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恐怖の地底に放棄された男爵令嬢ですが、冷徹辺境伯様に実力を認められ専属錬金術師として保護されました  作者: 青空あかな


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第26話:危険を知らせる魔道具、《小型防犯ブザー:ビビー》

 保管庫に移動し、さっそく素材を探す。

 アース様も見学したいということで一緒にいらっしゃった。

 構造は単純なので、低ランクの物からでも十分に作れそうだ。

 すいすいと素材を選ぶ。



<鳴り石>

 ランク:C

 属性:無

 能力:強い衝撃を加えると大きな鳴き声を上げる石。



<シャイニー石>

 ランク:D

 属性:光

 能力:希少な光属性の魔力がこもった石。叩くとちょっぴり光る。魔力量は低いので希少価値は低い。



<電気草>

 ランク:C

 属性:雷

 能力:雷属性の魔力を持つ草。水に入れるとピリピリする。


 

 床に錬成陣を描き、素材を配置。

 呼吸を整えて準備完了。


「【錬成】!」


 錬成陣に魔力を込める。

 いつもの青白い光がぱぁぁっと輝き、新しい錬金魔導具が完成した。 



《小型防犯ブザー:ビビー》

 ランク:C

 属性:無

 能力:円形の凸部を押すと大きな音を出し、またランプが光って危険を知らせる。


 

 前世の家電量販店やスーパーでも売ってそうな、細長い長方形の防犯ブザー。

 丸とか色んな形があるけど、スリムな方がアース様も運びやすいだろうと思った。

 

「アース様、完成しました。赤がアース様で、黒が私のです」


 赤い方をお渡しする。

 面の端っこには円形のボタンがあり、強く押すと『ビビビビビッ!』と大きな音が鳴るのだ。

 ランプもつけてあり、片方のブザーが鳴ると黄色く点滅して知らせてくれる。

 その旨を説明すると、アース様は感心した様子で聞いていた。


「ふむ、慣れてなくても使いやすい魔導具だ」

「試しに使ってみますね……それっ」

『ビビビビビッ!』


 素材保管庫に歪な音が鳴り響く。

 今鳴らしているのは私の分だから、アース様の《ビビー》は光っているはず……。

 確認すると、チカチカと黄色く点滅していた。

 ホッとして音を止める。

 アース様は感心した様子で呟く。


「……なるほど、これほど大きい音ならすぐに気づくな。ランプの点灯でも知らせてくれるのは二重に安心できる」

「よかったです。ちなみに、アース様のブザーが鳴ると私の《ビビー》にも伝わります」

「……ん? そうなのか? 君の危険だけ把握できれば、それでよかったのだが……」


 一方通行ではなく、相互に応答できる設計にした。

 私もアース様に危険が及んだら、すぐに察知したい。

 なぜなら……。


「私にとっても、アース様はかけがえのない人ですから」

「……フルオラ」


 大事な人に危険が及んだら、私だって助けたい。

 アース様は何も言わず、私の目を見る。

 視線と視線がぶつかるも、なぜか吸い込まれるように動けない。

 情熱的な赤い瞳が……と思ったところで、どこからかにまにまにま……という不思議な音が聞こえた。

 な、なんだ?


「あの……アース様、何か聞こえませんか? にまにまと」

「……君はここで待っていなさい」


 途端にアース様は不機嫌そうな顔に代わり、保管庫の扉に向かう。

 勢いよく引くと、ドドドッとクリステンさんとワーキンさんがなだれ込んできた。


「……何をしている」

「いえ、何もしておりません。偶然、この場所にいたまででございます。聞き耳を立て扉の隙間から覗き、お二人の会話に胸をときめかせていたなど、まったくございません」

「俺だってそうさ、辺境伯様。偶然、扉の前にいたんだ。聞き耳を立てて扉の隙間から様子を窺って、二人の行く末を想像していたなんて、絶対にあり得ないから安心してくれ」

「要するに、自分の意志で扉の前で私とフルオラの会話を盗み聞きしていた、というわけだな」

「「違います」」


 アース様たちが押し問答していると、今度はルオちゃんが彼らの後ろからひょっこりと顔を出した。


『ママ、ルオちゃん参上……』

「ルオ君も今は屋敷にいなさい」

『何故……』

「なんでもだ」


 さらに不機嫌さが増すアース様。

 何はともあれ、お屋敷での楽しくて平和な毎日を象徴するような一場面だった。

 わいわいしているとあっという間に夜になり、その日も幸せな気持ちで眠りに就いた。

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