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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第九章 ギルドと協力して冒険者を支援します

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第111話 冒険者ギルド

新章なので静かに始まります。

「街の冒険者ギルドとの関係をなんとかしたい」


ある朝、俺が茶を飲みながら言うと、サラは声をあげようとして、途中でやめ、黙った。


「なんだ、言いたいことがあったら言えよ。らしくない」


俺が促すと、サラは手を握ったり開いたり、もじもじとさせながら小さな声で返答した。


「ううん。私もね、冒険者ギルドとの関係は何とかした方がいいとは思うの。

 だけど、どうしたらいいのか、全然わかんないし・・・。

 ケンジは、冒険者ギルドとの関係をどうしたいの?」


俺は、最近はサラと話しながらアイディアを整理するようにしている。

サラは、この世界の常識や駆け出し冒険者の視点を与えてくれる。


自分一人では、どうしても理屈っぽく走りがちな点を補ってくれるありがたい存在だ。

自惚れでなければ、サラも俺と話すことで、議論したり、論理的に考える習慣を身に着けてくれているものと信じたい。


「そうだなあ・・・。まず、前提として冒険者ギルドに変わってもらおう、もっと働いてもらおう、負担を大きくしよう、という考え方をしたらダメだと思っている」


冒険者ギルドは、もっと効率的で効果的な組織になり、冒険者をサポートするべきだ。

だが、そう言われただけで変化する組織などない。


それは、人に「明日から立派になれ」と言っただけで、立派になることを期待するようなものだ。


人に意思があり、欲があり、性格が様々であるように、組織には行動原理があり、目的があり、所属するものたちの意思がある。


冒険者ギルドは、前の世界で例えると、モチベーションの低い役所だ。冒険者相手の決まり切った仕事をこなす組織として特化している。新しいことをするのには向いていない。


組織文化としても、決められた以上の仕事をしても上から評価されたりはしない。成果が変わらないのであれば、可能な限り労力を最小化して楽をしよう、と考えるのが、そういう組織に属する人間の自然な感情というものだ。


「そうね。それは無理ね」


サラは、難しい理屈をこねなくても、俺の意見に賛成してくれた。さんざん冒険者ギルドとやり合ってきた彼女には、そのあたりの事情が感覚的に理解できるのだろう。


「凄く都合のいいことを言えば、冒険者ギルドは仕事が楽になり、冒険者からの評判も高くなり、俺達も得をする。そういう仕組みを作りたい」


「・・・そんな魔法みたいに都合のいいこと、できるの?」


「小さいことならね、幾つか思い付きはある」


俺がいくつか簡単なアイディアをあげると、サラは感心したような、呆れたような声をあげる。


「はー・・・あんた頭の中に小鳥でも飼ってるの?」


褒め言葉だと思いたいが、こちらの世界の言い回しは、ときどきよくわからない。

実は褒められてないのかもしれない。


「だけど、それをするには、せめて冒険者ギルドに邪魔をされないだけの関係性を築かないといけない。

 多分、ギルドの鼻先で、いろいろとすることになるからな。

 

 俺達は自分の仕事を邪魔する目障りな連中じゃない、うまく使えば役に立つんだ、と思わせたい」


「難しいんじゃない?あんた、完全に目をつけられてるわよ。特に、あのハゲとかに」


サラの言う、あのハゲは、俺の商売を邪魔しようとして、勝手に失敗したんだ。俺のせいじゃない。

俺がやっていた駆け出し向けのツアーを、無料サービスで横取りしようとして、利用者にソッポを向かれたのだ。

ソッポを向いたのは、顧客であって、俺じゃない。

まあ、それでも俺を恨みたくなるのが人情というものだろうが。


「もう一つ、やり方がある。俺達が冒険者ギルドに対抗するような仕事を作ってしまうことだ。お役人様の組織というものは、自分達で変わることはできないが、敵がいると驚くほど意思決定が早くなる。あのハゲは失敗したけれども、意思決定は早かった。お役人様の組織は、自分達の仕事が必要ない、と思われることが怖いんだ」


「で、でも、そんなことしたら・・・」


「そう、嫌がらせをされるだろうし、最悪、命の危険もある。個人でなく、権力を持った組織を敵に回す、ってのはそういうことだ。いくら剣牙の兵団の力添えがあると言っても、冒険者ギルド全体を敵に回すわけにはいかない。だから、あまりこの方法は取りたくない」


「じゃ、じゃあ、やめとこ!ね!ね?」


サラが必死に俺をとめる。

俺も、そんな方法は取りたくない。あくまでも、議論の途中であげた理屈の上ではあり得る、という話だ。

だが、サラの必死の表情を見ていると、これは俺が思っている以上に危ない橋のようだ。


「わかった。その方法はやめる」


俺だって、そうそう命を賭けたいわけじゃない。穏やかなやり方で進められれば、その方がいい。


まずは相手の感触を探るか。


どうも直接相手を目の前にしていないと、思考が極端な方向に走ってしまう。

断られるにしても、一度は正面から話をしてみるか。


俺はサラと協力して資料を集めると、冒険者ギルドと話し合う機会を持つことにした。

明日も18:00と22:00に更新できると思います。

トップページの「今日の一冊」にて本作が紹介されております。

よろしければご覧ください。

(この文章は次の本が紹介されるまで約1週間、続けさせていただきます)

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