百三十二話 次回へ続く
「・・・」
懐かしい夢を見た。
俺がまだ人間のままで居られた頃の、まだ大佐などと呼ばれていた頃の古い記憶の夢だ。
あの日から変わった。
戦闘中に撃たれて、気を失って倒れて、それから眼を覚ました頃から、全てが変わった。
「閣下」
「・・・」
「お時間です」
「そうか」
この20年間、随分と走り回った。
少年のままで人として戦ったのは、たったの3年足らず。
後の17年は人を辞めて戦い続けた。
部下を多く失って、仲間も失って、家族も居なくなって、最早俺の周りには誰も居ない。
ただひたすらに軍旗だけを守り続けた。
それ以外に出来る事もやる事も無かった。
そして、今、遂に敵すらも居なくなろうとしている。
「次に消えるのは俺かな・・・」
皮肉って呟いてみるが、それに答える者は居ない。
昔ならと懐かしんでも、最早それは戻ってこない。
「ハンスは如何しているか・・・」
ハンスも、エストも、ソロモンも誰も隣には居ない。
皆、俺の下を離れてしまった。
兵達も、俺の手を離れてしまった。
アレクト陛下にも随分と会っていない。
「この戦いが終わったら・・・」
敵が居ないのなら、戦う必要が無いのなら、もう、ここに居続ける事も無い。
後は老いて朽ち果てるだけ。
酒に溺れてみるのも良いだろう。
どうせ、止める煩わしいナジームも居ない。
「義務は果たしたか」
責任は十分に取った筈、もう、そう考えても良いだろう。
思えば、青臭い事を言った所為で酷い目にも遭った物だ。
もしも、俺がもう少し臆病で、それでいて責任感の無い奴だったら、これ程に苦労する事も無かった。
初めての日にさっさと逃げていられたら、王太子時代のアレクトを棄てて逃げていられたら、世界はもっと違った結果になっていた筈だ。
「・・・」
如何してこうなったのか、そう思う事は何度もあった。
だが、今にして思えば、成るようにしてなった結果なのだ。
「そう言えば・・・アレは・・・どうなったか」
ふと、古い事が思い出された。
だが、それは直ぐに記憶の彼方に弾き飛ばされた。
私は、ずっと着続けている緑色の大きな軍服を羽織って、サーベルとトマホークを腰に差して扉の外に出て行った。
今日こそ、共和国のクソ共を根絶やしにする絶好の日和。
今日こそ最後の戦いの日。
20年間の全てを精算する日。
私は、配下の木偶人形共を前にして口を開いた。
「捕虜は必要ない!皆殺しにしてやれ!!」
突然ですが、この物語はコレを持って終了となります。
長い間、ご愛読ありがとうございました。
なお、続編となります【オジサマ怖すぎます】を同日より投稿開始いたします。
宜しければ、そちらも読んで頂ければ幸いです。
それでは、今までありがとう御座いました。




