終わりと始まり
区切りがいいので100話で終了します。
和馬は立ち上がるとその場から立ち上がると周りを見渡した。
空を見上げると雲が一つもなくはるか遠くの地平線まで
見渡すことができる草原が続いている不思議な世界
過ごしやすい気温で涼しげな風が頬を撫でる
和馬は進む方向を見極めると歩き出す
和馬が向かう先には馬が2頭仲良く草を食んでいる
ここはどこだろう?
風景的には北海道ならどこでも見られる景色だが馬が放し飼いで柵もない
天翔牧場で生産牧場を再開して60年余り
相良和馬は天寿を全うして馬の神様との約束どうり今馬の国にいる
和馬の愛しい妻たちは和馬よりも早く天寿を全うしこの世界にいるはずなのだが
和馬が目覚めた場所には誰もいなかった。
だがけっして不安なわけでもなく和馬は心配をしていない
理由は妻たちが亡くなる前に馬の神様と面会したと和馬に告げたからだ
和馬の考察ではこの国には現在天馬達総勢で8人はいるはずなのだが
※和馬の両親と姉は既に他界したが馬の国へ来るのを断り元の世界で転生を選んだ
天翔牧場とホースパークの経営は和馬の子供と孫たちで問題なく存続している
もちろん紫苑の親族も厩務員として天翔牧場を支えてくれている
和馬が亡くなるまではたから見れば天翔牧場の経営も順風満帆だと思われたが
けっしていいことばかりでなく和馬も繋養馬たちとたくさんの別れを体験した
寿命で天寿を全うした馬が大半だが中にはレース中の怪我が原因で
予後不良の診断で安楽死処分された馬もいる
歩くこと数分で馬たちのもとへたどり着く和馬【青鹿毛と栗毛の馬です】
念話で会話することにした。
「あの~すいませんが道を...」
言葉を遮るように青鹿毛の牡馬が念話で和馬へ問いかける
「見たところ 天馬さんの肉親のようだが
天馬さんならこの先にある噴水広場にいると思うよ」
驚く 和馬 驚いた理由は和馬を一目で天馬の肉親と判断したからだ
「どうして俺が天馬さんの肉親とわかりましたか?」
もう1頭の牡馬が返答する
「それはな 簡単なことだよ 天馬さんと顔立ちがそっくりだからだよ
華奢で色男のところかな お兄さんもてるだろう」
「ええ、まあ、奥さん二人いますから」
和馬は2頭にお礼を言うと噴水広場へ向かうため歩き出す
あの2頭の名前は、日本競馬界でも有名な功労馬の方たちだ
○○〇サイレンスと○○〇テースト 日本を代表する種牡馬でした。
サンダーのおじいちゃんだがやっぱり雰囲気があいつに似ているな
暫く歩くと噴水広場が視界に入る
和馬の目には人間が数人ほど集まり会話をしているのがわかる
和馬は紫苑たちを驚かそうと声をかけることなくそばへ向かう
すると和馬の視界に天馬に寄り添う尾花栗毛のシオン?が
和馬は久しぶりにシオンに再会した嬉しさでシオンの?
後ろから近寄ると金色のシッポとお尻に抱きつき頬すりする
「シオン 会いたかった」
お尻に抱きつかれ驚いたシオン?が振り返る
「天馬に似てるけど誰?」
和馬は顔を上げシオン?を見ると
「シオン 大好きな俺の顔見忘れたのか?」
「え、ごめんなさい 初対面ですね 天馬この人誰なの?」
天馬は笑う
「ああ メリー俺のひ孫の和馬だよ
こいつも尾花栗毛の馬にご執心なんだ
まあ許してやってくれ」
「なんだ 顔立ちが似てるから たぶんそうだと思ったわ
別に気にしてないからいいわよ 手つきが天馬にそっくりで
気持ちいいしね でもね 私はいいけど シオンちゃんに
わるいわね」
メリーは首を大きく振るとシオンを見る
シオンは和馬の動向をすべて見ていたがまあ
これが和馬だとなんだかほっとした
それに久しぶりに和馬に会えて嬉しかった
「和馬 愛しのシオンはここにいるわよ
メリーさんは天馬さんの愛馬なんだから
あまりなれなれしくしないほうがいいわよ」
和馬は声を頼りに首を左右に振りシオンを見つけて駆け出す
「あ~ シオン 会いたかった」
和馬はシオンの首へ抱き着くと涙声で会いたかったと
もう一度つぶやく
「和馬 私もよ いずれ会えると思っていたけど
もう少し早く来てくれるとよかったかな
まあ 私が寂しかっただけだけどね」
和馬のその姿を遠巻きに見つめる人たち
紫苑と麗華はぼやく
「ねえ、麗華 私たち和馬の奥さんよね
どうして最初に声をかけるのがシオンなのよ」
「ほんとね 和馬は何年経っても昔のままよね」
シオンに癒され 落ち着いた和馬は皆の前で頭を下げる
「すいません 挨拶が遅れました 相良和馬と言います
新参者ですがこれから宜しくお願い致します」
和馬は顔を上げると失礼ながらも一人ひとり顔を見て
名前と顔を思い出す
なぜか? 馬の国へ来ると馬は3歳前後の姿へ戻るし
人間は20歳前後の若い姿へ戻るからだ
すると二名ほど和馬の記憶にない人物がいる
和馬は失礼ながらも尋ねることにした
「誠に申し訳ありませんがどちら様でしょうか?」
盾さんと横長さんが和馬の前に出ると会釈をする
「そうでした 初対面でしたね
僕は生前天馬さんにお世話になりました
騎手の盾と言います。」
「私は騎手の横長と言います どうぞよろしくお願い致します。」
「レジェンド騎手の盾さんと横長さんでしたか
動画で拝見していましたけどお姿がお若いので
わかりませんでした。どうもすいません」
和馬は盾さんとの会話中
「そういえばここにいるシルクもドバイと凱旋門賞の勝ち馬なんですよね
おめでとうございます。」
「ありがとうございます。それでも盾さんの時のように
単年では両方勝てませんでした。凱旋門は2回目でしたから
最初の挑戦では2着でした。」
「2回目でもりっぱな成績ですよ あの馬場は日本育ちの馬には
なじみがないですからね」
シルクも俺の横であの馬場は走りづらいと愚痴をこぼしている
和馬はそんなシルクの頭を撫でていた。
盾さんとの会話でここへ来たときに出会った最初の馬が
○○〇サイレンスだと教えてあげたら
盾さんと横長さんが一度会ってみたいといい現地へ向かった。
天馬が和馬へ
「俺たちの世代だと○○〇サイレンスは神様みたいな種牡馬だからな
あの名馬がいたから日本競馬は世界へ追いつくことができた
ようなものだからな」
「俺が他界する前の日本だとサンダーの子供が
その位置にいますから不思議なものです」
「和馬 そろそろ奥さんのところへいったほうがいいぞ」
周りを見ると紫苑と麗華が俺を見ている
「そうですね、それじゃあ またあとで」
「紫苑 麗華 遅くなってごめん
久しぶりに会えて嬉しいいよ」
紫苑が言葉を返す
「いいわよ どうせ私たちはシオンに負けてるからね
でも こうして会えると なんかほっとするね」
麗華が
「それにこうして学生時代の和馬に再会できたから
私もここへきてほんとによかったと思うわ」
麗華と紫苑が再会を喜ぶように和馬に寄り添う
「そうだな 学生時代の紫苑と麗華と3人でいると
なんか懐かしい気分になるけどなんか照れ臭い
二人とも...だから」
「まあ、それは私たちが綺麗だと褒めてくれているのかしら」
和馬はその言葉に返答せず
頭をかきながらうなずくだけだった。
「またこうして3人出会えてよかった
これからもよろしくね 和馬」
「そうだな 俺たちの2ラウンド目が始まる
競走馬たちがこの馬の国で平和に暮らせるように
1頭でも多くのG1馬を育てような」
その仲良し3人組の中へ入りたい馬たちが和馬たちを囲む
「和馬 私のこと忘れていないかしら」
「パパ カノンたちもいるよ」
「お父さん シルクも頑張るよ」
その3頭以外の天翔牧場の産駒たちが知らない間に集まっていた。
「私たちも協力しますよ」
和馬たちの活動は始まったばかりだ
今この瞬間でも競走馬が1頭また1頭登録を消され処分されている
そんな理不尽な目に合う競走馬を救うため引退馬繋養牧場が必要なのだ。
またオマケとして投稿するかもしれませんが、続編の予定はないです
ここまで読んでいただきありがとうございました。




