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みんな、楽しそうに思い出話を語り合っている。なつかしい顔もあれば、知らない顔もある。顔は覚えているけれど名前を思い出せない人もいる。
「加島さん」
声をかけてきたのは、諸見里さんだった。小学校五年のとき、私たちのクラスに転校してきた女の子、諸見里美樹。
「卒業以来だね。元気だった?」
もともと派手な顔立ちだったけれど、モデルのようなメイクをしているせいか、ほがらかな笑顔はいっそう華やかになっていた。ピンク色のワンピースがよく似合っている。
美人で積極的で明るい性格だった彼女は、あっという間にクラスのアイドルになった。ほかのクラスの男子が、教室をのぞきにくるくらい。
「さっき、市之瀬くんにも会ったよ。全然変わってないよねー。変わったのは見た目だけ」
諸見里さんはきゅっと目を細め、ころころ笑った。
あの頃、諸見里さんが市之瀬くんを好きだったことは、クラスのみんなが知っていた。私以外は。




