89.違う、こうじゃない
side:アラン
南の戦場、ノードよりアルステリア本陣側へ進んだここは起伏があるため隣の戦場は見にくい。だが、塹壕地帯を抜けているため遮蔽物はほとんどなかった。俺たちの傍に木があるだけだ。リリーナと俺はギャップと20mほどの距離で相対している。俺達の目の前のギャップがこんなにエロ……ゔぅん…ヤバい奴だったとは……
奴の噂は何度も聞いている。残虐性の高い性格。奴の荒らした戦場には拷問の痕のある兵士の遺体が大量に確認されている。
その能力の詳細は不明であり、神出鬼没に動き回るという情報だけだ。こうして相対すると分かる。全ての所作から殺気が出ているような、何かしそうな、そんなヤバさが伝わってくる。
「おいおい、小娘ちゃん、ここは戦場だよぉ!?何しに来たの?迷子って訳じゃないだろぉ!?あ!分かったぁ!オモチャが自分から来てくれたのかな!?」
「はぁ〜、違う……」
リリーナが頭を抱えながら、ため息を吐く。
「アハハッ!オモチャじゃないってか!?無理だよぉ〜!ざんねーん。こんな所に来た時点で君の運命はオモチャに決定でーす!アッハッハッ!」
やっぱり、やべぇやつだ!色っぽい見た目してるが、見た目はとってもいいが……中身は腐ってやがる!平気で、ただ自分の快楽のために拷問する。この目の前の女はマジでやる奴だ。
「ダメダメ。今の君はダメだ。その性格は小さい子だったから許されてたんだよ。大人になったら落ち着いていて、実は昔……みたいなのが………はぁ……もう、それ以上口を開かないでくれ。アランさん、思い出って……思い出のままの方がいいことあるよね」
「え?」
なに?急に俺?ってかリリーナは何を言っているの?そんなに首を振って、凄い表情してるよ?なにがショックだったの?
「例えばさ、子供の頃に離れ離れになった好きな子に、10年以上経って再開した時、その子がちょっと残念な感じになってたらどう?」
「どう?って、君が行方不明だったのはそもそも5年じゃ?」
本当にさっきから何を言っているんだ??
「おい!オモチャの分際で無視してんじゃねぇぞぉ!?」
ほらー!怒っちゃったよ!?能力も分かんないネームドが怒ってるんだよ!?
「ギャップの能力は空間を繋げる窓を創る!足元にも作成可能で、1度に3セットだが、サイズ次第で数が変わる!途中で窓が閉じると切断されるぞ!気をつけろ!!」
あれは第3師団長のトニーさんだ。そんなに能力を解析したのか!?酷い怪我をしている。
「あっれぇー、まだ話せたんだぁー。無理無理!どうせすぐに終わるから、みんな纏めて可愛がって、あ、げ、る」
「おぉ、血だらけのおっちゃん生きてた!?すぐ治療すれば間に合うかな」
「さっきからカーラちゃんを無視してんじゃねぇよ!」
ババンッ!
うお!奴が撃ってきた。俺達はシールドで防ぐ。いや……リリーナも既に発砲していた。ギャップの隣の敵兵はシールドを張る間もなく眉間を撃たれている。そういえば、フリードさんから聞いただけで、ちゃんとリリーナの戦闘を見るのは初めてだ。さっきの分隊もだけど、リリーナの射撃は正確で早い。俺はシールドにしか手が回らなかった。
ここにくる道中は俺の能力【シャドウ】で飛びながら来ている。俺の能力は影から影を移動する能力。移動する影は視界に抑えなきゃ行けないが、戦場ではかなり厄介な力だと自負している。
だが、さっきのトニーさんの話だと、ギャップの能力は完全に俺の上位互換じゃねぇか!やべぇぞ!
とか言ってる間にリリーナが、飛び出していく。
「アハハッ、真っ直ぐ突っ込んで来るとか、馬鹿じゃーん」
奴がリリーナに向かってハンドガンを発砲する。リリーナはシールドでガードだ。と思ったらシールドを張りながら横に跳ねた。するとリリーナが真っ直ぐ進んでいたら突っ込んでしまう位置の地面に空間を切り取ったような窓が出現する。あれが窓か!?
「ッん!?」
ステップしたリリーナはそのまま真っ直ぐ走る。
早いッ。速攻でギャップとの距離が縮まる。ギャップが驚いたように、また窓を出現させる。しかし、リリーナはまるで出現場所が分かっているかのように、サイドステップで躱し、走る。もう目の前に辿り着いてしまった。
「なんだてめぇ!?」
あのギャップが狼狽えている。
「せめて私の手で終わらせてあげる」
暗い表情のリリーナは何か異様に映る。
「死ねッ」
ギャップがリリーナへ至近距離で発砲する。が、リリーナはその銃を掴み、その腕を起点にして身体を滑り込ませて、ギャップを投げる。リリーナの足元に窓が開いていたが、ジャンプして躱しつつ投げたのか!?逆にギャップが窓に落とされそうになり、窓を閉じる。当然、地面に戻った場所へ叩きつけられた。
「ぐあッ!」
今度は投げ終えたリリーナが足元のギャップへ発砲する。素早くシールドが張られギャップは身を守る。しかし、リリーナはそのまま乱射してシールドを破壊しにかかる。割られそうになったギャップは自分の下に窓を創り、逃げた。
ん?リリーナは直ぐに反転して、リリーナの背後2mくらいの位置から出てきたギャップをぶん殴る。
「オェッ!?」
油断したギャップは思い切り鳩尾に食らったようだ。俯瞰している俺だから見えたが、リリーナには見えてなかったはず。何故分かる?リリーナは追撃を緩めない。ギャップを殴り、蹴り飛ばす。銃弾だけはギャップがシールドで何とか耐えているため致命傷にはなっていないが、あのギャップを圧倒していた。
「でめぇ!ぐぞがぁぁあ!!ゔぁぁあッ!」
口や鼻から血を出しながらギャップが怒り狂ったように叫ぶが、リリーナは気にすることなく、ナイフで肩を突き刺した。
「なるほど、だんだん分かってきたよ、そのカラクリ……これかな?」
リリーナが痛みに悶えるギャップの胸元に手を突っ込んで、ネックレス?を取り上げた。
「ぁッ!!」
すると怒りに染まっていた、ギャップの表情が曇る。
「アハハッ!顔に出てるよカーラ……」
笑うリリーナにギャップの顔に明確に恐怖が刻まれたようだった。
「じゃあね」
リリーナが銃を構え撃……あれ!?俺は浮遊感を感じ、地面が近付き、視線の上に消えていく。
理解した時には先程の上空に放り出されていた。
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