23-1オブザデッド
前回までのあらすじ。
フェフさんが本気の本気を出した!!!!
「いいかい、みんな……これが僕の奥の手……高次元生命体になったらいつの間にかできるようになっていた必殺技……!」
鹿角皇帝なろうエンペラーは腕を突き出し、叫んだ。
「村焼き!」
この道ずっとゆけば、あの場所に、続いている気がする────。
ハッとした提督は気づいて艦内に叫んだ。
「だめだ、これは精神攻撃で、このままじゃフェフさんに精神をズタズタにされる──!」
そうだ、一度あの死神に喰らって、20人近くが一撃で殺された技だ。物理攻撃だけじゃなくて、精神攻撃まで織り交ぜてくるなんて。
しかし、時遅し。
宇宙船なろう号の搭乗員66人は、精神攻撃の術中にハマってしまったのだった。
提督とF.E.H.Uだけは、あの死神と距離が近かったため、避けられたのだろう。このままでは、なろう号の搭乗員は全滅だ!
だが──。
これほどの長旅を乗り越えてきた(描写はなかったし名前はいなかったけど、ちゃんとずっと生き残ってきたので!!!)仲間たちが、今さら精神攻撃で全滅させられてしまうのかどうか。
それが今、明らかになる。
yu__ssはOL(派遣)だ。缶ビール 500ml×6缶パックを持ってきたOLで、顔がいい。とにかく顔だけはいい。そんなyu__ssの目の前で、大切なものが燃やされていた。
高次元生命体フェフの精神攻撃は、死神のように幸せな夢を見せるようなものではない。大切なものを、目の前で無残に破壊するのだ。それも何度も何度も。高次元生命体フェフにとって、この力は己の愉悦と実益を兼ねた、最凶の精神攻撃だった。
yu__ssはブチ切れた。自分をお姉さまと慕ってくれている女子中学生の村が焼かれている姿を見せられて、なにをーという力が高まった。その勢いで精神支配をはねのけたyu__ssの反作用によって、高次元生命体フェフは「あ、痛い!」と叫び声をあげた。
「えっ、ちょっ、なんで!?」
「なんで、じゃねえ!」
yu__ssは命よりも大切な缶ビールを投げつけた。缶ビールは鹿角皇帝なろうエンペラーの装甲にばんばか当たる。魂の込められた缶ビールの威力は凄まじいものだった。中身の詰まった缶なんて、人に投げるもんじゃないよね!
たまらず、鹿角皇帝なろうエンペラーはビームを打ってyu__ssを蒸発させた。はぁ、はぁ、と荒い息をついている。
「どうして……はっ、次はあのなんか、本だ!」
冒険の書だ。職業はワクワクするBGMを鳴らす。持ち物はひのきじゃない棒。つまり……こう、オルゴールブックみたいなことで、いいんですかね……? わからないが、冒険の書は夢を見せられた。
きっと旅人たちがセーブするためにやってくる教会が燃やし尽くされる光景だ。くそう、おのれ、おのれ高次元生命体フェフ……。その恨みは冒険の書から立ち上る。光がどこかに集まってゆくのを、高次元生命体フェフは気づかなかった。
よしっ、とガッツポーズをする。やっぱり、やればできるじゃないか。次行こ、次! と。
そこからは、大量虐殺の始まりだった。
古明地真琴は、心を見通すさとり妖怪最後の生き残りだ。薄紫色のボブカット 感情を感じさせない目 14歳位の少女 言葉遣いが丁寧だけどドS気味 サディスティックな笑みをしている。なろう号に乗る権利を譲ってくれた姉と今は亡き妹との写真を持っていた。
なので当然、焼かれるのは姉と妹の姿だ。生きながらに焼かれてゆく。助けて、助けて、と叫ぶ声が聞こえる。普段は冷たい古明地真琴であったが、これには感情がひどく揺さぶられた。駄目だ。これ以上いくと、ラインを超えてしまう。許せない。許せない──。よくも姉と妹を、高次元生命体フェフ──。お前の命だけは、あたしが持っていってやる──。絶命した古明地真琴の身体から、紫色の光が立ち上る。
きのえいぬは柴犬の姿をした仙人だ。弟子をもってきたのだが、弟子はこの戦いにはついてくるなと言い渡し、第三惑星に置いてきた。今頃幸せに過ごしているだろう。その弟子のいた村が焼かれていた。弟子は涙を流しながら地面を叩いている。その姿を、きのえいむは冷たい眼差しで眺めていた。
おのれ、高次元生命体フェフ……。恨みの力が、また少し、貯まる。
銀鈴は幼女だ。首輪をつけたおじさんを引っ張っている、調教師の女の子だ。具体的に調教師というのがどういう職種を指し示すのか、ちょっとわたしはこの分野の専門外のためわかりかねるのですが、おじさんと密接な関係にあるのは、間違いないだろう。
とはいえ、銀鈴は幼女だ。幼女はまだパパとママに愛されて生きていく時期だ。なのに、住んでいたマンションと、通っていた学校が燃やされていた。ついでにおじさんもだ。銀鈴はすべてを失った。どうしてこんな目に遭わないといけないのか、気丈な彼女の目からもハラハラと涙がこぼれた。魂を突き刺すような一撃を受けて落命した直後、彼女の小さな体から、立ち上っていったのは憎悪だった。
染五郎はしゃべるカニのような何か(体長30センチ)だ。こんななので、物理戦闘にはまったく役に立たないと言われていたので、今回の真正面からの精神攻撃はむしろありがたかった。
焼かれたのはどこだろうか。当然、染五郎の故郷、越前だ。福井の漁港が炎に包まれている。ああ、あんなにあったかかった父ちゃんも、母ちゃんも……。許せえね、許せねえよ、高次元生命体フェフ……。お前の脳みそをカニミソと入れ替えてやる……。
空 あゆむは銀河の平和を守る騎士だ。今まで、宇宙船なろう号のパトロール隊としても、搭乗員たちを守ってきた。そんな彼が目の前で自分の村を焼かれて、守れなかった姿を見せつけられるのは、どれだけの屈辱だろうか。
「ちくしょう、ちくしょう……。俺がもっと、強ければ……」
涙ながらにうめきながら、空 あゆむは絶命した。その身体からも、わずかに光が立ち上った。
絶影は動物園勤務のゴリラだ。動物園に住んでいたため、野生の力はほぼ失われている。右手もドリルだし。ドリルの右腕をキュルキュルしていると、愛しの動物園が焼かれていた。最愛の妻、ジョセフィーヌも焼かれて死んでいる。
どうして人間に囚われた自分たちが、あまつさえこんな苦しみを味わわないといけないのか。おのれ高次元生命体フェフ……。お前の背骨をバッキバキにへし折ってやる……。野生の力が、その身体から最後に溢れ出た。
スフレはラノベ作家だ。外見は美少女(筋肉)で、その名の通り腕力は10もある。知力が0でラノベ作家が務まるのかは甚だ疑問だし、魅力が0で美少女と言い張るのもなかなか難しそうだ。だが、そんなことは関係ない。今は目の前で起きている悲劇だ。
そう、自著が燃やされていた。しかも自著を褒めてくれた読者の家もだ。まるで自分に関わった人間をすべて丁寧に叩きのめすかのように。なんということだ。げに恐ろしき高次元生命体フェフ。だが、この恨みだけは忘れない。お前には絶対に報いを受けさせてやる──。その決意とともに、スフレは前のめりに倒れて動かなくなった。
あーさは科学者だ。黒縁メガネ。足の指が6本ずつあり、足の指でジングルベルが弾けるという特技をもっている。アラミド繊維でできた白衣を着て、きょうは研究所からの帰りだった。あーさにはジングルベルを弾いてやりたい子らがいたのだ。
わずかな額だが、毎月孤児院に寄付をしていた。ここはあーさが生まれ育った孤児院だった。今でも行くと「あーさ、あーさ」とひっついてきてくれる子らがいる。その子らにジングルベルを弾いてやる約束をしていたのに今、孤児院は雷に打たれた枯れ木のように焼け落ちていた。崩れ落ちる。どうして、こんなことが。人のできるような行為ではない。あーさの身体から、なにか大切なものが抜けてゆく。だがそれは、憤怒を呼び覚ますために大切な燃料だった。
一瞬で10人。一撃で10人。大切な人命が失われる。だが、そこから伸びた光は、鹿角皇帝なろうエンペラーの右腕と左腕にそれぞれ、伸びていた。
大切な人を奪われる夢を見せられた者の怨念が、憎悪が、激情が、そして無念が、彼らの心を呼び覚ます。
そして、最後のトリガーが引かれた。
──お願い、覚醒めて──。
──彼を倒すために、力を、貸して──。
祈るのは、いだてんだ。今は無き宇宙船の付喪神である。見た目は普通の人間と本人は思っているが、見るからに妖怪だ。人の死に絶えた星に住んでいた、妖怪だった。
妖怪の言葉に応えるのは誰か。
そう、決まっている。
彼らを、わたしたちは知っているはずだ。
第一話で選ばれなかったとは言え、彼らがこのようにおめおめと生き恥をさらすような行為を、寛容しない。
そのために、怨念を、憎悪を、激情を注ぎ。
無念を糧に、目を覚ませ──。
いだてんは自らの魂を代償に、声を届かせた。
「んんん……!?」
まず、鹿角皇帝なろうエンペラーの右腕が突如として爆発した。
続いて、同じように鹿角皇帝なろうエンペラーが爆発する。
「なになに!? どうなっているのん!?」
分離した右腕と左腕はそれぞれ、宇宙空間を漂う。そして、彼らは声ならぬ声を叫ぶ。俺たちは、お前の仲間になるために現れたんじゃねえ、と。
移民探索船としての宇宙船なろう号。そして、最期の希望である宇宙船なろう号。参加したそのふたつの宇宙船なろう号は、今、意志をもって、改めて誇りある死を選ぶ。
宇宙に一対の閃光が瞬いた。
両腕をもがれた状態になった鹿角皇帝なろうエンペラーは「ば、ばかな……」と声を漏らす。
結局、聖夜に何かを遂げた棘田がもってきた宇宙船なろう号だけが、高次元生命体フェフには残された。
「こんな、こんなこと! あるはずが!」
「あったんだよね……。フェフさん」
「──ッ!」
提督は悲しげにつぶやく。
多くの仲間が死んでしまった。また、これからもまだ仲間が死んでしまうだろう。だが、彼らの死は決して無駄ではなかった。なぜなら──。
──これから、宇宙船なろう号の面々は、逆転勝利を掴み取るのだから。
「最後の戦いだよ、フェフさん!」
「ぐぐぐぐぐぐ!!! いいよ、いいよ! 胴体だけになっても、僕の鹿角皇帝なろうエンペラーは最強無敵なんだから!!!」
決戦の火蓋が、切って落とされたのだった。
***生存者(間違ってたらごめんね!)***
しろばら
JIRO
カリオス
柚木 恋
くまこ
リトル=レイン
もかちゃん
サジタリウス
ドンペリ・ハコデ=モッテキナーヨ
つくもなす
さけさかな
クラウン
ジイ・ファンタジー
ウニみちながサガ
ASHIO-ff
カチガラスハンター
クローズ・サンダー
ねねこ
アイ
掃除妖精(自称)
慧
ルナルナ
ユウ・キリシマ
ギルバート
山神ルーシー華子真由美紗奈早苗円香明神智和田輪廻清藤蟈畿之娘
毘沙門天ゆるいこ
水野力
足の生えたじゃがたらいも
ブルース・フォー
ヌメット・スネーク
シグルド
日柳すみれ
ぺぺぽん
みさと
永瀬-Ⅲ
箱野ねこ
栗
JUNY
しろてん
アポロ
原稿が終わらないあかり
羽海野渉
かどくら
オレンジ・キッシュ
雨乃 時雨
タンドリー
エマ・ウッズ
シール・アイリスフレイム
リョクア
宣伝部長
ジルオール
越谷 杏子
黒無
古馬海
ニコラウス




