久坂大和と中岡悠里は今日も“絆”を確かめる。
ご覧いただき、ありがとうございます!
「ヤマト、おはよー!」
「おう、はよー」
あの一件があってから一週間後、今も俺はユーリの家まで迎えに行っている。
や、だって、そのほうがユーリに早く逢えるし、それだけ長く一緒にいられるし。
「あ、今日はエルザは休みだって」
「あー、やっぱりトップアイドルってのは忙しいのな」
無期限活動停止と発表されてから、たったの二日で復帰した藤堂さんは、世間の憶測を呼んだ。
そして、それと合わせるかのように突然、沖田晴斗をはじめとした“オフィス・セリザワ”に所属するタレント達が一斉にメディアから姿を消した現状に、マスコミたちはこぞってあることないこと書き立てた。
沖田晴斗が藤堂エルザにフラれた腹いせに嫌がらせしたことへの報復だの、オフィス・セリザワの社長……クズの父親の脱税疑惑で国税庁が査察に入っただの、まあバラエティネタには事欠かなかった。
や、ほぼ事実なんだけど。
つーか、それらのネタ全部、ユーリのお母さんが裏で手を引いてるんだけど。
うん……ユーリのお母さんだけは絶対に敵に回してはいけない。
「あらあら大和くん、今日も悠里をよろしくね?」
「はは、はい!」
ヤベ、余計なこと考えてたから妙に声が上ずった。
あ、それと藤堂さんは今回の件でオフィス・セリザワに嫌がらせされた、悲劇のヒロインということで、別の意味で注目を集めることになった。
そして、その効果は絶大で、その人気はまさに絶頂を迎えていた。
そのせいで最近はなかなか学校に来れないものの、なぜかマネージャーが学校まで藤堂さんの弁当を受け取りに来ている。
「ホラホラ! ヤマト、早く行かないと遅れちゃうよ!」
「お、おう。それじゃ、失礼します」
「うふふ、いってらっしゃい」
お母さんに見送られ、俺達は学校へと向かった。
◇
「ヤマト! お昼行こ!」
「おう」
昼休みになり、いつものようにユーリが誘いに来た。
俺はカバンから弁当を三つ取り出すと、ユーリと一緒に風紀委員会室へと向かう。
その時、俺に視界に空席となった窓際の席と一番前真ん中の席を見やった。
言わずもがな、芹沢と斎藤の席だ。
芹沢については、あの時の音声データをはじめ、ユーリへのストーカー行為についても警察に被害届を出したことで、その存在は地に落ちた。
つーかこの一週間、芹沢とオフィス・セリザワのニュースばっかりだけど。
で、この学校にもいられなくなり、ひっそりと自主退学した。
ただ木戸先輩は納得していないらしく、自主退学ではなく学校として正式に退学処分にすべきだとして、学校側……というか、祖父である理事長に働きかけているらしい。
うん、木戸先輩もユーリのお母さんと一緒で、敵に回してはいけない人物だ。
ただ、お願いですから少しは俺とユーリに気を遣ってください。
や、だって、木戸先輩ときたら、あれ以来味をしめて毎日晩メシ食いに来てるんだぞ!?
俺だって、ユーリと二人っきりになりたいんだよ!
ああ、それと斎藤だけど、やっぱり首謀者ってことで退学となった上、保護観察処分になったらしい。
今も芹沢と繋がってるのかは知らないけど、ま、今後は俺とユーリに関わってこないでほしい。
「ヤマト?」
「ん? おお、悪い、ちょっと考えごとしてた」
「へー、どんなこと?」
風紀委員会室の扉の前、ユーリが俺の顔を覗き込んだ。
「ああいや、この扉を開けたら、今日も風紀委員長殿がいるのかなあ、と」
「……いるんじゃない?」
「……だよなあ」
俺とユーリは溜息を吐いて、扉を開けると。
「うむ、待っていたぞ!」
なぜか腕組みしながら、仁王立ちで待ち構える木戸先輩がいた。
「はあ……何やってるんですか」
「ん? 決まっている、弁当を待っていたのだ」
「直球すぎる!」
はい……木戸先輩は、もはや俺の弁当だけが目当てです。
「しかし木戸先輩、小春達が怒ってましたよ?」
「む、なぜだ?」
「木戸先輩ばかりヤマトのお弁当を食べてずるいって」
ずるいって何だよ、ずるいって。
「仕方あるまい……これは風紀委員長の特権だからな」
「「いやいや、そんな特権与えてませんから」」
俺とユーリは、そんな先輩の呟きに即座にツッコミを入れた。
「……まあ、昼メシにするか」
「……そだねー」
俺達は肩を竦めながら、弁当の蓋を開ける。
「「「いただきまーす!」」」
手を合わせ、食事を始めようとしたところで。
「風紀委員長! 至急お願いしたいことが!」
「むむ……今じゃないと、その……ダメか?」
「今すぐです!」
「むむむむむ……!」
飛び込んできた江藤と弁当を交互に見ながら、ものすごく顔をしかめる先輩……。
「先輩、食べ終わった弁当箱は、放課後に返してくれればいいですから」
「そ、そうか! 小春、では行くぞ!」
「はーい」
そう言うと、ホッとした様子の先輩が勇んで部屋を出て行く。
そしてその後を行く江藤がクルリ、とこちらへと振り向き、笑顔で手を振った。
ああ……成程ね。
「ひょっとして、ユーリの仕込み?」
「えへへー、分かっちゃった?」
どうやら二人きりになりたかったユーリが、江藤と結託して手を打った模様。
ならば俺はユーリにこう告げよう。
「ナイス!」
「えへへー!」
俺はゴキゲンにサムズアップすると、ユーリが俺に抱きついた。
ちょ、ちょっと大胆すぎやしませんかね?
「ヤマト」
最高の笑顔で俺の顔を覗き込むユーリ。
俺の大切な彼女で、そして……俺の大切な“家族”。
だから。
「ユーリ、大好きだ」
「えへへ……ヤマト、だーい好き!」
おしまい
お読みいただき、ありがとうございました!
おかげさまで、無事、最終回を迎えることができました!
これもひとえに、応援、お読みいただいた皆様のおかげです!
この場をお借りして、お礼申し上げます!
本編はこれにて終了ですか、しばらくしたら、その後の顛末として芹沢悠馬視点、そして、藤堂さん視点での番外編をお届けする予定ですので、ブクマはそのままでお願いします!
少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!
あ、それと、本日新連載しました!
ヒロイン?な俺は、悪役令息?を推して参る!~乙女ゲーの世界に転生したものの、男女が逆転していました。でも、なんで推しの悪役令嬢まで男になっちゃったの!?~
異世界恋愛ものですが、完全にラブコメですw
こちらもぜひよろしくお願いします!
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
また、別の作品で皆様とお会いできるのを楽しみにしております!




