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賢者の石を手に入れた在宅ワーカーだけど、神様って呼ばれてるっぽい  作者: パラレル・ゲーマー


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第131話

 世界は狂騒と繁栄、そして分断の季節を迎えていた。

 日本政府が主導した「ダンジョン開放」から二ヶ月。

 その衝撃は、当初の予想を遥かに超えるスピードで地球経済を侵食し、書き換え、そして再構築していた。


 東京、ニューヨーク、上海、モスクワ。

 ダンジョンを擁する四カ国の主要都市は、かつてない好景気に沸き返っていた。

「ダンジョン特需」、あるいは「魔石バブル」。

 メディアがそう名付けた現象は、単なる投機熱に留まらず、実体経済を力強く、いや暴力的なまでに押し上げていた。


 街には金が溢れていた。

 探索者たちがダンジョンから持ち帰る魔石や素材は即座に現金化され、高級車へ、タワーマンションへ、そして高級レストランの食事へと変わる。

 企業の設備投資は過去最高を記録した。魔石エネルギーを前提とした新工場の建設ラッシュ、ダンジョン素材を用いた新素材開発への巨額投資。

 失業率は歴史的低水準となり、給与水準は跳ね上がった。

 四カ国の国民たちは、この世の春を謳歌していた。


 だが、光が強ければ強いほど影は濃くなる。

 この「ダンジョン・バブル」の恩恵を直接受けられない国々――すなわち世界のその他大勢の国々にとって、この二ヶ月は悪夢のような「置き去り」の季節だった。


 パリのカフェでは、コーヒー一杯の値段が二倍に跳ね上がっていた。

 ベルリンの工場では、エネルギーコストの高騰と原材料不足により、操業停止が相次いでいた。

 アフリカや南米の資源国は、魔石という上位互換の登場により、自国の鉱物資源の価格暴落に直面していた。


「波及効果」で世界経済全体の数字は上がっている。

 だが、それは四カ国が吸い上げた富のおこぼれが、インフレという形で還流されているに過ぎなかった。

 持てる国と持たざる国。

 ダンジョンがある国とない国。

 その絶対的な格差は、もはや埋めようのない断絶となりつつあった。


 ***


 深夜、四カ国首脳を結ぶバーチャル会議室。

 その空気は、好景気の勝者たちが集うサロンのような余裕と、外の世界からの突き上げに対する苛立ちが入り混じった、奇妙なものだった。


「――報告します。EU 及び G77(途上国グループ)からの共同声明が、先ほど国連事務総長を通じて提出されました」


 議長役の九条官房長官が、いつもの鉄仮面のような無表情で、しかしその声には隠しきれない疲労を滲ませて報告した。


「内容は予想通りです。『ダンジョン設置の地域的不均衡の即時是正』。

 要するに『我々の国にもダンジョンを作れ』という要求です。

 彼らは、これ以上設置が遅れるならば、四カ国製品への懲罰的関税および外交関係の見直しも辞さないと、極めて強い調子で迫っております」


 その報告に、アメリカのトンプソン大統領が、うんざりしたように葉巻の煙を吐き出した。


「……やれやれ。彼らも必死だな。

 だが気持ちは分かる。我が国の経済指標を見てみろ。ダウ平均は毎日最高値を更新し、失業率は完全雇用に近い。

 このパーティに参加できない彼らが、指をくわえて見ていられるはずもない」


「ですが」

 中国の王将軍が冷ややかに言った。

「彼らにダンジョンを与える準備は、まだ出来ていないでしょう。

 我が国でさえ、地方都市のダンジョン管理には手を焼いている。

 治安維持、魔石の流通管理、探索者の統制……。

 統治能力の低い途上国にダンジョンなど渡せば、それは即座に内戦の資金源となり、無政府状態を生み出すだけだ」


「同感だ」

 ロシアのヴォルコフ将軍も頷いた。

「資源は武器だ。管理できない者に武器を渡す愚は避けねばならん。

 それに正直に言えば……もう少し我々だけで、この蜜を吸っていたいというのも本音だがな」


 四カ国の利害は一致していた。

 独占の維持。

 だが、国際社会からの圧力も限界に近づいている。

 沢村総理が、頭痛をこらえるようにこめかみを押さえながら言った。


「……しかし無視し続けるのも限界があります。

 特にヨーロッパ諸国の焦りは尋常ではない。

 ドイツやフランスの首脳からは連日連夜、私の元へホットラインがかかってくる。

『日本だけ抜け駆けはずるい』『同じ西側陣営ではないか』と……。

 KAMI 様は、この状況をどうお考えなのだろうか」


 その言葉を合図にしたかのように。

 円卓の中央に、いつものゴシック・ロリータ姿の少女が、音もなくポップアップした。


 今日の彼女は、日本の最高級フルーツ店で買ったと思われる、一粒数千円はしそうな大粒のマスカットを、優雅に口に運んでいた。


「んー、美味しい。やっぱ日本のフルーツはレベル高いわね」


 KAMI は満足げに指を舐めると、四人の男たちを見回した。


「で? また『ダンジョン作って』コール?

 しつこいわねぇ、人間って」


 彼女は、心底面倒くさそうに言った。


「結論から言うと却下よ。

 まだ早すぎるわ」


 その即答に、沢村が身を乗り出した。


「KAMI 様、早すぎるとは……?

 技術的な問題でしょうか? それとも……」


「データ不足よ」

 KAMI は冷たく言い放った。


「あのね、まだ一般開放してからたったの二ヶ月よ?

 あなたたちにとっては激動の二ヶ月かもしれないけど、私から見れば、まだ最初のテストプレイが終わった直後みたいなものなの。

 社会がどう変わるか、経済がどう歪むか、犯罪がどう増えるか。

 まだ『実験』が全然足りてないわ」


 彼女は空中に複雑なグラフを投影した。

 そこには、ダンジョン開放後の犯罪率の推移、精神疾患の増加率、そして貧富の差の拡大を示すパラメータが表示されていた。


「見て。日本のデータだけど、探索者による暴力事件は微増傾向。

 それ以上に深刻なのが、ダンジョン中毒とも言える依存症の増加。

 一攫千金を夢見て破産する者、現実社会に戻れなくなる者。

 こういう『社会的な副作用』が、長期間でどういう結果をもたらすか、まだ見極めがついてないの」


 KAMI は、マスカットの皮をさらに剥きながら続けた。


「言い方は悪いけど、あなたたち四カ国は『モルモット』なのよ。

 比較的統治能力が高くて、社会基盤がしっかりしてるあなたたちでさえ、これだけ混乱してる。

 今の段階でもっと不安定な国にダンジョンなんか渡したらどうなると思う?

 国が崩壊するわよ?

 災害スタンピードが起きたら?

 私が時間を巻き戻して『無かったこと』にすることはできるけど……」


 彼女は目を細めた。


「それは『健全』じゃないわよね?

 人間が自分で尻拭いできないレベルの力を与えるのは、ゲームバランスとして美しくないわ。

 だからダメ。

 最低でもあと半年、いや一年は、あなたたち四カ国でデータを取らせてもらうわ」


 神の判断は冷徹であり、そしてある意味で慈悲深かった。

 準備のできていない者に過ぎたる力を与えることは、祝福ではなく呪いになることを、彼女は知っているのだ。


「……承知いたしました」

 沢村は深く頷いた。

「我々としても、これ以上の混乱は避けたい。

 KAMI 様のご意向として、各国には『時期尚早』と伝えます」


「ええ、そうして。

 私のせいにしていいから」


 KAMI は気楽に言った。

 だが彼女はそこで終わらなかった。

 ただ拒絶するだけでは、不満が爆発することを知っているからだ.


「とはいえ」

 彼女は指先でテーブルを叩いた。

「完全に門戸を閉ざすのも可哀想よね。

 ガス抜きは必要だわ。

 ……そうね、探索者の受け入れ枠、もっと増やしたら?」


「受け入れ枠ですか?」

 トンプソンが反応した。


「そう。今は『観光ビザ』とか『就労ビザ』の延長で、ちまちま入国させてるみたいだけど。

 もっと大規模に、組織的に受け入れたらどうかしら。

 特に……そうね、『警察官』や『軍人』、あるいは『治安維持部隊』の受け入れを推奨するわ」


「警察や軍人……?」

 王将軍が眉をひそめた。

「他国の武力を我が国のダンジョンに入れるということですか?

 それは安全保障上リスクが……」


「逆よ」

 KAMI は笑った。

「彼らに『力』を学ばせるの。

 いずれ彼らの国にもダンジョンができる時は来るわ。

 その時、治安を守るのは誰?

 今のままだと、彼らの国の警察や軍隊は、魔物や暴走する探索者に対して無力よ。

 だから今のうちに、あなたたちの国で『研修』させてあげるの」


 彼女は、悪魔的な、そして極めて合理的なプランを提示した。


「『国際ダンジョン治安維持研修プログラム』とでも名付けて。

 各国の精鋭を招いて、ダンジョンでの戦い方、魔石の扱い方、そして何より『超人犯罪への対処法』を教え込む。

 そうすれば彼らは恩義を感じるし、あなたたちの国のやりスタンダードを学んで帰るわ。

 将来的に彼らの国にダンジョンができた時、その管理システムはあなたたちのシステムに準拠することになる。

 ……世界覇権を握り続けるための、良い布石だと思わない?」


 その言葉に、四人の指導者たちの目の色が変わった。

 なるほど。

 ただ拒絶するのではなく、彼らを取り込み、教育し、そして自分たちのシステムの信奉者にしてしまう。

 それは、ダンジョンというソフトパワーを使った、究極の同盟戦略だ。


「……素晴らしい」

 ヴォルコフ将軍が唸った。

「我が国の『冬の狼』ギルドで、途上国の兵士を鍛え上げる。

 彼らはロシア式の戦術と規律を身につけ、帰国後は親露派の将校となるだろう。

 実に……実に魅力的だ」


「アメリカもやろう」

 トンプソンも即決した。

「FBI や州兵の訓練施設を開放する。

『民主主義を守るためのダンジョン技術』を同盟国に供与するのだ。

 これなら議会も文句は言うまい」


 日本もまた D-POL や月読ギルドと連携し、アジア諸国の警察官を受け入れるプランを即座に構築し始めた。

 神の提案は、各国の国益と完璧に合致していた。


 ***


「さて、次の問題ね」


 KAMI はマスカットの最後の一粒を口に放り込むと、話題を変えた。

 その声のトーンが、少しだけ低くなる。


「……軍事利用の話よ」


 その一言で、会議室の空気が一瞬にして張り詰めた。

 ダンジョンの軍事利用。

 それは四カ国が最も熱心に、そして最も隠密に進めている、触れてはならない聖域だった。


「『オーブ』の火力アップについて、国連で問題視されてるのよねぇ」

 KAMI は空中にニュース映像を投影した。

 ニューヨークの国連本部。軍縮委員会の議場で、非核保有国の代表が演説している。


『――これは新たな大量破壊兵器の拡散である!

 たった一個のガラス玉で、旧式のライフルが戦車を貫く魔導兵器へと変貌する!

 この技術がテロリストや紛争地帯に流出したらどうなるか!

 国際的な規制と、オーブの流通管理を強く求める!』


 悲痛な叫び。

 だが、それを聞く沢村たちの顔には、苦渋の色が浮かんでいた。


「……正直、国連なんてどうでもいいと言いたいところですが」

 沢村が、日本の総理大臣としての苦しい立場を吐露した。

「我が国としては、どうでも良くないんですよ。

 平和国家としての建前、そして国際協調を重視する立場上、彼らの懸念を無視するわけにはいきません。

 連日、外務省には抗議の電話が殺到しています」


「まあ、そうでしょうね」

 KAMI は他人事のように言った。

「でも、止まらないでしょ? これ」


「……止まりませんな」

 麻生ダンジョン大臣(今回は特別参加している)が、開き直ったように言った。

「現在、日本市場における『富のオーブ』の価格は 15 万円前後で安定しています。

 この価格は、一般の探索者が手を出しやすく、かつ企業が大量購入するにも手頃な、絶妙なラインです。

 そして、その需要の半分以上は……」


 彼はトンプソンとヴォルコフをちらりと見た。

「……海外からの『大口買い付け』です。

 軍事転用目的であることは明白ですが、我が国としては『正規の商取引』として処理せざるを得ない。

 輸出を止めれば、オーブ価格が暴落し、国内の探索者経済が死にますからな」


 経済と軍事のジレンマ。

 世界中の軍隊が今、競うように既存兵器の「マジック化」を進めていた。

 M4 カービンが火炎弾を吐き、AK-47 が雷撃を放つ。

 旧世代の兵器在庫が、オーブ一つで最新鋭の魔導兵器へとアップグレードされる。

 それは、軍事予算を圧縮したい各国政府にとって、あまりにも甘美な誘惑だった。


「全世界の武器をマジック化したら、どうなることやら……」

 沢村が嘆息した。

「紛争の激化、死傷者の増大。……我々はパンドラの箱を開けてしまったのかもしれん」


 その悲観的な空気を、KAMI の乾いた笑い声が切り裂いた。


「あはは! 何を今更」

 彼女は楽しそうに笑った。

「あなたたち、まだ『マジックアイテム』ごときでビビってるの?

 そんなの序の口よ」


「……序の口?」

 トンプソンが怪訝な顔をする。


「ええ」

 KAMI は指を立てた。

「マジックアイテム(青色)は、付与できる魔法特性(MOD)が最大で『2 種類』まで。

『火炎ダメージ追加』と『命中率アップ』とか、その程度よ。

 所詮は量産品。兵士の個人装備レベルの話だわ」


 彼女は、悪魔的な微笑みを浮かべた。


「でもね、まだ上が残ってるでしょ?」


 彼女の手の中に、これまで見たことのない黄金色に輝くオーブの幻影が浮かび上がった。


「――『レアアイテム化』よ」


 レアアイテム。

 ゲーム用語で言うところの黄色イエロー装備。


「レアアイテムはね、最大で『6 種類』の MOD を持てるの。

 接頭辞プレフィックスが 3 つ、接尾辞サフィックスが 3 つ。

 この 6 つのスロットが全て埋まった時、そのアイテムは単なる武器を超えて、神話級の兵器になるわ」


 KAMI はシミュレーション映像をモニターに投影した。

 それは一発のミサイル――トマホーク巡航ミサイルに、レア化のオーブを使用した仮想実験の映像だった。


【ベースアイテム:巡航ミサイル】

【レアリティ:レア(黄)】

【付与 MOD(6 種フルスロット)】

 [爆発範囲拡大 +200%]

 [物理ダメージの 50% を火炎ダメージに変換]

 [物理ダメージの 50% を雷ダメージに変換]

 [投射物速度 +100%]

 [貫通性能付与(全ての障壁を貫通)]

 [分裂(インパクト時に 10 個の小型弾頭に分裂し再爆発する)]


「……これを使って撃ったら、どうなると思う?」


 映像の中でミサイルが発射された。

 それは通常の倍の速度で飛翔し、迎撃システムを無効化する速度で、目標地点――砂漠の実験場にある堅固な要塞――へと突入する。

 着弾の瞬間、閃光。

 だが、それは一度では終わらない。

 分裂した弾頭が広範囲に散らばり、それぞれが雷と炎の嵐を巻き起こす。

 要塞だけでなく、その周辺数キロメートルが、一瞬にして更地と化した。

 放射能汚染のない、しかし戦術核兵器に匹敵する破壊力。


「……やり過ぎでは?」

 ヴォルコフ将軍が青ざめた顔で呟いた。

「これでは核抑止力さえも無意味になる。

 通常兵器が戦略兵器に変わる……。戦争の概念が崩壊するぞ」


「そうよ」

 KAMI はあっけらかんと言った。

「レア化オーブ……『錬金のオーブ(オーブ・オブ・アルケミー)』って言うんだけど。

 これが実装されたら、世界の軍事バランスなんて紙切れ同然になるわね。

 空母だろうが要塞だろうが、レア化したミサイル一発で沈むんだもの」


「……そ、それはいつ実装されるのですか?」

 沢村が震える声で尋ねた。


「さあ? まだ未定」

 KAMI は肩をすくめた。

「E 級ダンジョンの深層か、次の D 級ダンジョンあたりで解禁しようかと思ってるけど。

 まだあなたたちには早すぎるかしらね。

 マジックアイテムでさえ扱いかねて大騒ぎしてるのに、レアアイテムなんて渡したら、本当に世界を壊しちゃいそうだし」


 彼女は、モニターの中の国連の演説を指さした。


「だから、今の段階で国連が騒いでるのなんて、私から見れば『おままごと』の喧嘩みたいなものよ。

 15 万円のオーブでガタガタ言ってる場合じゃないわ。

 本当に怖いのは、その先にあるんだから」


「まだまだやることは多いのに、今の段階で問題視されてもねぇ」

 KAMI はため息をついた。

「人間って、目の前の小さな変化には過剰に反応するくせに、本当に致命的な未来の変化には鈍感よね。

 ……まあ、それが可愛げでもあるんだけど」


 彼女は立ち上がった。

 今日の「神託」は終わったようだ。


「とりあえず、オーブの供給は続けるわ。

 マジックアイテムによる軍備増強は止められないし、止める必要もない。

 むしろ世界中に『魔法の武器』が行き渡った方が、拮抗して平和になるかもしれないわよ?

『銃を持つ市民社会』の国家版ね。全員が銃を持てば、誰も撃てなくなる……なんてね」


 その、あまりにも皮肉で、そして危険な平和論。


「じゃ、私は帰るわ。

 あ、そうだ。麻生さん、新しいオーブの実装準備、財務省の方で進めておいてね」


「それが出回り始めたら、本当の『軍拡競争』の始まりよ。

 楽しみにしてなさい」


 KAMI は悪魔的なウインクを残して姿を消した。


 後に残された四カ国の指導者たちは、モニターの光が消えた後もしばらく、誰も口を開くことができなかった。

 彼らは知ってしまった。

 今の「ダンジョン景気」や「マジック武器」の騒動など、これから来る巨大な嵐の前のさざ波に過ぎないことを。


 レアアイテム。

 6 つの MOD を持つ神話級の兵器。

 それが市場に出回った時、世界はどうなるのか。

 国家という枠組みは維持できるのか。

 それとも、個人が国家を超える力を手にする、混沌の時代が来るのか。


「……頭が痛い」

 トンプソンが心の底から呻いた。

「我々は核兵器のボタンよりも危険なものを、市場原理という名のルーレットに委ねようとしているのか……」


「……備えるしかありません」

 九条が静かに言った。

「KAMI 様がそれを実装すると言えば、それは必ず実装される。

 我々に拒否権はない。

 ならば、その衝撃に耐えうる社会システムを、今から構築するしかないのです」


 彼らの戦いは終わらない。

 むしろその難易度は、ダンジョンの階層が深くなるにつれて、指数関数的に跳ね上がっていく。

 神が用意した「エンドコンテンツ」。

 それに人類が到達する日は、そう遠くない未来に待っているのだった。



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― 新着の感想 ―
さっさと神の名の基に惑星統一政府にしちゃった方が良さそうな気がするけどw 人類VS人類の時代は終了 人類VS神(神と争うという意味ではなく)に集中しないと国の利益とか言ってたら人類滅亡するでしょ
アメリカや日本からオーブは流れているでしょうから国家間の戦争は減りそうではありますが、 問題は実際に使われる紛争地域やテロでしょうね。 核と違ってクリーンな分、躊躇うことなくぶっ放しそうです。 これ…
・4カ国は直接対峙出来ない ・4カ国の指導という名目で他国の軍備増強 ・シンパになればラッキー これ新たな冷戦の幕開けでは?
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