Dreamf-14 皇、再臨
ビーストによる襲撃を受けたその日の日没前――
円を含むSSCの主要メンバーは研究所に訪れていた。
「話とは何だ? 相良」
「何だ? って、これの事に決まってるじゃない。
と、桜子は台上に乗せられた巨大な石板を指す。
桜子は元SSCのアドバイザーであった。つまり、沙希の前任者である。故に交流もあったのだ。こうして研究所で重役を任されている人物がかつての仲間であるというだけで話す際も身構えなくてもいいようだ。
もっとも、桜子が居た頃を知らない円は少々緊張していた。相良が研究所の重役である、という理由だけではないが。
「円が持って帰ってきた石板か」
「…………ッ!!」
「ん? どうした円」
「あ、あぁ、いや何でもないですよ?」
「声がひきつってるぞ」
思わず、石板を研究所まで持ち帰った日の事を思い出す円。様子がおかしいのは明らかである。当然円もそうだろうと思っているが、だからと言って、今思い出している事を口にしたいとも思わない。口にするためにさらに明確に思い出さないといけないのだから。
そんなただならぬ様子を見た桜子は「ふふん」と楽し気に鼻で笑い、そんな桜子の様子を見た吉宗が、
「桜子、お前さん俺の部下になんかしたんか」
と、問う。
「いえ? でも生のスピリットがいたからちょっと色々試してみたんです」
「…………」
「もちろん、痛い事はしてませんけど。ね? 天ヶ瀬君」
突然話を振られた円はビクッと身を震わせてガタガタと身を震わせる。
思い出したくない――
思い出したくない――
思い出したくない――
そんな、脳内を駆け巡る言葉。
「あぅあぅあぅ……」
無意識に言葉にならぬ声を漏らして固まっていた。
「桜子、話の後で俺の部屋来いや」
「え……?」
「ちょっと俺とお茶して話聞かせてもらおうやないか」
「えぇ、いいじゃないですかぁ。スピリットがこうして間近にいるなんて今まで無かったのに」
「おうおう、じゃあ話し終わったらその感想をお聞かせ願おうか」
「はぁい」
気乗りしないということで、間延びした返事を返す桜子。そして咳ばらいを一つ、
「じゃあ、ちょっとお話してもいいかしら」
桜子は先ほどまでとは一転して真面目な声色で口にした。
「まあ、別に驚くべきことじゃないんだけど」
「早くしろ」
「もう、せっかち。まずこの石板についてわかったことから」
急かされて、
「結論から言うと、この石板は発見された星の遺物で作られた記録物である事が分かりました。つまり、その星で何があったのかの書物みたいなものを、この石に記したのね。驚くべきことよ? それってつまり、文字があるってことでまたそのつまり、文明があったって事。3000万年前よ? 人類史が出てくる前にはすでに遠い宇宙の彼方では我々人間たちと同じような生活を送っていた。まさに絵に描いたような先史文明じゃない。ああ、だから何って言うのは無しね? 何せ、この記録物に書かれていた物は――」
桜子はこうして自分の中で勝手に質問を想定して話していくのだろう。そんな桜子の口から出たのは、おそらく円が知りたい事――
「今私たちが戦っている彼らの事、
そして、天の精霊と呼ばれる存在の事」
「天の……精霊……」
何故か、円の胸の内がザワザワしていた。




