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16年目の片想い  作者: 雪本はすみ
第4章 もう二度と会えない
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 会場隅のパソコンを設置しているところへ行くと、富坂が「本当に流すのか、これを」とかなんとか、悲痛な声でひとりごとを言いながらチェックをしていた。


「ああ、市之瀬か」


 俺に気づくと、富坂はほっとしたような顔をする。それから「健吾は?」と聞く。

 俺とあいつがいつも一緒にいると思われているらしいのが、なんとなく気に入らない。探してみたが姿が見当たらないので、おそらく喫煙室だろう。


「おまえってさあ」


 突然、富坂が思い出したように話しかける。


「中学でも高校でも部活やらなかったけど、何か理由があったわけ?」


 無遠慮にまっすぐな視線を送った後で、富坂はころっと笑う。


「いや、ちょっと気になっただけ。今さら聞くことじゃないよな。ただ」


 パソコンの画面に視線をもどすと、富坂の声のトーンが微妙に落ちた。


「つい、考えちまうんだよ。最後の試合におまえが出てたら……もしかして勝てたかもって、今でも」

「勝利の女神のエコヒイキで?」

「そうそう」


 富坂は画面を見たまま、なつかしそうに笑っている。


「俺的には、市之瀬と健吾、だけどな」

「なにが」

「女神サマがエコヒイキしてくださる条件」


 高三の夏、富坂と有村が率いた野球部は、地区予選三回戦で延長十四回を戦って敗れた。その試合に勝てば、準々決勝だった。


「ま、上を見たらきりがない。俺たちには、あのあたりが妥当だったんだろうな」

「なんの話?」


 突然、俺の背後から健吾が首を突っこむ。


「おまえが勝利の女神に嫌われてるって話だよ」


 俺が言うと、富坂がわはは、と豪快に笑った。

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