久坂大和は藤堂エルザとお弁当を交換?する。
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「もう! 何なんだよアイツ!」
帰り道、ユーリが俺の隣でプリプリ怒っている。
俺はといえば、そんなユーリからとばっちりが来ないかとヒヤヒヤしてはいるが、それでも怒ったユーリも可愛いと思っているのはナイショだ。
「ま、まあまあ……それよりユーリ、今日は風紀委員会に顔出さなくて大丈夫なのか?」
話題を逸らす意味も兼ねて、俺はそんなことを尋ねると。
「うん。さすがに今日の昼の一件を悪いと思ったみたいで、今日は小春が私の分の仕事もしてくれるって」
「お、おお、そうか……」
や、江藤の奴もとんだとばっちりだな……。
まあ、そのお陰でユーリと一緒に帰れるんだから、俺としては願ったりかなったりではあるが。
「それより!」
突然ユーリが前に躍り出て、俺の眉間にビシッと人差し指を突きつける。
「藤堂さんにあんな風に構われて、ホントは内心デレデレしてたりしないよね!」
おおう……ユーリの奴、これはヤキモチか?
ならば、俺が言う台詞はただ一つ。
「するか! 俺は今までも今もこれからも、ユーリ一筋だっつーの! つか、ユーリ以外の女の子なんか、一ミリも入る余地ねーよ!」
多分ユーリはヤキモチなんかもあるんだろうけど、一番は不安なんだと思う。
だから、俺は絶対にそんなことはないんだと、ユーリだけが好きなんだということを分かってもらうために、これ以上ないくらい大袈裟にアピールした。
そして、どうやらそれは効果てきめんだったようで。
「ふ、ふあ……うう……も、もちろん私もヤマトのことは信じてる、んだけど……ダ、ダメだ、嬉し過ぎてにやけちゃうよ……」
そう言って、ユーリは顔を真っ赤にしながら、頬を両手で押さえている。
んで、それを眺める俺の顔は、ユーリに負けない程にやけてるんだろうな。
「ま、まあ、そういう訳だから……は、早くスーパー行こうぜ……」
「そ、そだね……えへへ……」
俺達はどちらからともなく手を繋ぐと、一路スーパーを目指した。
◇
そして次の日。
「うーん! やっぱり久坂さんのお弁当は美味しいですね!」
「む、むううううううううう!」
風紀委員会室では、なぜか今日も藤堂エルザが俺の弁当を頬張っている。
そして、隣にはご機嫌斜めなユーリが……。
ま、まさか二日連続で一緒に昼メシを食う羽目になるとは思わなかった……。
しかも、俺の弁当奪われてるし!
まあ、その代わりとして、今日はやたらと豪華なロケ弁が俺の目の前にやってきたんだけど……つか、これロケ弁のレベル超えてない?
や、だって、中に伊勢海老入ってるぞ!?
「ふふ、これで今日も一日がんばれます!」
そう言って、藤堂エルザは小さくガッツポーズをした。
「お、おう……そりゃ良かったな……」
俺は口の端をヒクヒクさせながら、そう相づちを打った。
うん、俺の弁当とじゃ割りに合わねえ。
「ふーん、へーえ、ほーお、ヤマトは藤堂さんとお弁当交換できて嬉しそうだねー」
や、だからジト目で俺を睨むなよ。
「……だったらこのロケ弁と交換するか?」
「ヤダ!」
ユーリは弁当を隠すように抱え、全力で拒否の姿勢を見せた。
だったらそういう絡み方しないで欲しい……というのはウソで、本当はこんなユーリを新鮮に感じている俺。
うん、間違いなくユーリに毒されてるな。もちろんいい意味で。
「……かしましい」
今日の当番の風紀委員の岩倉先輩が、ポツリ、と呟いた。
うん……その気持ち、すごく分かりみっす。
「とにかく、早くメシ食っちまおうぜ。じゃないと昼休みがもったいない」
「むううううう………仕方ない」
「ふふ、そうですね! はあ……“大和”さんのお弁当、美味しいです」
……ん? チョット待て?
今コイツ、シレッと俺のこと名前で呼ばなかったか?
「ちょ、ちょっと! なんで藤堂さんがヤマトのこと名前で呼んでるんだよ!」
彼女の言葉に、ユーリは勢いよく席を立つと藤堂エルザに詰め寄った。
あ、やっぱりユーリも気づいたか。
「ええ……いけませんか?」
藤堂エルザはキョトンとしながらユーリに聞き返す。
まるで、自分が何をしたのかすら理解していないようだ。
ま、まあ、名前で呼んだだけだし、それくらいなら……。
「ダ、ダメに決まってるよ! ヤ、ヤマトのことを下の名前で呼んでいいのは、私だけなんだからね!」
あ、ユーリはダメみたいでした。
「さすがにそれはメチャクチャでは……」
そう呟き、藤堂エルザは俺と岩倉先輩を交互に見る。
う、うむ……俺はここで発言しないほうが得策だな……。
「……悠里、さすがにそれは横暴だぞ」
「う……」
岩倉先輩がユーリに厳しい視線を送ってそう窘めると、さすがのユーリも口をつぐんだ。
とはいえ。
「えーと……藤堂さん悪い! 俺のことは“久坂”で呼んでくれると助かるんだけど」
「え!? ど、どうしてですか!?」
手を合わせて懇願する俺の言葉に、藤堂エルザは困惑の表情を浮かべる。
だけど。
「スマン! この通り!」
下の名前を呼ばせない理由なんて、ユーリが傷つくからってこと以外ない俺は、ただひたすら彼女に頭を下げた。
そして。
「はあ……仕方、ないですね……」
藤堂エルザは溜息を吐くと、すごくガッカリした様子で渋々受け入れてくれた。
「ほ、本当に申し訳ない……」
結局この日の昼休みは、気まずい雰囲気のまま終えることになってしまった。
ま、まあ……それでも……。
「そ、その、ヤマト……ありがと……」
「お、おう……」
俺の隣で申し訳なさそうにしながらも、顔を赤くしながら頬を緩めるユーリを見たら、それもしょうがないよな。
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