表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16年目の片想い  作者: 雪本はすみ
第8章 ただの友達
41/88

 加島がひとりでテーブルを離れ、会場を出ていくのが見えた。

 五分後、俺は会場を出た。加島は誰もいないロビーのソファに深く腰掛けて、ぼうっとしていた。俺の顔を見ると、はっとして姿勢を正す。


「休憩?」


 声をかけると、加島は戸惑いを笑顔で覆い隠すように「うん」と答える。

 俺は加島の隣に腰掛けた。


「二次会、行く?」

「えっ」


 俺が聞いたのがよほど意外だったのか、加島は目を丸くしている。


「い……市之瀬くんは? 行くの?」

「加島が行くなら」


 さらに驚いた顔をしている。

 今日、ここに来る前から決めていたことだ。加島をひとりで帰すつもりはないし、このまま──幼なじみで元クラスメイトのまま、別れるつもりもない。


「東京にもどるのはいつ?」

「明日……だけど……」

「仕事はいつから?」

「……四日」そう答えた後、「市之瀬くんは、六日だよね」と言う。


 なぜそのことを知っているんだろう。

 加島の顔はまだ戸惑っている。俺の矢継ぎ早な質問の意図がわからず、困っている。


「あのさ」


 七年前と同じことを、くり返すつもりはない。


「携帯の番号、教えて」


 加島は目を大きく見開いたまま、俺の顔を見つめる。必死に、言葉の真意を探ろうとしているみたいだった。と言っても、そのままの意味なのだが。


「……あの」


 加島が何か言いかけたとき、会場の扉が開いて数人の幹事メンバーがロビーに出てきた。俺たちを見ると、「ふたりとも何してんの? もうすぐお開きだよ」と声をかける。

 俺は加島に「後で」と小声でささやき、ソファから立ち上がった。加島が焦ったように立ち上がり、「二次会、私も行くから」と急いで言う。

 俺は思わず笑顔になった。


「じゃあ、そのときに教えて」


 加島にそう言って、会場にもどった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ