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21

流星会の人間は、屋敷に突入した以外に、車で待機している連中がいた。人数で言えば二十を超えている。二代目は彼らを使い、森の中に隠れる少女を炙り出すつもりだった。


「二人一組で行動しろ。爺さんを担いで移動しているんだ。そう遠くには行っていない。絶対にこの森の中にいるぞ」


二人一組のグループがいくつか、ほぼ等間隔で森の中を移動して行った。森はそれほど広くはない。この方法で、少女は確実に見つかるだろう、と二代目は考えていた。しかし、森の中心部に差し掛かったあたりで、異変が起こり始めた。


気付けば、離れたところで歩いていたはずの仲間がいない。突然、バディを組んでいたはずの仲間がいない。いつの間にか、森の中に一人だった。そんな調子で仲間が減っていることに、彼らはパニックになっていた。銃声が響くこともなければ、助けを求める声もない。争うような音も、断末魔の叫びすらない。それなのに、忽然と仲間たちが消えて行く。まるで、森の中をさ迷う悪魔が、仲間を一人ずつ連れ去ろうとしているかのようだ。


「おい、一番。状況を報告しろ」


二代目は通信機を使って呼びかけるが、返事はない。


「おい、二番。一番からの応答がない。そこから、どうなっているか見えるか?」


「二代目、一緒にいた村松が、消えました!」


返事はあったが、それはさらなる異常を報告するものだった。


「おかしいですよ、二代目。さっきまで隣を歩いていはずなのに、落とし穴にでも落ちたみたいに…」


手下の報告は唐突に中断された。


「おい、黒川。どうした、続けろ!」


返事はない。その後、二代目は他のグループにも報告を促したが、十あるうちの四つから返事があるばかりだった。


「全員戻れ! 俺の守りに徹しろ!」


だが、無事に合流できたのは、たった四人だけだった。


「二代目、この森はおかしいですよ! 皆、急にいなくなったんだ…まるで魔法で消されちまったみたいに!」


「落ち着け。もう少し状況を詳しく話せ」


「嫌だ、こんなところ…命がいくつあっても足りやしない!」


手下の一人が、二代目のもとを離れ、車が止めてある方へ駆けだす。しかし、彼が闇の中に消えた瞬間、何かが途切れたように、駆けて行く音が消えた。


「おい、どうした」


思い直して足を止めたのだろう、と二代目は思ったが、呼びかけても返事はない。別の手下が言う。


「二代目、逃げましょう。何かが変ですよ。幽霊を相手しているみたいで、気が狂いそうだ」


「相手は女一人だぞ、馬鹿! あの女はなぁ、絶対に捕らえて俺のものにするんだ。それができないなら、俺がお前を殺すぞ!」


二代目が声を張った後、数秒の沈黙。そのとき、闇の中から何かが飛来し、二代目の足元に転がった。爆弾か、と身構えたが、そうではない。それは、人の手首だった。確信はないが、先程逃げ出した手下のものではないか。


「ぜ、全員離れるな」


指示を出したのは、二代目ではなく、彼を長年守っている護衛の一人だ。彼は護衛の中でも中堅の立場だが、つい先程から、自分が最も年長になってしまったことに気付いた。


「固まって、四方を警戒しながら、車に戻るぞ。お互いの背後をフォローし合えば、絶対に大丈夫だ。車にさえ乗り込めば、何となる!」


二代目を囲い、三人で別方向を警戒しながら、移動を始めた。背後さえ取られなければ、きっと生きてこの森を出られる。誰もがそんな希望を抱きながら、少しずつ移動した。それなのに…。

手下の一人が突然倒れた。倒れる音を聞いて、残った全員の視線が向けられる。そこには首から血を吹き出し、倒れる男の姿が。


「やっぱり駄目だ! 固まっている方が危ない!」


蜘蛛の子を散らすように、全員が別方向へ逃げ出した。二代目だけが、その場で立ち尽くし、何をどうするべきか、判断できずにいたが、そんな彼の背後から急に囁き声があった。


「安心しろ、お前は最後にしてやる」


二代目は死の予感に慄きながら振り返るが、そこには誰もいなかった。





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