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第25話 家族会議

本日2話目の投稿です!

日間ランキングに入りたくて必死です…笑


 俺と母さんはリビングのテーブルに座って親父の帰りを待った。


 リビングには少し重い雰囲気が流れている。


 俺の今後の人生に関わることを話すんだから、俺も母さんも真剣に考えて黙ってしまっている。


 そして、玄関の方から音がして、親父が帰ってきた。


「はっはっは! いやー、村の連中の喜びようときたら! 頑張って持って帰ってきた苦労が報われたぞ!」


 親父は王都から帰ってきて、村の人達に物資を配っていたので、良い気持ちで帰ってきたようだ。


 豪快な笑い声がリビングに響いていたが……俺と母さんの様子を見て、静かになっていく。


「ん? なんだこの空気? あ、そうだセレナ! お前が欲しいと言っていた背中のツボを押す道具! よくわからない形をしたマッサージのやつも買ってきたぞ!」


 親父は上機嫌に母さんに言われて買ってきたマッサージの道具を出すが、母さんは少し微笑むがまだ真面目な雰囲気である。


「……ありがとう、あなた。あとで使わせてもらうわ」

「あ、ああ……どうしたんだ? 何かあったのか?」


 さすがに親父も俺たちの雰囲気がいつもと全く違うことに気づいて、マッサージ道具を置いてテーブルのいつもの席に座る。


 俺の目の前に親父が、その隣に母さんが座っている状態だ。


「親父……大事な話がある」

「……そうか、なんだ?」


 俺の言葉を聞いて、親父も真面目に聞く体勢に入る。


「親父が連れてきた人達とさっきまで話してたんだ」

「ああ、あの騎士団の人達か」

「そうだ。今回の魔物の襲撃に関して聞かれた。そして……騎士団に、勧誘された」

「……騎士団に勧誘?」


 親父が俺の言葉を繰り返して、少し突拍子もない内容を驚く。


「俺が倒したフェリクスっていう男が結構強かったらしく、俺の強さを認めてくれて騎士団に入らないかって言われたんだ」

「……そうか、凄いことじゃないか」

「それで……俺はこの勧誘を受けて、王都に行こうと思ってる」


 俺が自分の意思を伝えると、親父は腕を組んで考え込む。

 母さんも隣で黙って親父の言葉を待っている。


「俺たち家族と別れる……ってわけだな」

「……今世の別れには絶対にならないと思う。まとまった休暇が貰えればこっちに戻って来れるとは思う」


 しかし、それでも一六年間も一緒に暮らして育ててもらった親と離れるのは、俺も辛いし親父や母さんも思うところがあるだろう。


「……俺や母さんが反対すれば、お前は行かないのか?」


 親父が俺を睨みながらそう言ってくる。


 親父は俺の覚悟を試しているのだろう。


「……いや、もう俺が決めたことだ。親父や母さんに反対されても、押し切ってでも王都に行く」


 それに応えるように俺も親父を睨みながら告げる。


 俺と親父はしばらくの間睨み合っていたが……親父が目を閉じてその睨み合いは終わる。


「そうか……そうじゃないと困る。反対されて行かないなんて言ったらぶん殴るところだったぞ。俺はお前をそんな軟弱者に育てた覚えはないからな」


 親父は少し笑いながらそう言った。


「それでこそ俺の息子だ。お前はもう立派な漢だ。自信を持って王都に行き、胸を張ってここに帰ってこい」

「親父……! ああ、ありがとう」


 親父が俺を認めてくれたことに、俺はとても感慨深いものを感じていた。


 前世では親父は俺たちを護るために死んだ。

 その覚悟、勇気を俺は死んで生まれ変わった今でも忘れていない。


 今世での魔物の襲撃、フェリクスとの戦いでも、親父は大きな傷を負い、ティナにすぐ治してもらったがそれでももうほぼ動けないほどダメージを負っていただろう。

 しかし、親父は俺とティナだけを心配して、身体にムチを打って死にかけてもなお戦場に戻ってきていたらしい。


 親父は本当に、漢の中の漢だった。

 前世でも今世でも変わらない。


 そんな漢に、俺は認められたのがとても嬉しく思う。


「母さんは何か言うことはあるか?」


 俺が心の中で感動していると、親父が母さんに話しかけていた。


 俺もその言葉を聞いて母さんの方を見る。


「そうね……本当はエリックちゃんが行くのは寂しいけど、他ならぬエリックちゃんが決めたことだから私は何も言えないわ」


 母さんは少し悲しそうに、寂しそうに笑ってそう言った。

 その顔を見て俺は心が痛んでしまう。


「ただ……エリックちゃん、死なないでね」

「っ! ああ……もちろん」

「いつでも帰ってきてね……エリックちゃんに、おかえりって言えるのを私は心待ちにしてるわ」

「……わかった」


 俺は母さんの優しさに涙がこぼれないように、我慢しながら返事をする。


 涙声になっているのかは自分ではわからない。

 もしかしたら、なってるのかもしれない。


 母さんは俺の返事を聞いて、いつもの優しい微笑みを返してくれた。



 ――本当に、村を救えて……親父と母さんを死なせずにすんで、良かったと心からそう思った。



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