久坂大和は中岡悠里と藤堂エルザに説明する。
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「ふう……」
斎藤が教室から出て行ったのを最後まで見届けた後、俺は息を吐いた。
「ヤマト」
おっと、ユーリが真剣な表情で俺を見つめているぞ。
まあ、ちゃんと説明しておくか。
「ま、見ての通り、斎藤の奴は芹沢の友人……つか、“駒”だった訳なんだけど……」
俺はユーリと藤堂さんに、自分の推理した考えを伝える。
まず、芹沢と斎藤の接点について。
これは、前にユーリのお母さんに見せてもらった中学の卒業文集が決め手だった。
何せ、俺が斎藤に言った内容は、斎藤が卒業文集で書いたものなんだからな。
とはいえ、前々から斎藤のことはそうだろうとは思ってたんだけど。
例えば、俺が教室で筆箱を投げつけられた時。
あの時、島田の奴がキレて俺に投げやがったけど、その傍らには斎藤がいた。
そして、その後もまるで煽るかのように何かを囁いていたところも目撃してるからな。
次に、藤堂さんと芹沢のバカが駅前にいた時。
あの時も、カフェにいる俺達にタイミング良く話しかけてきやがったしな。
そして齋藤が俺達から離れた瞬間、二人が突然口論を始めたんだ。
つまり、俺達が二人に注目していることを確認して、芹沢に合図したんだろう。
そう考えると、それ以前の斎藤の行動にも合点がいく。
芹沢がその正体を明かした時、ユーリは藤堂さんに絡まれた際に俺が割って入ろうとしたところを斎藤に止められたのもそうだ。
つか、そもそも斎藤がいつも俺に絡んできたのは、いつもユーリに風紀委員会室に放送で呼び出しを食らっていたことに、芹沢の奴がやきもきしてたんじゃなかろうか。
んで、俺とユーリの関係について探りを入れるために、斎藤はいつも俺に話しかけてきてたって訳だ。
「……てことで、実は藤堂さんが俺に告白した時、これは芹沢の差し金なんだろうな、ってのは薄々分かってたりするんだけど」
「……そうでしたか」
俺がざっと一通り説明すると、藤堂さんは静かに目を瞑る。
そして。
「……ふふ、これでは友達失格、ですね」
そう呟くと、涙が一滴、頬を伝った。
「や、そんなことはないんじゃねーの? なあ?」
俺は努めて明るくそう言うと、ユーリにその続きをパスした。
「そうだよ! 結局、悪いのは悠馬の奴じゃないか!」
「そーそー。それと、こんなクソくだらねーこと考えやがった斎藤な」
でも。
「ですが! ……ですが、私は今までお二人を騙して……「だーかーらー! 騙された奴が騙そうとしても、そもそも騙した奴が悪いわけであって……って、アレ?」」
それでもなお自分を卑下しようとする藤堂さんの言葉を遮り、俺は藤堂さんは悪くないってことを言おうとしたんだけど、言葉がこんがらがっちまった。
「結局、藤堂さんはちゃんとそのことを自分から話してくれたじゃないか。だったらそれは騙してないのと同じだよ!」
うん、ユーリが俺の言いたいことを拾って、ちゃんと言葉にしてくれた。
さすが俺の彼女。さすカノ。
「ですが……ですが……」
ユーリの言葉を聞いても、罪悪感に苛まれる藤堂さんは、涙を零しながら唇を噛む。
「……本当は言わないでおこうと思ったけど、この際だから言っておく。藤堂さん、君は最初からあの芹沢に騙されてるんだぞ?」
「最初から……騙されてる……?」
「ああ……前に教えてくれた、藤堂さんと芹沢が知り合うきっかけになった出来事……あれ、多分芹沢のヤラセだぞ?」
「「ハイ?」」
俺の言葉に、藤堂さんの目がテンになる……って、ユーリもかよ。
「ね、ねえ! それってどういうこと!?」
「んー……まあ、大御所タレントの山南藤十郎が藤堂さんに絡んだこと。あれ自体が仕込みだってことだよ」
「「ええ!?」」
俺はそのことについて、二人に掻い摘んで説明する。
藤堂さんから山南藤十郎の名前を聞き出した俺は、早速スマホで調べたんだけど、俺の読み通り、山南藤十郎は芹沢と同じ芸能事務所に所属していた。
しかも同じ事務所だけあってか、よく同じドラマやバラエティ番組なんかにも出演してるし。
「……何より一番驚いたのは、芹沢が所属する芸能事務所なんだけど……そこの社長、芹沢と同じ名字だった」
「「…………………………」」
さすがにここまで説明すると、二人とも声を失ってしまった。
「で、だ。藤堂さん、これでも自分が悪いと思う? むしろ、完全に被害者だよね?」
俺は彼女を諭すように、静かに問い掛ける。
これ以上、彼女が思い悩まないようにするために。
「…………………………許せない」
「「…………………………(コクリ)」」
肩を震わせ、ポツリ、と呟いた藤堂さんのその言葉に、俺とユーリは無言で頷く。
「許せない! あの出来事でさえ紛い物だったなんて……! 私は……私は! そんな男に騙されて……!」
「藤堂さん……」
藤堂さんが拳を強く握りしめ、ぽろぽろと涙を零す。
そしてユーリは、そんな藤堂さんの身体を、そっと支えた。
ああ本当に……芹沢も、斎藤も、アイツ等に加担する奴全員、本当にクソだよ!
俺もアイツ等への怒りで、どうにかなっちまいそうだ!
「“友達”だと……思ってたのにい……!」
絞り出すように呟いた藤堂さんの言葉に、俺の胸がかあ、と熱くなる。
そして。
「……んだよ! そんなクズが友達じゃなくなっても、俺やユーリがいるだろ! 藤堂さんだって、俺の弁当食ったんだ! だったら、藤堂さんも俺の大切な“友達”だ!」
気づけば、俺は大声で叫んでいた。
芹沢のしでかしたことが許せなくて。
俺の“友達”が悲しんでいるのが許せなくて。
「そうだよ! あんな奴なんかより、私達がいるじゃないか! 私は……私達は、藤堂さんの“友達”だよ!」
ユーリも同じように大声で叫ぶ。
だって、俺とユーリは“同じ”だから。
「久坂さん……! 中岡さん……! うわああああああああん!」
堪え切れなくなった藤堂さんは床にへたりこみ、そして、大声で泣いた。
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次話は明日の夜更新予定です!
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