久坂大和と中岡悠里は藤堂エルザに加勢する。
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「はあ……」
月曜になり、俺は駅前に向かってトボトボと歩く。
や、だって、土曜日はせっかくのチャンスだったのに、まさかあんなことになるとは……。
日曜日も文香は一日中家にいるもんだから、当然そんなことできる訳もなく……。
ま、まあ、ユーリはああ言ってくれたし、またチャンスはある……はず。
だけど。
「あああああ! 俺は健全な男子高校生なんだよ! こんなの生殺しだろ!」
俺は頭をガシガシと掻きながら、思わず叫んでしまった。
――バシン。
「イタッ!?」
な、何だ!?
いきなり頭を叩かれた俺は、後ろを振り返ると……顔を真っ赤にしたユーリが立っていた。何で!?
「え? ユ、ユーリ!?」
「もおおおおお! バカ!」
い、いや、つか待ち合わせ場所は駅前だろ!? なんでその途中で出くわすんだよ!?
「せ、せっかく早めに着いたから、ヤマトと合流しようと思って来たのに……何恥ずかしいこと言ってるんだよ!」
「ちょ!? 痛いから!?」
ユーリは頬を膨らませ、しばらくポカポカと俺を叩き続ける。
「ハア……ハア……も、もう、あんな恥ずかしいこと、絶対叫んじゃダメだからね!」
「はい……」
ユーリに叱られ、俺はシュン、とうなだれた。
で、でも、俺も高校生なので……その……ねえ?
「とにかく! 早く学校に行こ!」
「はい……」
いまだに怒りの収まらないユーリの後を、俺はすごすごとついて行った。
◇
「おはよー!」
「はよーっす」
俺とユーリは教室の扉をくぐると、窓際で人だかりができていた。
はあ……つか、毎回毎回問題しか起こせねーのか、あのクズは。
「とにかく、様子を見に行こう」
「おう」
藤堂さんのことが心配な俺達は、急いで人だかりに加わる。
すると。
「藤堂さん! 違う! あれは誤解なんだ!」
「ハア……誤解でも何でも構いませんから、どうか二度と話しかけないでください」
必死で訴える芹沢に対し、迷惑そうな表情をしながら額を押さえてかぶりを振る藤堂さん。
そして、それを困惑した表情でオロオロと眺めるクラスメイト達。
まあ、週が明けた途端、いきなりこんな状況になってたら、何も知らない連中は混乱するだろうな。
「いいかい藤堂さん、君はあの悪辣な男に騙され「久坂さんの悪口は止めてください!」」
おおう……芹沢の奴、あくまでも俺を悪者にしようって腹なんだな。
でも、藤堂さんはそんな俺を庇ってくれた。ちょっと……いや、かなり嬉しい。
ただし、男子からのヘイトは溜まりそうだけど。
「久坂さんはすごく優しい方です! それこそ、あなたみたいなうわべだけの、軽薄な方とは比べものにならないくらいに!」
い、いやいや、それは言い過ぎじゃない!?
というか、あんまり俺を話題にすると、ますますヘイトが……そして……。
「むうううううううう!」
ほらああああ! ユーリが怒ってるうううう!
「違う! それこそ君はアイツのうわべに騙されているんだ!」
それでもなお自分は悪くない、悪いのは久坂大和(俺)だと言い張る芹沢。
つか、どんだけ面の皮が厚いんだよ。
「ふざけないでください! もし万が一久坂さんがあなたの言うようにうわべだけの人でしたら、悠里さんがあれほど慕うはずないじゃないですか!」
本気でキレた藤堂さんは、芹沢の言葉に真っ向から反論する。
そして、藤堂さんの言葉を受けて嬉しそうにはにかむユーリ。
ま、まあ、機嫌が直って何よりだ。
「っ! 違う! 悠里も騙され「うるさい!」」
とうとうユーリまで引き合いに出され、キレたユーリが参戦する。
「いい加減に気づきなよ! 私もエルザも、アンタみたいな最低な男、金輪際関わり合いになりたくないんだ!」
藤堂さんと芹沢の間に割って入り、大声で宣言するユーリ。
こうなってくると、クラスの連中もどちらの言い分が正しいか、理解し始めたようで。
「な、なあ……やっぱり」
「うんうん、うわー……あの“沖田晴斗”が……」
「私、ファン止める」
「アタシも……」
こうなると、もはや芹沢に流れを変えることは不可能だろ。
で、ここで斎藤の奴はというと……あーあ、悔しそうに歯噛みしてやがる。
「……藤堂さん、後悔しても遅いよ……?」
俯いたその様子から、芹沢は藤堂さんを鋭く睨みつける。
……つーかコイツ、まだ何かやらかすつもりなのか……?
「ねえ悠馬、それってどういう意味かな?」
芹沢の不穏な発言に反応し、ユーリが睨みながら問い質す。
すると。
「さあ、ね……?」
口の端を醜悪に歪め、芹沢はもう終わりとばかりに手をヒラヒラさせて教室を出て行った。
いやいや!? オマエ、あれだけ引っ掻き回しときながら勝手にフェードアウトかよ!?
つか、授業はどうすんだよ!?
あ、ある意味とんでもない器の持ち主なのかも……。
俺はそんな芹沢を眺めながら、薄ら笑いを浮かべるが精一杯だった。
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