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16年目の片想い  作者: 雪本はすみ
第6章 幼なじみなんだろ?
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 あの頃は、自分の中の衝動を持てあましていた。


 加島と再会してから、消したはずの記憶が、感情が、再生ボタンを押したみたいに一気に鮮明に現れて、一瞬のうちに俺を支配した。

 加島に向かう気持ちが日ごとに強くなって、何も手につかなくなるほどだった。それは同時に、住友に対する罪悪感を深めることにもなった。


「やっぱさー、なんつっても体育祭のリレーだよなー」


 玉利がほのぼのとした調子で語っている。

 玉利は、高三のときの体育祭でクラス対抗リレーの第一走者に選ばれている。


「やー、あれは圧巻だったよなー、うん」

「とても残念なことですが、玉利さんが走っていたところは、おそらく誰の記憶にも残っていないのではないかと思われます」


 国枝が冷静な口調で指摘すると、その場にいた全員が笑った。


「ごめん。それは私のせいだ」


 第二走者だった松川があわてて謝り、みんなが口をそろえて「全然」と言う。


「すごかったもんな、市之瀬のごぼう抜き」

「ありえないくらい速かったよね」

「しかも余裕っぽかった」

「同じ人間か? って思ったよ」

「見てたやつ、全員そう思ってたって」

「もはや伝説だよね」


 俺が黙っていると、国枝がまた興味津々といった顔を向けてきた。


「それで、実際はどうだったのですか? あの走りは、やはり余裕だったのでしょうか?」


 何やら記者がインタビューをするような質問内容である。全員の視線がこちらを向いた。


「余裕じゃねえよ。あれは、加島のおかげ」


 断言する。あのとき、俺にバトンを渡したのが加島じゃなかったら、絶対に違っていた。俺の気持ちが。


「そうそう、加島さんも速かったんだよなー、意外と」


 たった今思い出したように、玉利が言った。

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