第336話 下働きの少年たち
サラちゃんの「こんさる」話の第4話です。
たくさんのご意見、ご感想ありがとうございます。
殻のついていない麦は長持ちしない。
それに濡れると直ぐに腐ってしまう。
だから保存食として持ち歩く場合は完全に脱穀せずに防水がしっかりした革布で持ち歩くか、油紙で包んである。
そうして食事の前に軽く殻を落として粥にして食べる。
粥にする場合も、焦がさないよう火加減の調整にコツがいるし、塩やハーブ、ニンニクなどを入れると味が全く違う。
麦を持ち歩くのが面倒な場合は固く焼き締めたパンを食べることになるが、それがまたレンガのように固い。
スープに浸して柔らかくしなければ人が殴り殺せる、固パンに鏃が刺さったおかげで命が助かった、と冗談になるほどだ。
「・・・それはわかるけど、どうして俺達がこんなことしなきゃいけなんだよ!」
「冒険者なのに!」
と不平を鳴らす少年たち。
3人はサラの監督のもと、幾つかの宿屋を梯子して麦の脱穀をやらされている。それも客に出せるよう、丁寧に。
そして麦粥を作る際の塩の分量やハーブの種類なども憶えさせられているのだ。
「なにか文句あるの?」
とサラが睨みを効かせると3人の少年たちは黙る。
実際、条件としては悪くないのだ。
宿で麦の殻を剥き、食事づくりの手伝いをする。
その代わり宿代は割引になり、食事は賄いがでる。
それを1日で3軒もの宿でしているのだから、手間賃でほんの少しだがプラスになる。
だが、冒険者を目指して農村から出てきた少年たちには、その地味な暮らしが耐え難いようだ。
「言われなくたって、こんな仕事は長続きしないわよ。宿屋の台所の麦の脱穀だって毎日ある仕事じゃないんだから。明日、買い物に行くわよ」
そう言われて、不貞腐れていた少年たちは顔を上げた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、3人の少年たちを連れてサラは市場に行く。
食材を売る市場を通り過ぎ、鍛冶屋を通り過ぎ、武器屋、防具屋を通り過ぎたあたりで少年たちも、さすがに不審を覚えたのか、足取りが重くなった。
「・・・どこにいくんですか?」
「別にあんた達を売り飛ばしたりしないわよ。ついて来なさい」
そうして辿り着いたのは、金物屋だった。
生活のための金属製品が薄暗い店内に所狭しと大量に棚や壁に立てかけられている。
「俺達、武器が欲しいんですけど。斧槍とか、剣とか」
まったく、男の子はこれだから。
「あんた達ねえ、自分の腕はわかってるの?斧槍なんて、ものすごく力が必要な上に扱いの難しい武器なの!突いて払って叩ける万能の武器って言われてるけど、つまり斧槍を使おうと思ったら槍が使えて斧が使えてメイスが使えないとダメなのよ!あんた達、剣も振ったことないでしょ?」
農村から出てきたばかりの少年達は、そう言われると返す言葉もない。
剣は金属部分が多く生活に全く使えない、純粋な戦闘用の武器であり、農民の暮らしには無用の長物である。
身近な刃物のついた武器といえば、包丁、鉈、斧ぐらいである。
あとは長柄の農具は武器になるが、そういったものは持ち運びが不便で街中での取り回しが難しいし、冒険者としては恥ずかしいので使う気にはなれないのだ。
3人の少年たちは放っておいて店の奥に入り、サラは店主と交渉を始める。
しばらくの駆け引きがあり、まあまあ満足できる価格でまとまった交渉の結果、サラが持ち出してきた製品を見て、少年たちは不満の声をあげた。
「そんなもん!なんの役に立つの!俺達は冒険者になりたいんだってば!」
サラが金物屋から持ち出してきたのは、大きな丸底鍋、それを釣り支える鈎と鼎、鉈、包丁、鉄串だった。
明日は18:00と22:00に更新します。
全6話の5話と6話の予定です。
明後日からは本編に復帰します。




