久坂大和と中岡悠里は初デートを楽しむ。②
ご覧いただき、ありがとうございます!
「ふああああ……この服、可愛いなあ……」
ジュエリーショップでのやり取りが意外に早く終わり、昼まで時間が空いたので、とりあえず駅前に出てきた俺達はウインドウショッピングをしている。
そして、ユーリはショーウインドウに飾られている服に釘付けである。
えーと、ナニナニ……値段は、と……って、高っ!
何だよコレ!? ゼロが四個も付いてるぞ!?
「はあ……でも、さすがに高すぎるかあ……」
少しションボリした顔のユーリが、値段を見てそう呟いた。
う、うん……俺も手が出そうな値段だったら、もうすぐクリスマスだしプレゼントもアリかなあ、と思ったりもしたんだが……ぜってームリ。
や、この服をユーリが来たら圧倒的に可愛いのは間違いないんだけどな!
「あ、ゴメンね? ヤマトは私の服なんか見ても、つまんないよね……?」
そう言って、申し訳なさそうに俺を見つめるユーリ。
「そんなことねーよ。俺はさっきからユーリが瞳をキラキラさせながら服を見つめてる姿を拝みつつ、さらに、その服を着たユーリを想像してはニヨニヨしてたぞ?」
「ふああああ!?」
おっと、どうやら本音がダダ漏れだったようだ。
でも、ホントそうなんだよなー。
つーか。
「はは……俺、こうやって休日を誰かと……しかも、それこそ世界一好きな女の子と一緒に過ごすなんて初めてだからさ。なんか、いつにも増して浮かれてるみたいだわ」
「ふあああああああああ!?」
俺が頭を掻きつつ照れながらそう伝えると、ユーリは顔を真っ赤にして口元を押さえた。
「わ、私も……世界一大好きなヤマトと初デートできて、ホ、ホントに嬉しいよ……それこそ、幸せ過ぎてこのまま飛んで行っちゃいそうなくらい……」
「お、おう、そうか……」
おおう、面と向かってそんなこと言われると、その……は、恥ずかしいというか、照れるというか、嬉しいというか……って、俺もユーリに言ってるからおあいこだな。
「そ、それよりさ、そろそろ昼メシにでもするか?」
「あ、う、うん、そうだね。それで、どこにする?」
恥ずかしさから話題を変えるために出た俺の言葉に、ユーリも乗っかる。
で、どこにするか……なんだけど。
「フッフッフ……実は、昼メシについては既に決まっているのだ!」
「え? そうなの? 何を食べるの?」
俺が胸を張ってそう宣言すると、ユーリは興味津々で俺に尋ねてきた。
それは。
「俺達の昼メシは、この中にある!」
俺は背負っているヒューズボックスをポンポン、と叩き、ソレをアピールする。
「あ! ひょっとしてお弁当!」
「正解!」
そうなのだ。
俺は今日のデートのために、朝早くから起きて、今日の昼メシ用の弁当をこしらえてきたのだ。
しかも、今回のはかなりの自信作だったりする。
「ふああああ……今日のデートのためにお弁当を作ってきてくれるなんて……私、こんなに幸せでいいのかな……!」
ユーリが瞳を潤ませて自分の胸をキュ、と握る。
だけど……幸せ過ぎなのはコッチだっつーの。
だって、こんな素敵な女の子にこんなに喜んでもらえて……こんなに大切に想ってもらえて……。
「あ、あれ!? ヤ、ヤマト、どうしたの!?」
「へ?」
ユーリが心配そうに俺の顔を覗き込むけど……え? なんで?
「ど、どうかしたか?」
「だ、だって、ヤマト……泣いてるから……」
「泣いてるって……あ……」
慌てて自分の頬を触ると、確かに涙の雫が頬を伝っていた。
あちゃー……どうやら、感極まって泣いたのは俺のほうらしい……。
「あ、あはは……幸せ過ぎて、嬉し泣きしちまったみたいだ……」
「ヤマト……」
俺はその涙を手で拭おうとするが、ユーリはそれを止め、代わりに自分のハンカチで優しく拭き取ってくれた。
「ヤマト……もっともっと、だよ。もっともっと、二人で幸せになろうね?」
「あ……うん……そうだな……」
優しく微笑むユーリに、俺も微笑み返す。
そして、俺達は手を繋ぎながら、駅前の中央公園を目指した。
◇
「ふああああ……!」
ユーリが弁当の中身を見ながら、感嘆の溜息を漏らす。
俺はそんなユーリに一言だけ言いたい。
「美味そうだろ?」
「うん!」
うむうむ、良い返事だ。
だが、それもそうだろう。
玉子サンドにハムサンド、変わり種としてイチゴジャムとクリームチーズのサンドイッチ。
おかずとして、チキンナゲットにフライドポテトに加えて、レタス、ブロッコリー、プチトマトのサラダも添えて、栄養バランスもバッチリだ。
さらに、デザートとして手作りのプリンも用意したんだから、まさに完璧なラインナップだ。
「さあさあ! 好きなものから食ってくれ!」
「うん! じゃ、じゃあこの玉子サンドから!」
ユーリは玉子サンドをつまむと、それを口に運ぶ。
「はむ……」
「ど、どうだ……?」
俺は感想を早く聞きたくて、ユーリにズイ、と顔を近づける。
「ん! すっごく美味しい!」
「だ、だろ! だろ! コ、コッチのナゲットもイケるぞ!」
ユーリの喜ぶ顔が嬉しくて、俺はついついおかずの入った弁当箱を差し出す。
「ありがとう! それじゃ……はむ……もぐ……うん! コショウが効いててスパイシーだ! 美味しいなあ!」
「おう! それじゃコッチの……って、ユーリ?」
俺がさらに他のおかずを勧めようとした時、ユーリはフォークに刺したナゲットを俺の口元へと差し出した。
「えへへ……ヤマト、あーん」
お、おおお……ユーリよ、俺に“あーん”をしてくれるのか……!
よ、よし……!
「はぐっ!」
「あ! 一気にかぶりついた!」
俺は差し出されたナゲットを一口で入れた。
「もぐ……うむ、我ながらやっぱり美味いな」
「えへへー! だよね!」
「じゃあお返しだ」
そう言うと、今度は俺がイチゴジャムとクリームチーズのサンドイッチをユーリへと差し出した。
「うん……はむ……」
ユーリは少し恥ずかしそうにしながら、その可愛い口でサンドイッチを小さくかじった。
「美味しい!」
「そかそか!」
こうして、俺とユーリは、楽しい昼食の時間を過ごした。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の夜更新予定です!
少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




