92.それぞれの想い
そうと決まれば早い。
瞬間回復薬はゲームでも見た事のある、押し付けると針がでてプスッといくタイプだ。欠損した腕が、欠損した足が、ブクブクと肉が動き出て形成されていく。骨が出来て筋肉、血管までがどんどん付け根から造られていく。実際にみるとただのグロ映像であるが、みるみる治っていく。
「痛みもなくなった。やはり凄いな」
「これが……すごい……」
すっごい。さっきまで大変なことになっていた足が元の状態に戻っている。包帯が外れ、生足が顕になる。リンゼさん達は戻った感動で気にしていないが、結構な露出になっているため、トニーさん達、男性陣は目を逸らしていた。
私はそんなトニー師団長と目が合った。
「して、フリードよ。ウルフ殿でも構わない。先程、中断した話だ。単純な話、その子は一体誰なのでだ?」
あ、油断してた。みんなの視線が私に集まる。あ、私、自己紹介がまだだった。そりゃみんな誰だろうってなるよね。
「私はリリーナ・ランドルフと申します……5年前はノーステリア軍学校の生徒でした」
そういえばこうとしか言えないなぁ。所属とかまだなんにもないし。あ!?もしかして、まだ卒業してない扱いなんだろうか?留年!?だとしたら、生徒ですじゃん!?
「……彼女はクウィントンで行方不明になった学生です」
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side:アッシュ
リリーナがもう説明を終えるので、僕が補足する。びっくりしてるのは、自身では行方不明だと認識してないからだろうか?リリーナはちょっと変わった所があるからな。
「軍学校の制服を着ているからそうではないかとは思っていた。クウィントンでは後方支援に当たっていた軍学校生も被害があったことは聞き及んでいる。その学生が……」
「はい。そして遅延戦闘をしてくれたこと、この場を借りて感謝します。私がクウィントンから生き延びたのはその遅延戦闘のお掛けです」
スティーブンさんがリリーナに頭を下げる。リリーナは「いえいえ、そんな」とか言ってるが、あの時、僕らは逃げることしか出来なかった。そんな君を心から尊敬しているし、羨望もある、嫉妬はもうない、好意は……隠してる。
僕らのクラスは狂気の世代なんて呼ばれているらしい。その名前にはちょっと言いたい事もあるけど、その狂気の世代のリーダーである君が褒められると何故か僕も嬉しくてニヤつきそうになるんだ。堪えるけどね。
「それは素晴らしい。実に優秀な学生だ!だが、それなら生還して良かったとなる話だ。話はそれで終わらないぞ?眼帯!童顔の少女!敵兵が噂しているノウレアの【隻眼の死神】と特徴が一致する!極めつけに俺は見たぞ!その子があのギャップを一方的に追い詰める所を!」
トニーさんが興奮したように話す。
「最後のそれは……ちょっと私も詳しく聞きたいお話ですね」
何それ?それはまだ知らない。僕とスティーブンさんは昨日出発しているので、今日の戦闘についてはまだ情報が少ない。り、リリーナ、1日開けただけで君はまた活躍したのかい?
敵兵が話している隻眼の死神については、ノウレアの無事を確認した時点で指揮向上の元、参謀本部よりわざと広めるようにしたものだ。そこまではもう知っている。だけど、ギャップを一方的に?ギャップが現れた戦場は毎回酷いものだったと聞いている。先の戦争でも暴れてたネームドだよ?
あはは、もう堪え切れないよ……
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side:ローズ
「戦場にギャップが現れ、戦線が崩壊しつつあったため、リンゼ達が向かったんだ。だがギャップは……奴は本当に強かった。攻守隙がなく、近接も遠距離もレベルが高い。リンゼ達も、次に俺達もやられた。その有様はさっき見ただろ?そこから、トドメを刺される寸前、そこで彼女が現れたんだ。時間にすれば短い。圧倒してたからな。だが、そこのアランを助ける隙にギャップは逃げたんだ」
私も見てた。遠くて話声は分からなかったけど、私の場所からも何が起きているから見えてはいた。
……ただ凄かった。
私達が、いや、リンゼ師団長やトニー師団長でさえやられた敵を相手に、あの能力さえ対応していた。アッシュ君の説明で理解した。この子がノーステリアのみんなが言ってた1番強い子。
アッシュ君はトニー師団長の話に笑いを必死で堪えている。トニー師団長から顔を逸らしているから、私からだとよく分かる。
トニー師団長とスティーブン・ウルフ准将達が今日の詳しい状況の擦り合わせが行われる間、リリーナさんはあまり興味なさげに座っていた。こうして見ると本当に少女という表現になってしまう見た目をしている。
でも、私と同い年なはずだ。
「どうしたんです?」
チラチラっと見ていたら、リリーナさんに話しかけられてしまった。
「あ、すみません。軍学校制服だなと思いまして」
咄嗟にそう言い繕う。我ながら怪しいかもと思うそれに、それでもリリーナさんはきちんと返答してくれる。
「あー、服がこれしかなくてですね。あ、ちゃんと洗ってますよ?」
5年前からノウレアで物資が少なかったのは容易に想像できる。
「リリーナさんはアッシュ君達の同級生なんですよね?」
「そうですよ。えっと、ローズさん?はアッシュと知り合いですか?」
「あ、はい。軍校戦で交流があったので、その時に」
「ぐん、こう、せん?」
「あ、3校ある軍学校同士の交流戦みたいなものです。8、9年生が参加するんです。同い年なので、2回は会ってるんです」
「な、な、な、なんだと!?めっちゃ面白そうなイベントが……私逃したの!?……ショック……」
分かりやすく凄く落ち込んでいる。話してると普通の子だ。
「あ、てか、同い年なら、敬語なんていらないよ!」
「で、ですが、階級が多分……」
「あー、多分ね。私、今、無職……」
え?
リリーナの恋愛センサーが正しい訳が無いのだ。
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