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定期イベント:悪夢の寝起き☆ドッキリ大作戦 ~青二郎編2~



 下手な変装で正体を隠した(つもりの)セリアン氏。

 本当に隠す気があるなら、せめて髪の色くらい変えてこい。

 たぶん、自らの手で青二郎をぎゃふんと言わせたかったんだろうな……心意気は察する。

 赤太郎も微妙な顔をしていたが、正体に言及する気はなさそう。さっき、私が青の国兄弟の怨恨物語を語ったからだろうか。

 桃介は深く考えずに何かを言いかけて、赤太郎に口を塞がれていた。

 セリアン氏はそんな赤桃ペアの普段と比べると無惨な変わり果て具合をとっくりと眺め、感情を抑えながらもワクワクを滲ませて私達を青二郎の部屋へと促す。


「これは期待が膨らみますね。さ、どうぞこちらへ?」


 懐から出した鍵は、青二郎の侍従から奪ったのか。よく見ると隅っこのほうで、青二郎のいつもの侍従さんが困り果てた顔をしていた。うん、相手が第三王子なら逆らえないよね。鍵も差し出しちゃうよね。長いものには巻かれろって言うもんね。


 そうして促されるまま、入った先はまだ薄暗い寝室。

 奥に鎮座する寝台に、のっそりと身を起こす影……。

 それを見た仲間達が、ひそひそと囁き交わす。


「タイミングが遅かったんじゃないか……?」

「あれ、もう起きてね?」


 そう,青二郎は既に寝台の上で身を起こしていた。体を前後に揺らし、目を虚ろな半開き。そしていつもは隙なく整え流している髪は寝乱れてアホ毛が立っていた。半分目が開いているが、逆に言うとまだ半分目が閉じている。その姿が放つ雰囲気は、遊び疲れて食事中にフォークを握ったまま、いきなり寝落ちしちゃう幼子に似ていた。

 ……セーフ!!

 一瞬、私も「やべ、出遅れた?」って焦ったけどセーフだ! やったね!

 青二郎は、どう見ても、覚醒前の有様でした。

 下調べしたところによると、青二郎は「極端に朝が弱く、体より頭の覚醒が遅いタイプ」。目覚めたように見えても、身を起こしたらそこからが遅い。半覚醒状態でずっとぼーっとし続けるやつだ。つまり寝ぼけている。果てしなく、ずっと、いつまででも寝ぼけ続けている。

 普段はこの状態から、侍従の涙ぐましい努力により遅刻しないように覚醒状態まで運ぶらしいが。

 その侍従はいま! 逆らえない圧倒的上位者:第三王子により抑えられている状態だ。

 ふはははははは、最早、誰もお前をただでは起こしてはくれんぞ青二郎。逃げも隠れもできんなぁ。何も知らないまま、私達の(ドッキリの)餌食となるが良い!

 

 ……正直に言おう。

 無防備でされるがまま状態の木偶の坊な青二郎に、さーて悪戯しほうだいだっぞー☆とテンションが爆上がりでした。

 今まではうっかり起こさないよう、声とか色々抑えていたけれども。青二郎は体は起きてるけど意識が遠いお星さまの彼方状態。むしろ起こすのに苦心するという前情報があるので、声やら何やらに配慮する必要は薄い。行動の自由度が上がり、気分は上々だった。


「よーし、やりたい放題だぞー☆」

「やりたい放題……なんて心躍る言葉だろうか。たった六文字の言葉にここまで心惹かれたことが今まで他にあっただろうか。否、ない」


 冷静ぶって表情を取り繕ってはいるものの、どうやら第三王子はうきうきが隠せない様子。若干声がワクワクしているし、セリフは若干どころでなくワクワクしている。そして姿勢は前のめりだ。主の命で様子を見に来た侍従という体裁どうした。参加する気満々じゃないか。


「それじゃあ定番の、顔面落書きとお着替えから始めましょうか!」

「着替え……!」


 なお、計画を詰めるために書簡でやり取りをしていた際に計画案を提出しているが、お着替えの際にどんな格好をさせるか要望を尋ねたところ、第三王子からは達筆で力強く『女装』と一言お返事をいただいている。

 今回はそんなご要望にお応えして、青二郎の寸法で女物の衣装を準備してある。

 前世の絵本で……具体的に言うと『赤頭巾』の絵本でおばあさんが着ていたような、女物のネグリジェを……


「ああ、そういえば主より言付けが。なんでも第二王子殿下を女物の寝間着に着替えさせるつもりだとか? 主より『是非こちらを使ってほしい』とのことで、荷物をお預かりしています」


 そう言って、セリアン氏が懐からぴろんと取り出したもの。小さく折り畳まれていたが、左右の肩紐の部分だけをセリアン氏が持っていたため、取り出されると同時にふぁさっ……と広がる。

 それは薄くて、透けていて、ヒラヒラの……


「……下着?」


 思わずといった、誰かの呟きが無駄に響いた。

 部屋の端っこで、青い顔をした青二郎の侍従さんがガタガタとマナーモード状態で震えている。


「え、あれ下着じゃん……」

「うわ……マジでえっちな下着なのでは?」


 私、あれ知ってるー。

 確かベビードールって言うんでしょー?


 前世で、お姉ちゃんにつきあわされて行った下着屋で見たことあるわ。初めて見た時、なんでこれスケスケなの?ってお姉ちゃんに聞いて口塞がれた記憶がある。セットでマネキンにディスプレイされていたパンツは背面が紐ならサイドも紐だったな……。両脇のちょうちょ結び解くと、あれパサッて床に落ちるんだ。

 

 これを、青二郎に着せちゃうの?

 整った顔してるから、絶対に似合わんってことはないかもしれないが……うん、率直に言って、地獄だな? 特に下半身。イロイロなものが、ポロリじゃすまんぞ。

 この一連のドッキリ動画、女性だって目にするんだぞ。主に各国の王妃様(各王子のお母様)が。

 そんな高貴な方々になんてものを見せようとしてるんだ。お目汚しにも程があるだろ。劇物じゃん。

 そんでもって私も見たくない。

 おい、一応これでも、私は年頃の乙女なんだぞ? そこら辺は配慮しろ配慮。


「服飾文化の進んだある地方より、第三王子殿下直々に品を手に取り、熟慮の果てに選んで購入した逸品です。お色の方は第二王子殿下の肌、髪、目の色と調和するよう紫をお持ちしましたが、他に白と黒も取り揃えてございます」

「絶対着せてやるって意気込みを感じるわ……想像以上に恨みが深いな」

「勿論、お選びになるのは計画実行者である皆様ですが、選択肢に含めた上でご検討ください」

「でもこれ、野郎に着せると相当えぐいよ? 乳バンドとパンツも装備させんの?」

「いえ、そこまで徹底すると逆に視界の暴力過ぎて第三王子殿下もしんどいし、誰もやりたがらないだろうとのことで……下半身のみ、そのままでも可とのことです。完璧主義を発揮して女性用のものに取り替えていただいても構いませんが」

「誰が履かせるんだよ……」

「ですよね」


 野郎に女性用セクシーランジェリー(下)を履かせる。この一文だけで、なんか精神への打撃を感じる。これが言葉の暴力か。

 セリアン氏も流石にそこまでは望めない……というか強固に主張して、自分がやらなきゃいけない羽目になることを恐れたのか。そこは素直に引き下がっていただけるようだ。ベビードール三種を持ち込む男なんで無駄な完璧主義を発揮されてしまうのでは、と密かに誰もが戦々恐々としていた。流石に胸を撫で下ろしたわ。

 でも乳バンドはつけるの? それともつけなくて良いの? 下半身事故は防いでいいって言ってたけど、そこは言及なかったなぁ。


「それから顔面への落書きですが、よければこちらをお使いください」

「これは……どっからどう見ても、紛うことなきメイクボックス!」

「是非お使いください」

「これを使ったら落書きじゃなくてメイクアップなんだよなぁ」

「まずはこちらの拭き取り用洗顔剤で汚れを落とした後、肌を整える為の化粧水、乳液はこちら。下地を兼ねたクリーム、白粉。パウダーは真珠の粉を混ぜ込んだものを用意いたしました」

「お、おおう……」

「シェーディングにチーク、ハイライトは肌の色味に合ったものを。第二王子殿下はブルーベース冬タイプなのでおすすめのアイシャドウと口紅は……」

「もう君がメイクしなよ」


 私達がやると、多分酷いことになるから。


 それはそれでまあ、青二郎への弟くんの意趣返しとしては良い味出すかもしれないけれども。


 セリアン氏が容器を一つ一つ指さしながら何か言う度に、野郎どもの腰が引けていく。

 エドガーとヒューゴが一番ドン引きしていた。多分、レディシルバーの衣装合わせの時に軽〜く化粧された記憶があるせいだろう。

 あの時は他に化粧の知識がある奴がいるはずもないんで(いたら怖い)、私が彼らに化粧を施したんだよなぁ。熟練の侍女みたいなプロの技はないけど、これでも一応、令嬢の端くれ。否応なしに、仕方なく、どうしても避けようがなく渋々ドレスアップしなくちゃならん場面が年に数回ありはする。その際に顔面塗りたくられるので最低限の化粧はできるのだ。本当に最低限のお手軽手抜きメイクだが。

 エドガーはさておき、ヒューゴの方は私程度の腕前による軽い化粧でも美女の仕上がりだった。元の素材がとびきり良いから。なお、本番では女教師に助っ人に来て頂いて、もっと本格的にまともな化粧をして頂く予定である。

 エドガーは言葉遣いと仕草は淑女そのものだけど、別に淑女(レディ)になりたい願望とかがあるわけじゃないらしいからなぁ。一見してムキムキごついオネェに見えるだけで。ヒューゴは言うに及ばず。

 しなきゃならんなら仕方ないから化粧されるけど、化粧の手順に関心はない。第三王子が次々に取り出す瓶やパレットに、数カ月後の我が身が被る被害を予見したのか、凄まじく苦虫を噛み潰したようなご面相になっていた。

 フランツとかは器用なタイプなんでふんふんとちょっとだけ興味深そうだったけど。こっちはこっちで、多分、劇の時にエドガーとかの支度を手伝う可能性を考えて予備知識を蓄えようとしているな?


「それにしても、化粧お詳しいんですね。セリアン氏」

「まーな。こっちはこのクソ兄上のお陰で十余年に及ぶ女装のキャリアがーーハッ」

「女装のキャリアが?」

「……い、いえ、我が主がそう仰っておいででした。私も殿下にお仕えする身、苦行の際にはお側近くに控えておりましたので、その縁で知識を有するに至った次第でございます。ええ、ハイ」


 おーい、ボロが出てんぞ第三王子。

 焦りと誤魔化そうって必死さとで、後半めっちゃ早口だったわ。

 口を閉じて有耶無耶にしようってか、私達から目を逸らし、いそいそ青二郎の顔面に何か塗りたくり始めるし。


「わあ、凄い丁寧に念がいってる」

「ふふふ……『隠された謎の美少女』『秘匿された双子説』『第三王子じつは王女説』」

「なんですの、それ」

「青の王宮で密かに囁かれてるんだよ。声変わりに至ってやっと収まってきたけど……噂を真に受けたやつとか、女装姿を偶然見たやつとかから、こう、縁談がな……? 嫁入りなんぞできるわけねーだろうが! 俺は男なんだよぉ!!………………と、我が主が」

「そっか、大変だね。第三王子」

「なるほど……不本意だが、少しわかるな」

「あ゛? 安易にわかるとか何言って……」


 セリアン氏の言葉に、何かしら共感するものがあったのか。

 静かに一歩引いていたヒューゴが前に出てくる。そのまま私の隣に来て、積極的に青二郎の寝間着を脱がし始めた。

 共感の言葉に苛立ち含みで振り返ったセリアン氏はヒューゴの顔を見て、一拍ぽかんとした。


「……男?」

「男」

「そうか……先程の言葉に、嘘はないんだな」

  

ヒューゴを指さし呟くセリアン氏に、ぐっと己に親指を向けて頷くヒューゴ。

 二人の視線の間に走るもの。

 それは共感と理解の色だった。

 あれ? 女装歴十余年の少年と美少女面の少年の間で友情が芽生えかけてる……?

 なんか変なところで変な共通点(同性からの求愛に迷惑したことがある)を基軸に妙な友情が成立してしまった気がするよ。深く関わると面倒そうなんで、見なかったことにして青二郎周辺に色々びっくりグッズのセッティングしていこうかな。

 えーと……枕元にSAN値が激減しそうな邪神像は必須でしょ。でも青二郎のヤツ、体の方はのっそり上半身起こしてんだよな。盛大に首が痛くなりそうな勢いで船漕いでるけど。今も化粧係と化したセリアン氏が手を添えて固定している瞬間を除けば前のめりに自らのお膝へダイブしてしまいそうだ。

 

「……」


 顔面から前方へ突っ込んでいきそうだな、と考えた瞬間に、ふと出来心。やりそうだなって思うと実行せずにいられない。

 使えそうな物はと見回すと、テーブルの上には恐らく侍従さんが用意したらしき夏の味覚(フルーツ)

 そこにひっそりと鎮座する、西瓜とメロン。

 いつも思うんだ。お前ら瓜だろって。

 果物じゃなくて野菜だろって。

 あと夏休みのスイカ割り、たまに頭突きで割る奴いるよね。え、いない? うそ、前世の私の周囲だけ?

 私は青二郎の膝よりちょっと先くらいに西瓜を転がし、前じゃなくて後ろに行った時のために枕へそっとメロンを埋めた。まるで巣に鎮座するドラゴンの卵のように。いや、本物見たことないけど。

 なお、青二郎がマジで瓜を割ったら、その時は皆で美味しく食べる所存である。逆に青二郎の頭が割れたら、その時は桃介に治療させよう。うん、完璧だな。


「エドガー、何をしているんだ?」

「ほら、メロンはともかく……スイカの汁が飛び散ったらお洗濯する人に申し訳ありませんでしょう?」

「それはそうだな」

「オリバー、何かお持ちじゃありませんかしら」

「蝋引き紙だったら……西瓜の下に引こう」


 気遣いのできるエドガーは良いお婿さんになりそうだなぁ。頑張って婿入り先を探してくれ。


 でもセッティングするのが邪神像と瓜だけじゃ寂しい。

 他に何か、何か……ベッドの正面に姿見移動させとこ。いい感じに青二郎の全体像が見やすいように。


「頭上に水の入った盥でも仕込むか?」

「あ、化粧が落ちるような仕掛けは遠慮していただけると幸いです」

「半分溶けた化粧のオバケ面も結構いい嫌がr……ドッキリになると思うけど」

「私は、いま、自分史上最高の傑作を作るつもりで挑んでいるのです」

「OK.台無しにはしないから安心してください」


 それじゃあ水系は駄目だな。この世界、ウォータープルーフとかまだなさそうだし。

 後は、そうだな。何か添い寝させておこうか。

 上半身裸のエドガー案はお断りされたし。

 うーん……


 名案が浮かばないまま、私は青二郎の布団に蠍(の玩具)を仕込むことにした。間に合わせというヤツである。


「これ、サイズが嘘くさいから玩具って丸わかりですのよねー。造形、着色ともにいい感じな分、そこが不満点」

「うっわ、すげぇ。ミシェル、赤ん坊の頭サイズの蠍の模型なんてどこから持ってきたんだー?」

「私物よ。家から持参したわ」

「え、どこで買ったんだ? 俺もちょっと欲しい」

「欲しいか……?」

「かっこいいじゃん。部屋に飾りたい。ディッセルハイム13世も気に入りそうだし!」

「残念ながらフランツ、これは非売品よ。上の姉の今の旦那さんが、うちの弟に作ってくれたの。弟の趣味に合わなくて私の物になったけど」

「ミシェルの義理兄ちゃん、俺、気が合いそうだわ」


 さて、中々な仕上がりになってきたよ?

 ちょっと振り返って見てみよう。

 青二郎の前後、倒れ込んだ時に丁度頭が来る位置にはメロンと西瓜。枕元には邪神像とついでにそのへんにある小物で作ってみた小祭壇。

 青二郎と同衾するのは幼児の頭くらいの大きさはあるリアルな蠍の玩具。

 そしてベッドの中央に鎮座する、未だ意識は夢の世界をさまよう青二郎(女装)。

 いつの間にかメイクも着替えも終わり、セリアン氏とヒューゴ、ついでに着替えの補助に参加した桃介は「やりきった……っ」って顔をしていた。


「ああ、そうだ」


 仕上げに、青二郎の額が綺麗に見えるよう手を差し入れる。そして太字できゅきゅっと書き上げてやった。


『チキン』


 うん、完璧。

 さーて、そろそろ青二郎にもお目覚めいただこうかな。

 私はおもむろに、鞄の横……何かに潰されないよう、吊るしていた布袋を持ち上げる。

 それは中からガサゴソ何かが蠢く音がした。うん、元気そう!

 鮮度はバッチリだ☆

 袋の口から、黒い足がはみ出している。

 私はそれを両手で大事に抱え、青二郎へと足を向けた。




青二郎の身を悲劇が襲うーー!

それは……どれだ!?

※答えはほぼ作中で言ってる。


a.女装

 ①赤頭巾のおばあちゃん風ネグリジェ

 ②すけすけセクシー☆ランジェリー

 ③ボンテージスーツ(峰不●子風)

 ④レオタード(某女怪盗風)

 ⑤新妻風エプロンドレス

b.メイク

 ①可愛い系愛されメイク

 ②女王様系綺麗めメイク

 ③女豹

 ④清楚系大人しめメイク

 ⑤殿。

c.割れたのは?

 ①スイカ

 ②メロン

 ③キュウリ

 ④南瓜

 ⑤額

 ⑥顎

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― 新着の感想 ―
5→1→4で童話のお姫様コーデだ!(願望)
更新お疲れ様です。 寝てる間に紐パン(しかもスケスケ)にされるとか地獄過ぎる(笑) まぁ端から見てるぶんには楽しいですがww それでは今日はこの辺りで失礼致します。
2-2-1…いや、まあうん。 最後は6がいいなぁ。けど流石に親の前でやるのは、青汁でもないと無理だろうなぁ
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