第382話 贈り物
「さて。これから街の外を走り回る新人たちに贈り物がある」
そう言ってから、卓の上に持ってきた荷物を置いた。
「これは・・・」
「うちの靴だ。全員分ある。足の大きさは合わせてあるはずだが、きつかったり緩かったりしたものは申告するように」
すると、一応は守護の靴を持っているハズのサラや団員達も、新しい靴を手にとって喜んでくれた。
「おおっ!こんな高価なものを!」
「新しい靴か、すげえっ!」
「なるほど、これが噂になっている守護の靴か・・・、確かに歩きやすい」
喜んでくれているので、もう1つ用意してきた贈り物を渡す。
「それから、文官であるなら書類と筆記用具がいるよな」
「ペンと・・・インク、はいいとして、この羊皮紙の束、変わった形をしていますね
背板に紐でくくられた羊皮紙の束。羊皮紙には、薄く横線が引いてある。
「右上に日付、下にページを入れるようにしてある。字の大きさは薄く引いた横線の中に入る大きさで統一するように。背板は、立ったままで書きものができるように工夫してある。インク壺も、腰から下げて零れないようになっている」
「本当だ・・・」
「これで、どこへでも歩いていけるし、野外でも立ったまま書類が書けるな?」
「えっと・・・つまり・・・」
「そうだ。みんなには、これから件の領地へ実地調査に行ってもらう。そのための餞別だ」
すると、さっきまで無邪気に喜んでいた新人官吏達が、にわかに無言になった。
「返事は?」
「は・・・はい!」
答える声にも、元気が無い。
苦笑しつつ、自発的行動を期待する趣旨を説明する。
「何も、いますぐに行けと言っているわけじゃない。実施調査の行動は6人1組。いつ行くか、先方に連絡を入れてから行くか、抜き打ちで行くか。護衛をつけるか、つけないか。そのあたりの計画も全員で話し合って立てた上で、計画書を作るように。計画書ができたら、こちらで確認して、許可をする。これからは、机の上の戦いじゃないぞ。農村の土に塗れての戦いだ。全員の努力を期待している」
「「はい!」」
今度の返事は、もう少し元気があった。
ここまでは、俺が教えるだけの訓練だった。
だが、これからは各自が実際に領地を訪れ、農村の人に会い、観察を踏まえて現実的な計画を立てる技能を身につけることが期待される。
基本的な方針は伝えてあるし、全員が協力して行動することも教えこんだ。
あとは、彼らの頑張り次第だ。
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