久坂大和達は斎藤一哉に待ち伏せされる。
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「はよー」
学校に着いた俺達が教室に入ると、案の定というか何というか、クラスの連中が一斉に藤堂さんを見た。
「ふふ……大丈夫ですよ二人とも。私だってアイドルなんです。こういった視線には慣れてますから」
俺達に気づいた藤堂さんが、むしろ俺達を気遣うかのようにそう言うと、堂々とした振る舞いで自分の席へと向かう。
その姿は、まさにトップアイドル、藤堂エルザのそれだった。
その時。
「やあ、大変だったみたいだね、と「話しかけないでください」」
下卑た笑みを浮かべながら話しかけてきたクズに対して藤堂さんがそう言い放つと、あとは空気だと言わんばかりに全く相手にすることもなく席に着いた。
「ププ、ダサ」
「ねー」
俺とユーリはあえて聞こえるくらいの大きさで笑いを堪えるかのようにそう呟くと、気づいたクズがこちらを睨みつけるが、俺達も当然無視した。
さあて……今日の放課後あたり、何かやらかすかも、な。
◇
――キーンコーン。
六時間目終了のチャイムが鳴り、クラスメイト達が帰る準備を始める。
「ヤマト!」
「久坂さん!」
そして二人は、今日も俺の元へと駈け寄ってきた。
「もちろん私もいるぞ」
ハイハイ、分かっておりますよ、木戸先輩。
「さあて、全員揃ったし帰るか。あ、そうそう、今日の晩メシはどうする?」
俺は三人におもむろにそう告げると。
「ハイ! 私は今日はハンバーグが食べたい!」
「そうですね……私はビーフシチューでしょうか……」
「む、私も久坂君のご飯を食べたいぞ! ちなみに今の気分はグラタンだ!」
三人が思い思いに食べたいものをリクエストした。
つか、木戸先輩……誘う前からリクエストするのはチョット……や、誘うつもりではいましたけどね?
だけど、そうだな……よし。
「分かった。じゃあビーフシチューを掛けた煮込み風ハンバーグに、グラタンをつけよう」
「「「やったー!」」」
うむうむ、三人とも喜んでくれたようで何よりだ。
「それじゃ、いつものスーパーに寄って帰るか」
「「「うん!(はい!)」」」
てことで、俺達は学校を出てスーパーにより、必要な食材を買い込む。
「ふむふむ、久坂君は本当に何でもこなすのだな」
「はは……まあ、家事は俺の仕事ですから」
「そうか……どうだ? 私の婿に「ダメです!」」
耳聡く会話を聞いていたユーリが、すかさず先輩の暴走を止めに掛かる。
「む、だが悠里だけずるいではないか!」
「うーん、そうですね……私も久坂さんでしたらぜひお婿さんにお願いし「エルザもダメ!」」
先輩の悪乗りに便乗した藤堂さんを、こちらもユーリがブレーキを掛けた。
「二・人・共?」
「「ゴメンナサイ」」
キッ、と睨むユーリに、さすがにこれ以上はマズイと感じた二人は、綺麗にお辞儀をした。
だったら初めから揶揄わなければいいのに。
◇
「「「「ごちそうさまでしたー!」」」」
「おう、お粗末様でした」
晩メシも終わり、ゴキゲンな表情で手を合わす四人。
こうやって見ると、まるで巣の中で母鳥の餌を待つ雛みたいだな。
「ヤマト、一緒に片づけよ?」
「おう」
俺とユーリはテキパキと後片づけを始めると。
「うーむ……見ていると、どうやら二人は見事なコンビだな。よし、なら二人揃って私のところに……「「行きませんから」」……むむ」
イヤイヤ木戸先輩、なんでそんな怪訝な顔してるんですか。
「ふふ、本当にお二人はお似合いですよね」
俺達のそんなやり取りを見ながら、藤堂さんが微笑む。
「ふあ……ありがとう、エルザ」
「……ふふ、どういたしまして」
? 何が“ありがとう”なんだろう?
まあいいや。
「さて、後片づけも終わったし、そろそろ帰ろっか」
ユーリがそう宣言すると。
「そうですね、そろそろお暇しましょう」
「むむ、私はまだいたい「先輩?」……むむむむむ……」
ユーリに一睨みされ、先輩は渋々重い腰を上げた。
「じゃあ文香、俺は三人を送ってくるから、先に風呂入っとけよー」
「はいはい。悠里さん、エルルン、咲夜さん、また来てくださいね!」
「うん、また明日ね!」
「はい、また来ますね!」
「むむ、私も明日も来るぞ!」
うむう、“家族”の悠里と“友達”の藤堂さんはともかく、先輩は明日も来るみたいだ。
ま、もちろんいいんだけどな。
「さて、それじゃ行こうか」
俺達は家を出ると、まずは一番遠い藤堂さんの家を目指す……んだけど。
「ウーン、やっぱり狙うならココだよなあ」
「だよねー」
「は、はい……」
「うむ、腕が鳴るな」
俺とユーリは苦笑しながら肩を竦め、藤堂さんは少し怯えた表情を見せる。
そして先輩は……って、ゴキゴキと拳を鳴らすのはヤメテクダサイ。
とはいえ。
「さて……大人しくついて来てもらおうか」
こんな人気のない場所に悪役然として斎藤とそのお仲間が現れたら、そんな態度になっちまうよね。
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