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  作者: たかさば


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8/8

8,すべてが消えるとき

 ……星が消える時が来た。


 星の上に止まない雨が降り注いだ。

 星の上を強い風が覆いつくした。

 星の上が激しく揺れた。


 星の至る場所で火が噴出した。

 星の至る場所が燃え上がった。


 星から青い空が消えた。

 星から青い海が消えた。

 星から緑が消えた。

 星から獣が消えた。


 星から水が干上がった。

 星から土を練るための水がなくなった。


 たくさんの土が、水を失くして崩れた。


 命をなくした土が、星の上に広がっていった。


 土は、ヒトの手の中に残る、ハート型の土のみになった。


 ヒトは、水が枯れぬよう、しっかり両手で包み込んだ。

 ヒトは、最後の土が消えてしまわぬよう、しっかり両手で包み込んだ。


 星の上で、ヒトと小さな土は、荒れ狂う世界を望んだ。


 手のひらの土に、ひびが入った。

 手のひらの土が、欠けた。

 手のひらの土は、崩れてしまった。


 最後の土が、星に帰った。


 星に帰った土を集め、ヒトは土を練った。

 熱でただれた体で、ヒトは土を練った。


 星に落ちた、自分の体液で、土を、練った。


 何度も何度も、意思の交換をしてきた土を思って。

 何度も何度も、意思を交換して星に帰っていった土を思って。


「いっしょに、いるよ?」


 小さな赤茶色の土が、一言告げて、星に帰った。


「僕は、一人ぼっちに、なってしまうのか」


 星に帰った土を集め、ヒトは土を練った。

 再生してゆく体で、ヒトは土を練った。


 星に落ちた、自分の涙で、土を、練った。


「独りにしないでくれ」

「僕を残して消えないでくれ」

「どうかもう一度」

「どうか僕と共に」


 何度も何度も、意志を貫いた土を思って。

 何度も何度も、遺志を託して星に帰った土を思って。


「いっしょにいるよ?この星は、大きな一つの、命だもの」


 赤黒い土は、一言ささやいて、星に帰った。


「違う、違うんだ!!星じゃない、僕の横で…僕のそばで…僕の声を聞いて欲しいんだ!!僕の…僕の声に、返事をしてほしいんだ!!!」


 涙の枯れてしまったヒトには、もう土を練ることが、できない。


 もう、この星の上には、水がない。

 もう、この星の上には、砂がない。

 もう、この星の上には、イシがない。


 ……星の終わりが近づいている。


 灼熱の大地の上に立てるのは、命を持たないヒトだけだ。

 灼熱の大地の上に立っているのは、この星で唯一、混じる事のできない存在だけだ。


 星の上には、命だったものの痕跡だけが広がっていた。


 命の消え失せた星の上で、命を持たないヒトだけが立ち尽くしていた。

 命の消え失せた星の上で、ヒトはただ孤独に、荒れ狂う世界を望んだ。


 ……何もない星の上で、ヒトは。


 足元に広がる、パラパラとした、かつて命であった、残滓を、掴んだ。

 そして、そのまま口に運び、おもむろに…、食べ始めた。


 命を持たない自分。

 命を持った土。

 命をつないだ土。

 命に混じって暮らした自分。


 命を持たなくなった土。

 命を繋ぐことができなくなった土。

 命を生み出せなくなった自分。

 失われた命に混じることができない自分。


 ヒトは、取り憑かれたように、この星の命の残滓を貪った。


 この星の土は、自分が生み出した命。

 この星の命の定律に混じれない、自分。


 この星の上には、土がつないだ命の跡しか残っていない。

 この星の上には、星の上で生きた命の跡しか残っていない。


 食べても食べても、命だったものはヒトの体と混じらなかった。


 ヒトは、星が膨張し始めても、ただただ貪り続けた。

 ヒトは、焼け落ちてゆく体で、ただただ貪り続けた。


 やがて星は粉々に砕け散り、宇宙に解き放たれた。


 ヒトは粉々に砕け散り……、宇宙に解き放たれた。


 宇宙に漂うチリとなった、星。


 宇宙に漂うチリとなった、ヒト。



 ―――ああ、この果てのない宇宙に、共に混じれた、それだけで



 ……(ヒト)は、最後に。



 共に宇宙に混じることができたことを、うれしく思った。


ヒトがこの星に来たお話はこちらです。


https://book1.adouzi.eu.org/n1436hb/




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