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王子様を合法的に殴りたい 連載版  作者: 小林晴幸
山だ! 悪魔だ! 聖獣だ!?
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それぞれの使い魔3

さてさて、使い魔斡旋も残すは半分。

次なる犠s……挑戦者は!?


a.小聖獣

b.フェアリー

c.サンダーバード(※人形劇に非ず) ⇒黄三郎

d.ジェリーフィッシュ的なナニか ⇒オリバー

e.蛇

f.森のくまさん ⇒エドガー

g.サイクロプス

h.山椒魚



 さて、使い魔斡旋も残すは三人。

 青次郎と桃介、それからナイジェル君だ。

 ……微妙に不安を感じる面子だなぁ。


 そういえば青·黄·桃の三王子は前世でやった乙女ゲームでも使い魔をゲットしてたはずで。

 確か組み合わせは、黄三郎が鷹サイズの猛禽で白地に金色って派手な感じの……ん?

 ……確か雷で攻撃する感じの……んん?

 

 私はとっくりとルーシーを見た。

 まるい、でかい、きいろいと三拍子そろった雛鳥だ。

 うん、別種の鳥だな。

 いくらなんでも、雛の方が親鳥よりデカいってことはないだろう。むしろゲームの鳥の上位互換っぽい。

 ふふ、ゲームと被るって凄い偶然!

 ……な、訳はないよな。


 聖獣いわく、相性のいい魔物や幻獣を呼び出してるってことなんだから。

 ゲームの使い魔と近いもんが出てくるのも、ある意味で当然なのかもしれない。

 仲介という形で間に聖獣を挟むので、それもバージョンアップする形で。


 ふと、私は班員達の方を見た。

 具体的にいうと、海月に纏わりつかれるオリバーと、若頭の肩を揉むエドガーを。

 おいおいオリバーの体にくっつく海月が天女の羽衣っぽくなってんぞ。

 あとエドガー、お前のそのぶっとい指、マッサージも相手によっちゃ痩身どころか粉骨砕身だからな? 気をつけろよ?


 ……ええと、何の話だったか。そうそう!

 もしかすると他の王子二人も、ゲームと近いイキモノが使い魔になるかもね☆


 その肝心の使い魔ってどんなんだっけ。

 確か『お姉ちゃん』にスチルってやつ見せてもらったんだけど、確か青次郎が何の捻りもなく青い蛇で、桃介が虫翅の生えた手の平サイズの女の子だった気がする。こう、絵本に出てくるティンカー・ベル的な。

 ……上位互換、出るか!?

 青次郎の蛇とかカラスヘビをそのまま青くしたようなヤツだったし、青いニシキヘビとか出ないかな?

 ちょっと、期待がふつふつ湧いてきた。


「という訳で、お次は青次郎でいってみよう!」

「どういう訳だ!? 納得の行く説明をしてもらおうか!」

「やだよ、面倒」

「説明する気すらないだと……?」

「とにかくつべこべ言わず、逝ってこい」

「今なんか、妙なニュアンスを含めなかったか——!?」


 ちょっと勢い余るくらいの強さで、私は青次郎をゴ・リラ様の前まで押し出した。

 つんのめる青次郎。

 それでも即座に取り繕ってすっと背筋を伸ばして立てるあたり、体幹が王子様って感じ。

 緊迫感に、勝手に一人で息を呑む青次郎。

 そんな青褪めた青次郎を見て、ゴ・リラ様が召喚(斡旋)したのは。


 しゅるり。


 まるで衣擦れみたいな、ささやかな音。

 しゅる、しゅると青次郎のローブの上を這い上がる。


「よ、良かった……! まだマトモな部類だ!」


 青次郎がお迎えしたのは、水の蛇だった。


 もう一度、言おう。

 その身体を水で構成した、水の蛇だった。

 青みがかった透明な体の中で、流動的に泡が浮かんでは消えていく。

 ちなみにサイズは全長十㎝。

 ……ちっさ!

  

 小さい水蛇が、青次郎の足からするする這い上がって肩の上に落ち着く。

 サイズ感はややミニマムな感じはするものの、使い魔としては青次郎曰く真っ当な部類とのこと。

 小さいけど、幼体って訳じゃないよね?

 いやでも、黄三郎がヒヨコ引いてっからなぁ。蛇の子だったりするのかしら。


「彼の名はそうだな……この知性感じる瞳はどうだ。顔立ちも凛々しいじゃないか。これは相応しい名前を真剣に吟味しなければ」


 そうして実際にお迎えするまで気を張っていた反動だろうか。

 覚悟を迫られるような際物系じゃなかった事に安堵してか、早くも青次郎に飼い主馬鹿の片鱗が見え始めている。おい、クールな冷静沈着キャラの面影はどこ行った。周囲に花飛ばす勢いで浮かれてっぞ、こいつ。あ、花っつっても薔薇みたいなヤツじゃなくって、幼稚園児がクレヨンで画用紙いっぱいに描くような、五枚花弁のデフォルメ極まるシンプルなヤツな。

 私が言う事じゃないかもしれないけど、青次郎や。

 使い魔(ペット)は可愛がるだけじゃ駄目だぞ。

 いくら可愛くったって、躾が肝心なんだからな——!


 ほっと安堵した様子で、出会ったばかりの使い魔を愛で始めた青次郎。

 爬虫類はどうやら平気な様子。普段、挙動不審にビビってるところをよく目撃するので、なんとなく爬虫類とか苦手そうな気がしていたんだけど……意外だよね。


 っていうか、水の蛇か。

 ……サイズは十㎝、か。


 ………………ちぇっつまらないの!

 もうちょっとイロモノめいたものを期待したとは、青次郎には言わない方が良いかな。



 さあ、青次郎も使い魔をゲットした。

 残りは二人、ナイジェル君と桃介。

 そうか……この二人が残ったのか。

 それじゃあどちらから行く?

 聞こうと思ったけれど、もう相談は終わっていたらしい。


「ディースが無難なのを引いたからね。チッ」


 億劫そうに髪を掻き上げ、忌々し気な舌打ちを漏らす桃介。

 その反応、さては青次郎がどんな使い魔を引くかで順番賭けてやがったな。


「桃介、猫被るの忘れてますわよ! 人目がなければ舌打ちもすんだろーけど、猫被りバレしている私以外にも色々いるんだが」

「この面子を前に今更取り繕う気なんて起きないよ。既にバレてるのに、敢えてわざわざ外面で接するとか無駄じゃない」

「おぅ、開き直っていらっしゃる」

「僕、実にもならない愛想の無駄遣いって嫌いなんだよね」

「いっそ清々しいな、こいつ」


 しかしそんな桃介も、何かが精神的に強い影響を及ぼしたのか。

 ゴ・リラ様を見ると一瞬ビクッて肩が跳ねるんだが。

 これ、トラウマになってんじゃね?

 何がトラウマになったのかはわからんがな!


 心持ち、ゴ・リラ様から僅かに視線を逸らしながら。

 それでも意を決した風に進み出る桃介。

 さっき、か弱さを理由にゴ・リラ様から全力で庇護されてたからなぁ。

 その反応はゴ・リラ様が傷つくんじゃない? って思ったんだけど……ゴ・リラ様、全く気にしてないな! 桃介の反応とか!

 桃介の顔を見て、一層優し気に微笑み。

 そしてゴ・リラ様は(のたま)った。


『どうやら貴方と相性のいい魔物は、妖精系統のようです』


 やっぱりティンカー・ベルですか。

 妖精ですか? 妖精なんですね?

 ……果たして気になる、そのサイズは!


 私はちょっぴりウキウキわくわくと、桃介がどんなブツを引くのか見守っていたんだけれども。


 しかしここで、ゴ・リラ様の依怙贔屓が炸裂した。


『どうやら貴方は特別か弱い個体のようですね』

「え、余計なお世話なんだけど」

『貴方の身を守るのに、一般的な妖精では力不足でしょう。そこで、この森に置いて妖精達の頂点に位置する者に、話を通しておきました』

「余計なお世話なんだけど!?」

『今後は()が貴方を守るでしょう——』


 そう言って、ゴ・リラ様がぶっとい腕を一振り。

 その動きに合わせ、桃介の前に光が現れる。

 徐々に弱まる、小さな光——その中から、現れたものは!


『ご紹介しましょう。この森で妖精の頂点に君臨する——フェアリー・ゴッドファーザーです』

「マザーじゃなくて!?」

『フェアリー・ゴッドファーザーです』


 フェアリー・ゴッドマザーだったら、私も知ってる。

 シンデレラとか、西洋の昔話で主人公に助力してくれたりするお助け妖精だったと思う。

 だけどそれはゴッドマザー。

 マザーとファーザーじゃ同じ『名付け親』でも受ける印象がガラリと変わるような……

 特に、アレじゃん? その単語ってマフィアのボスとかそんな意味も含まれてんじゃん?


 にわかに、桃介の使い魔への期待が膨らんだ。


 光の中から出てきたのは、桃介の手のひらにちょこんと収まるような小さな人影。

 背にはきらりと光を纏いながら伸びた、飴細工のように繊細な蝶の羽。

 まるでリュウキュウアサギマダラの羽みたいだ。

 そんな美しい羽を持つ、人影。

 確かにシルエットは妖精なんだが……私は好奇心を抑えられず、桃介ににじり寄る。

 自分の手の中……手に乗る『使い魔』を見た桃介は、どうも硬直しているようだ。

 だから私は桃介の肩越しに、そっと手を見る。


「……ごきげんよう」


 思わず自分から、挨拶してみた。


 これゴッドファーザーはゴッドファーザーでも……『名付け親』じゃなくって『マフィアのボス』の方じゃん!

 そこには、重厚な空気を纏う渋い初老のオッサン妖精がいた。

 いや、この風格を前にオッサンと称するのも失礼だな。

 渋い、人相悪めの小父様妖精がいた。アレですね、ロマンスグレーってヤツですね。

 なんか部下への指示だけで軽く二桁の人間を死に追いやっていそうな見た目をしていらっしゃる。


 エドガーのセオドアは、ヤクザって感じだった。

 任侠とか極道とか、そういう単語を連想する……タバコが似合いそうな熊さんだ。

 しかしこっちの妖精さんは、まさにマフィアやギャングって言葉が似あう。

 煙草よりも葉巻と硝煙の匂いが似合いそうだ。


 というか、なんでヤクザとマフィアを取りそろえた。


 ゴッドファーザーは自分を手に乗っけたまま硬直する桃介を見上げ、ひょいっと肩をすくめた。

 そのまま桃介の指の一つに足を組んで腰掛け、ニヒルな笑みを浮かべている。

 これは桃介を正気に戻してやった方が良いな。


「てぃっ☆」

「い……っっったぁ!!」


 とりあえず、チョップで覚醒を促してみた。


 その後、自分の使い魔にビビりまくった桃介が、顔を引き攣らせて項垂れている姿が見られた。

 なお、使い魔への名付けは悩みに悩んで……『ボス』になったらしい。


 私が言うのも、なんだけどさ。

 桃介、使い魔の名前それで良いのか?




さてさて、最後の一人はナイジェル君ですよ。


a.小聖獣

b.フェアリー           ⇒桃介

c.サンダーバード(※人形劇に非ず) ⇒黄三郎

d.ジェリーフィッシュ的なナニか  ⇒オリバー

e.蛇               ⇒青次郎

f.森のくまさん          ⇒エドガー

g.サイクロプス

h.山椒魚

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― 新着の感想 ―
[一言] >渋い、人相悪めの小父様妖精がいた。アレですね、ロマンスグレーってヤツですね。 やったねW 大当たりだよW(視線を逸らす) あかん。 あかん。 1000単位の殺人・…
[良い点] 流石ゴリラ様だ!桃介にバッチリ似合うな!こうなってくるとナイジェル君が何を得るのか気になるな…… [気になる点] 桃介がゴッドファーザーに何か頼む時は『やっちゃってください、ボス!』ってな…
[一言] サイクロプスと山椒魚…………… 山椒魚かな?(色物狙い)
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