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裏切られた盗賊、怪盗魔王になって世界を掌握する  作者: マライヤ・ムー/今井三太郎
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24話 暗殺者、怪盗魔王を狙う

 今日もンボーンは元気に土やら岩やらを食べている。


「よう、ンボーン! 今日もよく食うな!」


 オオカミでひとっ走りしてきた親分が、巨大な黒山に向かって大声で叫ぶ。




 ンボオオオオオオオオオオン……




 元気な返事がかえってくる。

 鉱石があけた穴は、もうふさがりかけていた。


 それにしても大きな身体だ。

 これを何かに――。


 キースのスキル【戦術】が閃く。


「……なるほど」

「どうなさいました? 魔王様」


 ディアナの問いに、キースはニヤリと笑った。


「ちょいと面白いことを思いついたのさ」




………………。

…………。

……。




 アシュトラン帝国軍は、ロフテンコウスにおける会戦で、連合軍に敗北を喫した。

 その原因が、突如現れた魔王であると知って、皇帝は深いため息をついた。


 魔王は人間の宿敵。

 その矛先が、たまたま自分の軍に向いたのだと思えば、諦める他ない。

 しかし――。


「トリストラム王国が魔王の領地を国として承認しただと!」


 皇帝は高く据えられた玉座に座り、王杖で床を叩いて激怒した。


「魔族に魂を売りおって……人間の裏切り者が……!」


 トリストラム王国と魔王が組んだとなれば、話は違ってくる。

 あの戦いに現われた魔王は、トリストラム王国が差し向けたものかもしれない。

 いや、そうに決まっている。


「次の戦いを見越して、わが軍よりは連合軍を相手にした方が与しやすいと考えたな。だからわが軍を敗北に追いやろうとしているのだ」


 連合国よりもアシュトラン帝国の方が、トリストラム王国の王都に近い場所に国境を接している。

 攻めて来る敵が、遠ければ遠い方が良いのは当たり前のことだ。

 兵は生き物――長い距離を進めばそれだけ消耗する。


「向こうがその気ならこちらにも考えがあるわい……第13軍団長を呼べ!」


 アシュトラン帝国の第13軍団。

 これは軍団というにはあまりに小規模な、精鋭の集まりだった。

 要するに、暗殺部隊である。


 軍団の名を冠しているのは、帝国がそれだけ“暗殺”という手段を、政治的に重要な位置に据えているということだ。


 第13軍団の軍団長は、すぐに現われた。

 腰にレイピアを差した、鋭い目つきをした女だ。

 石畳の床の上で、足音も立てず玉座の前まで歩み寄り、膝をつく。


「陛下、ここに……」


 ここでトリストラム王国の国王を暗殺するのも面白い話ではある。

 しかし長く繁栄を謳歌してきた王国は、数多の人材を抱えていた。

 国王を暗殺しても、別の為政者が現われるだけで、問題の解決には繋がらない。


 ――しかし魔王国は違う。


 国としては新興である上に、その長が戦場のど真ん中に現われるような始末だ。

 長を潰せば崩壊することは目に見えている。


「アビゲイルよ、少し長旅をしてもらうことになるな……」


 皇帝の言葉に、軍団長アビゲイルは答える。


「陛下のご命令であれば、大陸を渡り切ってさえご覧にいれましょう」

「良い意気だ。それこそ我が第13軍団。では早速命令を与える」


 皇帝はもう一度、王杖で床を叩いた。




「……魔王を暗殺せよ!」




 その言葉に、アビゲイルは驚いた。

 魔王討伐は、勇者だけに可能とされているというのが定説だ。

 かつてトリストラム王国が大軍を送りこんだことがあったが、見事に大敗を喫したというのは有名な話だ。


「勇者でないものが果たして魔王を殺せるのか……そう考えているな?」

「そ……それは……」


 アビゲイルは冷や汗を流す。

 まさに今、頭にあったのはそれだからだ。


「安心せよ、調べはついておる。現魔王は……もと人間であるそうだ」


 皇帝は神経質そうな顔に、仄暗い笑みを浮かべた。


「勇者の魔王討伐後、即座に新たな魔王が現われたのもこれで説明がつく。所詮相手は化け物の皮を被ったただの人間だということだ」


 その言葉を聞いて、アビゲイルは顔を上げた。

 相手は人間――第13軍団に殺せぬ人間などいない。


「勇者など、所詮はまじない師の戯言。鍛え上げられた暗殺者が、そこいらの冒険者に劣るはずがないのだ」

「仰る通りかと……」

「では、迅速に排除せよ」

「仰せのままに……」


 その言葉を残して、アビゲイルの姿はかき消えた。


「くくく……勇者の伝説もこれで終わりか……まあ良い機会だ」


 アシュトラン帝国から見て、魔王国は敵国であるラデン公国を越えた先だ。

 ただ魔王を暗殺し、魔王国が崩壊すれば、その資源を連合国に接収されるおそれがある。


 しかし今回の侵攻によって、第13軍団は新たな行軍路を開拓することになる。

 それを利用して連合国の背後に素早く回りこめば、魔王国領の資源を回収しつつ敵軍を挟撃することができる。

 一石三鳥の作戦というわけだ。


「さて、これで勇者などというバカげたことを口にする者もいなくなるわけだ。力は伝説にあるのではない。今我が手にあるものを力と呼ぶのだ。そうではないか?」

「仰る通りでございます。そのお力こそ、大陸を統べるにふさわしきものかと存じます」


 くっくっと神経質に笑う皇帝へ向けて、家臣は深々と頭を下げた。




………………。

…………。

……。




 アシュトラン帝国第13軍団は実力主義。

 よっていちばんの戦闘力を誇るのはアビゲイルだ。

 今回の任務には、自分の力が必要だと彼女は考えていた。


 アビゲイルは城の中庭へ行き、訓練に励んでいる部下を呼んだ。


「ゼルキン、エラーダ!」


 投げナイフの訓練をしていたふたりは、すぐにアビゲイルのもとへと馳せ参じる。

 ゼルキンは筋骨隆々の大男、エラーダは均整の取れた身体をした女だ。

 しかし両者とも、甲乙つけがたい実力を備えている。


「皇帝陛下より命令が下った。お前たちを連れていく」


 どんなに匂いを消しても、人数が増えれば魔物が寄ってくる。

 魔物が集まれば、それを倒したとしても、暗殺部隊の存在が発覚する恐れがある。

 今回の任務に当たって、実行すべき人数は3人であるとアビゲイルは判断した。




「驚くなよ、なんと魔王討伐だ」




 ゼルキンとエラーダは顔を見合わせた。


「安心しろ。どうやら魔王とやらは人間だそうだ。我らに殺せぬ人間はいない、そうだな?」

「「ハッ」」


 ふたりは声を重ねて返事をした。


「では我ら第13軍団が、勇者とやらより遙かに勝っているということを証明してやろうではないか」


 敵地を潜り抜け、魔王を刺す。

 決して簡単な任務ではない。


 しかしそれをやり遂げられるだけの実力を、自分たちは持っている。

 それは疑いようのないことだ。




 ――その矜持が、暗殺者としての彼女の生命を終わらせることとなる。




 そんな運命を知る由もなく、3人は翌日未明、アシュトラン帝国城を出立した。




暗殺者が、キースの命を狙います。

キースはどうなってしまうのか!?


「面白いぞ」

「続き読みたいぞ」

「さっさと更新しろ」

「悪くないね(メガネクイッ)」


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表紙
― 新着の感想 ―
面白い!!!
[良い点] しっかりと軍団などの説明などができていて本当に内容も面白く素晴らしいと思います。 [気になる点] 早く小説の二巻が出ないかなーというところです。 [一言] 頑張って投稿してください
[良い点] ンボーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!んぼ [気になる点] ンボーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!んぼ [一言] ンボーーーーーーーーーーーーーーーン!!!! (悪くないね)…
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