蹴散らし
2歳馬勝ち頭としてスター街道を驀進した。
3歳でもスーパーカムイは皆の夢を背負い勝ち進みダービー馬になり
渡辺さんと馬主の念願も叶いクラシック3冠を制すると
その年の年度代表馬に選出された
本来ならあり得ないがこの年に天翔牧場産駒の牡馬がいなかったのは幸いだった。
5歳最後のアリーナ記念でスーパーカムイは惜しまれつつ種牡馬になるため引退し
種牡馬として2度目の人生を伊藤牧場で過ごすことになる
いっぽう天翔サトシは天翔牧場と伊藤牧場からの厩務員要請を断り
息子のもとで世話になることにした。
息子のところで世話になってからのサトシはいつもベランダから
けっして目視で見ることが叶わない北の大地を一日中眺めていた
サトシはその後カムイと再会することもなく子供と孫に看取られ70歳でこの世を去る
看取られたとサトシの顔には安堵の表情がうかんでいた
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サトシは草原で目が覚め立ち上がる
その容姿は20代へと若返っている
そうここは馬の国
サトシは死を迎える前日夢の中で馬の神様と出会い馬の国で調教の手伝いを
することを二つ返事で了承した。それはなぜか?
近くにいた馬に目的地の場所を会話に問いかけ会話ができることに
多少驚きながらも教えられた目的地へ向かうサトシ
数多くの馬たちがいる噴水広場にはサトシが一番会いたい馬がいる
その馬もサトシの姿を見つけるとこちらへ向かってくる
「カムイ久しぶりだな」
カムイはサトシの胸に鼻をこすりつけ
「サトシも久しぶり 会いたかったよ」
サトシは昔のようにカムイを優しく撫でる
スーパーカムイは種牡馬として伊藤牧場で繋養されたが
その期間は短く5年後疝痛の病でこの世を去る
それは偶然にもサトシが亡くなる2日前のことだった。
※カムイのことはお見舞いに訪れた美鈴から聞かされていた
「ああ、カムイまたよろしくな」
そしてもう1頭の栗毛の綺麗な馬が2人に近寄る
「誰かと思えば我が息子と天翔さんですね」
その声に驚き振り返ると栗毛の牝馬が笑顔で見ている
「母さん?」
「カムイの母さん...プリンセスカムイか?」
「そうです、お久しぶりですね でも私はすぐに転生するので
おそらく会えるのはこれが最後だと思います
名前も全て忘れてしまいますからね」
サトシも天馬の話を聞かされていたがまさかG1勝たないと何度でも
転生することになるなんて馬の神様から説明され驚いた
「でも最後に会えてよかった これで未練もないわね」
「母さん 僕は母さんのこと忘れません 必ずG1勝って帰ってきてください
お帰りになるまでここで待ってますから」
「嬉しいこといってくれるわね りっぱになって母親として
これほどうれしいことはありません」
「これもみな 天翔さんのおかげですね」
その2頭は別れの時間が来るまで仲良く過ごした
プリンセスカムイは札幌記念の後秋のG1の出走予定を故障で急遽取りやめたが
出走していれば必ず勝てたと言われている名馬なのだから
一度の転生でこの馬の国へ戻ってくるだろう
「出来れば記憶をなくさないよう馬の神様へお願いをしてみるか」
この後サトシは若返りした天馬と再会を果たし馬の神様の願いのもと
天馬に協力をし馬の調教に励むことになる
そのサトシの横にはいつもスーパーカムイが仲良く寄り添っていた。
追記
天馬の調教に付き合うため競馬場へ到着したサトシとカムイの前に現れた
2頭の馬はご存じプラチナとメリーローズはカムイを見て
「あなたは私たちの孫ね」
まあ確かにカムイの父親はこの2頭から生まれた産駒だ
メリーはサトシに懐くカムイを見て優しい笑顔を見せ
「私と同じ尾花栗毛なのね やっぱり天馬の家系の人間と
私たちは馬が合うようね」
天馬がうなずく
「ああ、そうだなサトシさんは父さんの弟だが若い頃は
俺によく似ていたといっていたからな」
その言葉でサトシはなんでカムイが自分に懐くのか
疑問が解けた気がした 隔世遺伝なのか?
サトシはカムイを撫でて
「カムイこれからもよろしくな」
カムイはその言葉を聞き当然だと嘶く
天翔サトシとスーパーカムイのお話はこれで終わりです。
カムイとの出会いは運目的な出会いですがなぜこれほどカムイがサトシに
心を許したのかわかりませんが馬の国でこれからも仲良く暮らしていけるでしょう
※また馬の国へ来たのはサトシが2番目になりますので本編から多少違いが
ありますがその点ご了承ください




