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スライドショーが始まる直前、市之瀬くんを見つけた。
元野球部の富坂くんと有村くんと三人で、会場の隅に設置されているパソコンの前に集まっている。三人とも背が高いので、一緒にいると目立つ。
「スライドショー、まだ始まらないのかな」
ビュッフェテーブルからサンドウィッチを手にしてもどってきた亜衣が、パソコンの前にいる三人を見ながら言う。
亜衣は野球部のマネージャーをしていたから、三人が同じ中学の出身だということも、有村くんと富坂くんが中学時代から野球部員で、市之瀬くんがたびたび野球部の試合に引っぱり出されていたことも、知っている。
中学を卒業してすぐ、父の仕事の都合でふたたび雛条にもどってくることになったとき、私は迷わず雛条高校を受験することを決めた。
亜衣と私は、高校の一年のとき、同じクラスになって知り合った。
最初に声をかけてきたのは亜衣のほう。
もし、亜衣に声をかけられていなかったら、私はまた孤独な学校生活を送ることになっていたかもしれない。
中学の三年間、結局、仲のいい友達はできなかった。
表面的に仲がいいふりをする友達は、たくさんいた。けれど、一緒にいて本当に楽しいと思える友達は、ひとりもいなかった。
亜衣と初めて会ったときのことは、今もよく覚えている。
あれは、入学式から間もない、四月の朝のバスの中だった。




