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二十八話 ウシャの森

前回も書き直しました。


今回もクオリティは低いです。


ついでに酔っ払って書きました

 ウシャの森は、帝国北部に幾つかある森林の一つで、シャウスク駐屯地から街道を西に進んだ所に有る。

 俺達が出発したボリスグラードからは、駐屯地を通るのとは別に、山道を通って西側から迂回する道が有ったが、その道は道幅が狭く整備もされていない。

 しかし、駐屯地を経由するよりも遥かに早く現地に行く事が出来る上に、森のほぼ中央を南北に通っている街道に対して西側から近付く事が出来る。

 上手く行けば、敵の奇襲部隊を背後から襲えるかもしれない。


「って・・・言うは容易いがな」


「どう、した?」


 森に入る直前で脚を止め、針葉樹の生い茂る森を見ながら呟いた俺に、隣に来ていたシモンが声を掛けた。


「いかない、のか?」


 太陽は、既に西に傾きかけて後少しで夕刻となる。

 ここまで半日以上走り続けて来たが、その時点で既に、馬も人も疲れきっていて、流石に森に直ぐ入るのは躊躇われた為に、暫しの休止に入っていた。

 だが、そろそろ進まなければならない。


「良し」


「行く、か?」


 声に出して気合いを入れる俺に、シモンが反応して、準備を始めた。


「休憩は終わりだ。全員準備しろ」


 余り声を張らず、されど良く聞こえるように命じて、カービンを手に取った。

 何時もの様にレバーの動きを確認してから鞍に戻す。

 拳銃を抜いて弾倉を見る。

 シリンダーの動きや、銃口の中を確認して、弾を一発一発装填する。

 拳銃をホルスターに戻したら、今度はヘンリーの顔を見て状態を確認する。


「頼むぞ」


 俺が言うと、ヘンリーが任せろと言わんばかりに小さく首を振るって頬を舐めて来た。


「全員騎乗。横隊で森に入る。ライフル中隊は何時でも降りて戦える様に備えろ」


 回りにいる兵達が、無言で頷いて命令に従い騎乗する。

 その様子を確認した俺もヘンリーの背に乗って部隊の先頭に立った。


「常脚、前へ進め」


 号令を掛けて森に入ると、そこは幾重にも絡まった枝葉が太陽の光を遮った闇だった。

 地面は雪で白く、目の前は枝葉で黒く、森の外と比べて断然暗い、この森は波の人間では歩く事もままならない。

 だが、俺達には、ここを進む事が出来る。


「調子はどうだ。ワルド」


「この程度なら、問題ない」


 俺の更に前を歩く壮年のライカンに訪ねる。

 元々が山林地帯で狩猟をして生活している彼等は、人やエルフよりも夜目が効く上、視界が効かなくとも発達した嗅覚と聴覚で、暗闇の中でも獲物を追う事が出来る。

 だからこそ、俺の下に残ってくれた彼等に偵察斥候の役目を与え、専門部隊を編制したのだ。


「前衛からは何かあるか?」


 前衛とは前衛偵察の事で、本隊の数十メートル先を進み、あらかじめ様子を探る役目を負った小部隊の事で、今回は六名のライカンに命じている。


「問題は無い。今のところはな」


「どう言う事だ?」


 ワルドが気になる事を言ったのに、俺が訪ねる。

 今、この森の中においては彼等ライカンの鼻と耳だけが頼りだ。

 少しでも不安要素を消しておきたかった。


「余り嗅いだ事が無い類いの臭いが多いが、オーガの様な臭いが強い」


「オーガとは違うのか?」


「少し違うな」


 ワルドが言うには、オーガの臭いは人間の加齢臭を強めた様な臭いだと言うが、ここで漂う臭いは、オーガの臭いに微かなアルコールと発酵食品の様な臭いが混じっているらしい。

 僅かな違いを感じ取ったライカンからの情報によって考えられる可能性は、オーガに加えて他の種族がいると言う事が考えられた。


「距離は分かるか?」


「さてな・・・」


 俺が一番気になる事は分からないが、その事で彼等を責める事は出来ない。

 むしろ、慣れない環境の見知らぬ土地に来ている事を考えれば、良くやってくれている。


「・・・っぬ!」


 突然の事だった。

 ワルドが背を伸ばし、耳を立てて周囲を見回した。


「どうした?」


「前衛からの報告だ。敵を発見した。」


「数や種族は?」


 全員に緊張が走る。

 遂にこの時が来た。

 俺は右手を上げて後続に停止を命じ、ワルドの言葉を待った。


「数は五人、種族は良く分からん。オーガの様だが、サイズが小柄な人間程度だ」


「気付かれずに仕留められるか?」


 そう問掛けると、ワルドは口を上に向けて、耳に聞こえない声の遠吠えをする。

 それから少しすると、ワルドが俺に向いて答えた。


「可能だ。どうする?」


「やれ」


 間髪入れずに命じて障害を排除する。

 そうして、また暫くするとワルドから始末したと報告が上がった。


「前衛は現場に留まって本隊の到着を待つ様に言ってくれ」


「分かった」


 部隊に全身を命じ、再び前に進む。

 そして、前衛のいる場所に到着した俺が見たのは、綺麗に首を掻き切られて倒れている紫色の蛮賊だった。


「なんだこりゃ?」


 思わず口から出たのは、そんな言葉で、ヘンリーから降りて死体を良く観察した。


「オーガ・・・にしては小さいな」


 報告された通り、身体は170cm程度で、オーガにしては小さく、どちらかと言えばゴブリンに近い気がするが、ラグビー選手の様な体型はゴブリンからはかけ離れている。

 この、ゴブリン擬きは、皮製の鎧や青銅の鉈の様な剣と短弓で武装しており、明らかに今までの蛮賊とは一線を斯くしている。


「これは、厄介だな」


「コイツは何なんだ?」


「多分、オーガとゴブリンの混合種じゃないか?」


 言いながら死体を弄くり、頭を割って脳を露出させた。


「何をしてるんだ?」


「脳を見ているんだ」


 俺の思った通り、脳の大きさはゴブリンよりも大きく発達していて、手の指の数がオーガと比べて一本多い人間と同じ五本指だ。

 他にも持ち物を漁って見ると、砥石や酒とチーズ等の発酵食品が見付かった。

 こういった加工品等は、今までの蛮賊には見られない特徴で、間違いなく文明レベルが高い種族だった。


「全員に通達する。これから我々が戦う相手は、程度の低い蛮賊ではなく。人間と同程度に発達した他種族と考えて行動しろ」


 兵達に警戒を促して、先に進もうとした時の事だった。


「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」


 進行方向から、怒声と金属音が響いて来た。


「っ!遅かったか!走れ!全員走れ!」


 俺達は喧騒のする方へと走り、騎士団の戦う所へと向かった。


「備えろ!俺の合図で全員下馬して戦闘体勢に入れ!」


 暫く走った先に光が射しているのが見えた。


「全体止まれ!」


 号令を掛けてヘンリーから降りると、兵達も続き馬から降りた。


「戦闘体型に入れ」


 あらかじめ決めていた戦闘体型を形成し、戦闘の準備をする。

 戦闘体型は森の中では役に立たない騎兵を下馬させて二列横隊にし、右翼にライフル中隊を左翼に散兵を配置して攻撃体制に入った。


「全体速足。前へ進め!」


 所謂、行進と同じ速度で歩きだし、300m程進んだ所で停止を命じた。


「全体!撃ち方用意!」


 二列横隊の部隊は、前列が立て膝を付き、後列が立ったままで銃を構えた。

 騎兵隊は拙い動きで銃を構え、ハンマーを起こす。


「後列撃て!」


 号令に従った兵達が引き金を引き、敵の背中に光弾を浴びせかけた。


「ゴッ!」


 いきなりの攻撃に混乱したゴブリン擬きは、一瞬動きを止めてしまい、俺達に格好のチャンスを与える事になった。


「後列は装填!前列撃て!」


 再びの射撃命令に合わせて光弾が放たれ、只野的になったゴブリン擬きに襲い掛かった。

 この、二度にわたる射撃はゴブリン擬きに打撃を与え、敵の戦列に穴を穿つ。


「ゴゴッ!」


 しかし、二度の射撃を生き抜いたゴブリン擬きが俺達に向かって走ってきた。


「撃てる者だけで良い!撃て!」


 三度目の射撃は疎らになってしまったが、ゴブリン擬きの突撃自体が大した事がなかったために、しっかりと防ぐことが出来た。


「突撃!」


 セオリー通り、一斉射撃で敵を崩し、そこに突撃する。

 騎兵隊が銃剣戦闘に馴染みが無い為か、殆どが銃を捨ててサーベルやシャムシールを抜いて斬り込んで行ってしまう。

 しかし、普段の歩兵の銃剣突撃よりも、むしろ白兵戦で力を発揮して次々とゴブリン擬きを斬り倒していった。


「おおおおおおおおお!!」


 俺もサーベルを抜いてゴブリン擬きの一体に上段から斬りかかった。


「ゴッ!」


 驚く事に、ゴブリン擬きは持っていた鉈で受け止めて、組打ちを仕掛けてきた。


「おおっ?!」


 腕を掴まれそうになるのを回避すると、今度は連続で鉈を振るってくる。


「っく!」


 驚く程に強い力で振るわれる鉈は受ける度に腕が痺れ、一撃一撃に必殺の意志が見てとれ、遂に俺の手からサーベルを弾かれてしまった。

「ゴッ!」


 最後の一撃にとばかりに大上段に鉈を構えて降り下ろそうとしたゴブリン擬きに、一気に懐に飛び込んで右手で抜いたナイフを首に突き刺した。


「大丈夫かカイル」


「ワルドか・・・俺は大丈夫だ」


 ワルドが心配して俺の下に来て、サーベルを手渡してきた。


「すまん・・・」


 そう言ってサーベルを受け取った俺は、ワルドと共にカリス殿を捜した。


「カリス殿!カリス殿は何処だ!」


 敵味方が入り乱れる暗い森の中、必死になってカリス殿を呼び続けていると、遂に返答があった。


「誰か!私を呼ぶのは誰か!」


 怒号の鳴り響く中で、その声はとても小さく聞こえたが、しかし、確りと俺の耳に届き、その声のの主の所まで俺を導いてくれた。


「カリス殿!無事か!」


「カイル殿!?何故ここに?」


「無事か!怪我は無いか!」


 漸くカリス殿を見付けた時、彼はたった一人で数十のゴブリン擬きを切り倒し、全身に返り血を浴びながら味方に檄を飛ばしていた。

 その血に染まった様子を見た俺は、カリス殿が怪我をしていると思って急いで駆け寄ったのだが、カリス殿の方はいきなり現れた俺に驚いて、戦いの真っ最中だというのにも関わらず手を止めて、呆然とした表情で俺を見た。


「何故・・・」


 信じられないと言う様に呟くカリス殿に、近づいた俺は、不意に拳銃を抜いてカリス殿の方に向けて引き金を引いた。


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