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16年目の片想い  作者: 雪本はすみ
第2章 あの頃のまま
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「受付にいた子、かわいくなかった?」


 開宴十五分前になり、会場は同窓生たちであふれていた。


「右端のふたりだろ」

「誰だっけ」

「一組の加島と松川」

「おまえ、よく覚えてるなあ」

「ネームプレート、チェックしました」


 すぐ後ろでそういう会話が聞こえ、淡い思い出の記憶はたちまちかき消された。

 そうこうするうちに開宴時間の二時になり、同窓会が始まった。招待した先生たちが入場し、健吾が前に進み出て代表幹事として挨拶をする。


 乾杯の頃には、受付にいた加島と松川たちも会場に入ってきた。遅刻者は各自でネームプレートを取って、会場内で会費を支払うシステムになっている。

 会食が始まると、あっという間に会場内はにぎやかになった。加島は、松川と一緒にビュッフェテーブルに並んでいる料理を選んでいた。


 やっぱり、ほかのやつから見てもきれいなんだろうな。

 加島はもうあの頃のようにおどおどしていないし、男とも普通に話しているみたいだし、何よりよく笑うようになった。


「市之瀬くん」


 華やかなピンク色のワンピースを着た厚化粧の女が、手を振りながら近づいてきた。一瞬、誰だかわからなかったが、すぐに諸見里美樹もろみざとみきだと思い出す。


「うわー、びっくり。うわさで市之瀬くんが参加するらしいって聞いたんだけど、まさかほんとに会えるとは思わなかったよ」


 長いまつげをバサバサさせて、諸見里はおおげさな表情を浮かべる。


「なつかしいねー。覚えてる? 小五のバレンタインデーに、私が手作りのチョコあげたの」


 覚えているけれど、あんまり思い出したくない。


「私はけっこう勇気を出して渡したのに、市之瀬くんの態度があんまり冷たいから、がっくりきたんだよねー」


 冷たくしたつもりはない。

 ただ、みんながいる教室で堂々と渡されて死ぬほど恥ずかしかったし、あんなのもらって、何をどうすればいいかわからなかっただけで。

 返答のしようがなくて黙っていると、諸見里はにこにこしながら俺の顔をのぞきこむ。


「でも、わかってたんだ。市之瀬くんに好きな子がいるってことは」


 諸見里は小悪魔のような笑みを浮かべると、もう一度小声で「なつかしいね」と言い残して、俺のそばから離れた。

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