6,土とヒトの日々
土は、好奇心旺盛だ。
土は、土を練りながら、新しい事と出会うことを望む。
土は、土を練りながら、知らない経験が増えることを望む。
土は、土を練りながら、知識になる出来事が起きることを望む。
土は、ただ、土だ。
はるか昔から受け継がれてきた、【知りたい】というイシありきの命である。
土は、延々と、土を練る。
はるか昔から繰り返されてきた、【イシ】をつなぐために。
時折、新しいことを求めて、ヒトに聞いた。
ヒトは、土の知らないことをたくさん知っていたのだ。
命の仕組み、大地の仕組み、雨の仕組み、海の仕組み、空の仕組み、空の向こうの仕組み。
緑について、獣について、ヒトについて、星について、星が浮かんでいる場所について。
土は、新しい知識を増やしながら、イシのままに土を練った。
時折、新しい経験を求めて、ヒトに懇願した。
ヒトは、土の知らない行動をたくさん知っていたのだ。
掃除、計画、まつり、運動会、ダンス、ボウリング、オセロ。
楽しく過ごすこと、一緒に楽しめること、楽しみを分け合うこと、みんなが楽しいこと。
土は、新しい経験を楽しみながら、イシのままに土を練った。
時折、知識にない出来事が発生したとき、ヒトに聞いた。
ヒトは、土の知らない解決方法をたくさん知っていたのだ。
風が暴れた時、大地が揺れた時、獣が移動した時、森が燃えた時、山が滾るイシを噴出した時。
穴に入ること、大地に寝転がること、逃げること、一部に集まること、山を作ること、時間がたつのを待つこと。
土は、星の上で暮らしていく方法を蓄えながら、イシのままに土を練った。
ヒトは、穏やかだ。
ヒトは、ただ、土を見ていた。
ヒトは、ただ、遠くを見ていた。
ヒトは、時折、土の疑問に答えた。
ヒトは、時折、場所を移動した。
ヒトは、時折、土の配置を指示した。
ヒトは、時折、激しく動いた。
ヒトは、時折、大地に線を書いた。
土が喜ぶのを、見ていた。
土と共に、喜ぶこともあった。
土が消えるのを、見ていた。
星に混じった土の上を、見ていた。
ヒトには、土のような好奇心がなかった。
ヒトには、何かをしたいと思う意思がなかったのだ。
ヒトには、何かを願う意思がなかったのだ。
ヒトには、何かを求める意思がなかったのだ。
ヒトには、何かを思い浮かべる意志がなかったのだ。
いつも、ヒトは土を見ていた。
いつまでも、ヒトは土を見ていた。
ヒトは、ただただ穏やかに…、この星の上で土と共に暮らしていたのだ。




