第141話
東京、ワシントン、北京、モスクワ。
世界の運命を握る四つの首都を繋ぐ最高機密のバーチャル会議室は、この日、いつになく張り詰めた、そして焦燥感に満ちた空気に支配されていた。
議題は、停滞する「次なる段階」への移行についてである。
E級ダンジョンの攻略が進み、探索者たちのレベルが上がり、装備が充実しつつある今、世界は次の扉――『D級ダンジョン』の開放を渇望していた。
だが、その扉の鍵を握る「運営者」からの許可が一向に下りないのだ。
「――KAMI様、まだなのですか」
沈黙を破ったのは、中国の王将軍だった。
彼のホログラムは苛立ちを隠そうともせず、指先でテーブルをコツコツと叩いている。
「我が国の『青龍』ギルドの精鋭たちは、既にE級のコンテンツを消化しきっております。
魔石の備蓄も十分、装備の強化も限界まで達した。
これ以上の足踏みは国家戦略上の損失です。直ちにD級の解禁を求めます」
その剣幕に、議長役の九条官房長官が困ったように眉をひそめる。
だが答えたのは彼ではない。
円卓の中央、いつものように気だるげにポップアップしたゴシック・ローリタ姿の少女――KAMIだった。
今日の彼女は、日本のデパ地下で買ったと思われる高級マカロンの箱を抱え、色とりどりの菓子を一つずつ吟味しながら、心底面倒くさそうに口を開いた。
「あーもう、うるさいわねぇ。ちょっと待ってって言ってるじゃない」
彼女はピンク色のマカロンを齧り、不満げに言った。
「うーん、最終調整中なのよ! まだ耐性装備のバランス調整が終わってないの」
「調整ですか?」
アメリカのトンプソン大統領が怪訝な顔をする。
「そうよ」
KAMIは指先で空中に複雑な数式とグラフを投影した。
それはD級ダンジョンからドロップする予定の装備品と、現在の市場価格の相関図だった。
「いいこと? D級からは敵の攻撃が激化するわ。だからドロップする防具の性能も跳ね上がるの。
でもね、無制限に高性能な装備をばら撒いたらどうなると思う?
今あなたたちが必死に集めて高値で取引している『E級装備』の価値が、一夜にしてゴミクズ同然に暴落するのよ」
彼女は経済学の講師のようにポインターを振った。
「頑張ってE級装備を揃えたプレイヤーが、D級が解禁された瞬間に『あ、それもう要らないゴミです』って言われたらどう思う?
萎えるでしょ? 引退案件よ。
だからインフレを緩やかにするために、装備に制限をかける調整をしてるの」
「制限……とは?」
沢村総理が尋ねる。
「『装備要件』よ」
KAMIはニヤリと笑った。
「D級から落ちる強力な装備には、『レベル制限』や『ステータス要求値』を厳しく設定するわ。
例えば『レベル15以上でないと装備不可』とか、『筋力数値が50以上ないとペナルティ発生』とかね。
そうすれば、下位の探索者は今まで通りE級装備を使わざるを得ない。
E級装備の価値は暴落せず、中古市場として機能し続ける。
経済のソフトランディングのための、大事な調整なのよ」
「なるほど……」
麻生大臣が、感心したように頷いた。
「アイテムレベルによる市場の棲み分けか。実に理に適っている。
いきなり上位互換をばら撒けば、市場は大混乱しますからな」
「でしょ?」
KAMIは胸を張った。
「あと『錬金術のオーブ』のドロップレートの最終チェックも残ってるの。
あれ、レアアイテムを作るための重要アイテムだから、出しすぎるとバランス壊れるし、絞りすぎると誰も使わなくなるし……。
その絶妙なラインを見極めるのに時間がかかってるのよ。
あと少しだから! 大人しく待ってなさい」
神の「あと少し」が、人間にとってのどれくらいの時間なのかは不明だが、少なくとも論理的な理由があることは分かった。
四カ国の指導者たちは、渋々といった体で頷いた。
「……了解しました」
王将軍が引き下がる。
「では、その調整とやらが完了するのを待ちましょう。ですが可及的速やかにお願いしたい」
「はいはい」
会議がひと段落したかに見えたその時だった。
九条が、少し言いにくそうに、しかし決意を秘めた表情で手を挙げた。
「……KAMI様。D級の件は承知いたしました。
ですがその待ち時間の間に、少し日本国内で問題が発生しておりまして……。
ご相談よろしいでしょうか?」
「えー、なによ?」
KAMIは次のマカロン(ピスタチオ味)に手を伸ばしながら、気のない返事をした。
「また調整? なんかあった?」
「はい。実はですね……」
九条が次の言葉を紡ごうとしたその瞬間。
KAMIの脳裏にある「並行世界の記憶」がフラッシュバックしたらしい。
彼女は九条の言葉を遮り、パッと顔を輝かせた。
「あ! 分かった! 汎用ロボットの話!?」
その単語に、会議室の空気が凍りついた。
「……は?」
九条がぽかんとする。
「汎用……ロボットですか?」
「そうそう!」
KAMIは、一人で盛り上がり始めた。
「この前の日本の会議の時に私が提案したやつよ!
労働力不足で困ってるって言うから、『並行世界の労働用汎用ロボット技術』をあげようか?って話したじゃない。
あれ、やっぱり導入することにしたのね!?」
「……汎用ロボット?」
アメリカのトンプソン大統領が身を乗り出した。
その目には、新しいテクノロジーに対する貪欲な好奇心の色が浮かんでいた。
「何だ何だ? 聞いてないぞ? そんな重要案件を」
「あー、うん」
KAMIは、まるで自慢のおもちゃを友達に見せる子供のように、得意げに解説を始めた。
彼女は指先で空中にホログラムを展開する。
そこには、人間と見分けがつかないほど精巧で、そして流麗な動きをする人型アンドロイドの映像が映し出された。
「これよこれ。日本の会議に呼ばれた時、彼らが『人手が足りない』って泣きついてきたから、並行世界の技術データの話をしたのよ。
超高性能ロボットなんだけどね。魔石を動力源にして、人間以上の出力と無限の稼働時間を誇るの。
AIが高性能だから複雑な判断もできるし、会話も完璧。まさに夢の労働力よ」
その映像に、トンプソンだけでなく、ロシアのヴォルコフ将軍、中国の王将軍までもが目を奪われた。
魔石駆動の自律型アンドロイド。
それは軍事的にも産業的にも、革命的な技術だった。
「……ほほう」
ヴォルコフ将軍が低い声で唸った。
「それは詳しく聞きたいですな……。日本だけにそのような話をしていたとは、水臭い」
「だけどね」
KAMIは悪戯っぽく笑って付け加えた。
「一つだけ問題があってね。
AIがあまりにも高性能だから『自我』を持っちゃうのよ。
並行世界じゃ、彼らが『人権』を要求して、大規模な反乱を起こした歴史があるわ。
だから、日本で導入するなら、その『人権問題』と『反乱リスク』をどうするか、覚悟を決めなさいよって話をしたんだけど……」
彼女は九条の方を向いてニコニコした。
「てっきりその覚悟が決まったから相談に来たのかと思ったわ!
どう? 日本で導入するって話になった?」
その問いかけに、会議室は一瞬の静寂に包まれた。
そして四カ国の指導者たちの脳内で、それぞれの国家戦略に基づいた高速計算が行われた。
最初に反応したのは、やはりアメリカのトンプソンだった。
「人権」と「自由」の国、そして何より「イノベーション」の国。
「……KAMI様」
トンプソンは眼鏡を光らせて言った。
「私は前向きに検討しても良いのではと思うが……?」
「えっ、マジ?」
KAMIが驚く。
「リスクは承知だ。だが、リスクのない進歩などあり得ない。
AIの人権? 結構なことだ。新たな知的生命体との共存は、人類の次なるフロンティアだ。
それに魔石駆動の自律兵器……いや作業機械があれば、我が国の産業競争力は盤石になる。
日本がやらないなら、我が国が実験場になってもいいが?」
その積極的な姿勢。
対照的に、中国の王将軍は即座に、そして冷徹に拒絶した。
「うーん、中国はなしですね」
彼は断言した。
「制御不能な要素を国内に招き入れるなど論外です。
党の指導に従わない、あまつさえ『人権』などと主張して反乱を起こす機械など、百害あって一利なし。
我が国に必要なのは命令を忠実に実行する道具であって、哲学を語る隣人ではありません」
「うちも要らないな」
ヴォルコフ将軍も苦々しげに首を横に振った。
「ただでさえ国内の不満分子の監視に手を焼いているのだ。
その上、機械の反乱まで相手にしていられるか。
反乱しないロボットのがましだ。
KAMI様、知能をデグレード(低下)させたバージョンはないのですかな?」
「ないわよ」
KAMIはあっさり言った。
「高性能な身体を動かすには、高性能な脳が必要なの。セット販売よ」
意見は割れた。
肯定派のアメリカ、否定派の中露。
そして全ての視線が、発端となった日本――九条官房長官へと集まった。
「……で、日本はどうなったの?」
KAMIが期待に満ちた目で尋ねる。
九条は深いため息をつくと、申し訳なさそうに、しかしきっぱりと言った。
「……日本も、議論が面倒なのでパス予定です」
「えーっ!?」
KAMIがずっこけた。
「いや無理ですよ、KAMI様」
九条は真顔で説明した。
「ロボットに人権、選挙権、労働権……。
憲法改正どころの騒ぎではありません。宗教界、労働界、人権団体、全方位から袋叩きに遭います。
今の内閣にその哲学的難問を解決する体力はありません。
技術は魅力的ですが、社会的コストが高すぎます」
「ちぇーっ」
KAMIは頬を膨らませた。
「つまんないの。せっかく『鉄腕アトム』の国なのに」
「……って違うんですよ!」
九条は慌てて本来の話題へと軌道修正を図った。
「ロボットの話ではありません! 全く別の話で、KAMI様にご確認したいことがあって参ったのです!」
「え? 違うの?」
KAMIはキョトンとした。
「はい。実は……」
九条は姿勢を正し、緊張した面持ちで切り出した。
「我が国で今、企業のダンジョン参入が予定されてまして……」
その言葉に、他国の首脳たちが一斉に反応した。
「……企業参入?」
トンプソンが、信じられないものを見る目で日本側を見た。
「今更? まだしてないのか日本は?」
「我が国ではとっくに『キャピタル・ギルド』などの民間軍事会社が、組織的にダンジョン攻略を行っているぞ?」
「中国でも『青龍』は国営企業扱いだが、実質的な企業活動だ」
「ロシアの『冬の狼』も同様だ」
三カ国の首脳は口を揃えて言った。
「……日本は遅れてるな……」
その容赦ないツッコミに、沢村総理がガクリと肩を落とす。
「面目ない……。我が国には色々と『調整』という名の儀式が必要でして……」
「まあいいわ」
KAMIが話を促した。
「で、企業が参入するとして、何が問題なの?」
九条は一つ咳払いをした。
「おほん。そこでですね、経済界の代表である経済連が、特区制度を活用しての大規模な参入を計画しているのですが……。
彼らが参入の前提条件として、KAMI様の『ある発言』を根拠にしているのです」
九条は、先日行われた経済連の密室会議の議事録(もちろん公安が盗聴したものだ)の一部を読み上げた。
「彼らは以前のジュネーブ会議でのKAMI様の発言――
『基本的にダンジョンでの死者は出ないと考えていいわ。最初のうちはC級以下のダンジョンしか解放しないから。そのレベルで死者が出ることはまずないかなーって感じね。ちゃんと装備を整えればの話だけど』
――この言葉を金科玉条のごとく掲げております」
九条は続けた。
「これを根拠に『C級まではシステム的に安全である』という理論を構築し、社員をダンジョンへ送り込む際のリスクヘッジ……というか責任回避の論理として使おうとしているのです。
『神が安全だと言ったのだから、万が一の事故は不可抗力である』と」
九条は恐る恐るKAMIの顔色を伺った。
「……そこで確認なのですが。
KAMI様。C級までの『安全性』というのは……本当に絶対的なものなのでしょうか?
企業が全財産を投じて装備を整えさせれば、社員が死ぬことは『絶対に』ないと言い切れるのでしょうか?」
その問いに、KAMIはきょとんとした顔をした。
そして、さも当たり前のことのように、あっさりと答えた。
「ええ、それであってるわよ」
「……え?」
九条が拍子抜けしたような声を出す。
「だから、システム的にはそういう風に設計するから安心していいわ」
KAMIはマカロンの箱を閉じながら言った。
「C級までのモンスターの攻撃力は、同ランクの適正装備で防御できる上限値を超えないように設定してあるわ。
理不尽な初見殺しのトラップも設置しない。
だから理論上は死なないわよ。私のゲームバランスは完璧だもの」
その、あまりにも自信満々な絶対者の保証。
「なるほど……安心しました……」
沢村総理が、心底ホッとしたように胸を撫で下ろした。
「それならば企業の参入を認めても、最悪の事態は避けられそうですな。
経済界の強気な姿勢も、あながち無謀ではなかったということか……」
だが。
その安堵の空気を、KAMIの次の一言が冷ややかに切り裂いた。
「……でもね」
彼女は少しだけ意地悪く、そしてどこまでも冷徹な目で人間たちを見下ろした。
「システムは完璧でも、それを使う『人間』の馬鹿までは計算出来ないわよ?」
「……え?」
「例えば」
KAMIは指を折って数え始めた。
「『経費削減』とか言って社員に弱い中古装備を持たせる社長」
「『ノルマ達成のためだ』って言って、進軍を命じる上司」
「『俺ならいける』って過信して、偵察もせずにボスの部屋に突っ込む現場指揮官」
彼女は肩をすくめた。
「そういう『ヒューマンエラー』や『組織の論理』による自滅まで、私は面倒見きれないわ。
安全に業務してても、あなたたちの世界の工事現場とか工場では、たまに死人が出てるじゃない?
それと同じよ」
彼女は呆れたように言った。
「ダンジョンはあくまで『狩り場』よ。
剣を振り回し炎が飛び交う場所で、『絶対に安全』なんてあるわけないじゃない。
システムが殺さなくても、人間が勝手に死ぬことはいくらでもあるわ」
その言葉は冷水となって、会議室の熱を奪った。
「システムとしての安全」と「運用上の安全」は別物である。
神はゲームバランスを保証したが、プレイヤーの愚かさまで保証したわけではない。
「……まあ、それはそうですが……」
沢村が苦い顔で呻いた。
「やはり企業の責任能力が問われる事態は避けられないか……」
その重苦しい空気を破ったのは、アメリカのトンプソン大統領だった。
彼は「何を今更」といった顔で葉巻の煙を吐き出しながら言った。
「総理。何を悩んでいるんだ?」
彼はアメリカ流のビジネスロジックを展開した。
「リスクがあるのは当然だろう。だからこそ『契約』があるんじゃないか。
我が国では探索者は企業と分厚い契約書を交わす。
『死亡時の免責事項』『危険手当の規定』『遺族への補償額』。
全てを事前に合意し、サインさせる。
そうすれば、何が起きてもそれは『契約の履行』に過ぎない。訴訟も怖くない」
彼は日本の煮え切らない態度を叱咤した。
「契約をしっかりしたら良いのでは?
日本もそろそろ、そのウェットな『家族的経営』とかいう幻想を捨てて、ドライなアメリカ流の経済を学ぶべきでは?
リスクを金で売買する。それがビジネスだ」
その、あまりにも合理的で、そして冷徹な正論。
だが、それに真っ向から反論した者がいた。
中国の王将軍だ。
「――異議あり」
彼は不快感を隠そうともせずに言った。
「そもそも私的企業ごときが『武力』と『命』を扱うこと自体が間違いなのです。
企業は利益を優先する。だからこそ装備をケチり、安全を軽視し、労働者を使い潰す。KAMI様の仰る通りの事故が起きるのです」
彼は断言した。
「やはり力は国家が管理すべきです。
我が国のように国家の監視下にある『非公式ギルド(実質的な国営組織)』で運用した方が統制も取れ、安全管理も徹底できる。
社員ではなく兵士として扱う。
国のためならば命のリスクも名誉となる。
それが最も健全な形ではありませんか?」
アメリカの「契約による免責」。
中国の「国家による統制」。
二つの極端なモデルが提示された。
そして最後に、ロシアのヴォルコフ将軍がニヤリと笑って、第三の道を口にした。
「まあどちらも堅苦しいな」
彼はウォッカのグラスを傾けながら言った。
「我が国ではもっとシンプルだ。
使えるものは全て使うべきだ。
国営企業だろうがオリガルヒの私兵だろうが、あるいは『マフィア』でもなんでもね」
マフィア。その言葉に全員が眉をひそめる。
「彼らはリスク管理のプロだぞ?」
ヴォルコフは悪びれずに続けた。
「命の値段を知っているし、荒事にも慣れている。
ダンジョンという無法地帯にはうってつけの人材だ。
政府が表立ってできない汚れ仕事や、危険な深層の探索は彼らに任せておけばいい。
死んでも誰も文句を言わんしな」
契約、統制、そして裏社会。
三者三様のダンジョンとの付き合い方。
そのどれもが、日本の「安全第一」で「責任回避」な官僚主義とは相容れないものだった。
「…………」
沢村と九条は沈黙した。
どの道を選んでも日本には馴染まない。
だが道を選ばなければ前に進めない。
「……分かりました」
九条が静かに結論めいたものを口にした。
「KAMI様の『システム的には安全』というお言葉を、我々は信じます。
そしてその上で発生する『人間の愚かさによる事故』については……。
特区という枠組みの中で、日本流の『厳格な安全基準』と『相互監視』によって、極力排除する努力をいたします」
彼は覚悟を決めたようだった。
「企業には参入を認める。だがその管理責任は徹底的に問う。
装備の基準、指揮官の資格、労働時間の管理。
がんじがらめの規制の中で、それでも利益を出せると豪語する企業だけをダンジョンに送り込みます」
それは、最も日本的で、最もコストのかかる茨の道だった。
「ふーん。まあ頑張れば?」
KAMIは興味なさそうに立ち上がった。
「どうせ人間なんて、どんなにルールを作っても抜け道を探して失敗する生き物よ。
その失敗も含めて、私は楽しませてもらうわ」
彼女は最後に一言だけ付け加えた。
「あ、そうそう。D級の準備、もうすぐ終わるから。
来週には解禁のアナウンス出すわよ。
企業の準備運動、間に合うと良いわね?」
その爆弾発言を残して、KAMIは姿を消した。
「――来週だと!?」
沢村が悲鳴を上げた。
「まだ特区の認可も下りてないのに!」
会議室は再び大混乱に陥った。
神のペースは、人間の政治スケジュールなどお構いなしに加速していく。
その激流の中で日本という小舟は、企業の欲望と安全への責任という重荷を抱えながら、必死に舵を取り続けるしかなかった。
彼らの眠らない夜は、今日もまた、答えの出ない問いと迫りくる期限に追われて、更けていくのだった。




