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騎士 4

前回から、間が……凄まじく、間が空いてしまいました。申し訳ありません。

こんなに長いこと全く何も投稿しなかった事なんて、なろうに投稿するようになってから初めての事かもしれません……。



 私(※シアン様)の魔法に敬意を表し、どうやら手札をチラッと見せてくれる気になったらしいシトラス先輩。ええと、こういう時ってなんて掛け声すんだっけ?

 今までやったことがないから、使い時が合ってるのか間違ってるのかイマイチよくわからん。

 わからないけど、まあ相手はシトラス先輩だし。まあいいや。

 応援の気持ちが伝われば、よかろう。


「シトラス、先輩の! ちょっといいとこ見てみたい!」

「馬鹿おまえ、それ一気呑みの掛け声だ!」

「……かっこういいとこ、見てみたい?」

「お前どこで覚えたんだよ、そういうの」

「シトラス先輩こそ、どこでどういうタイミングで覚えたんですか?」


 どんな心境を表してるのかは知らんが、なんか微妙な顔をされた。

 後輩の、おんなのこが、一・応・お・ん・な・の・こ・が、応援してやってるっていうのに失敬な。


「余計な気が散るから、傷病人はそこで黙って見学してなさい」

「シトラス先輩、私べつにけが人って訳ではありませんの」

「は? じゃあなんで要介護対象って扱い受けてるんだ」

「あー……なんででしょう、ねえ」

「露骨に目を逸らすな。明らかに心当たりありますって反応するじゃないか」

「まあ、理由は自分でちゃんとわかってるんで」


 何しろ陣営の先輩方に直接説明されての待機命令だし。


「わかった上で、あの騒ぎ(※トランペット)かよ……問題児すぎる」


 悩ましげな顔をしつつ、これ以上は話していられないとばかりにシトラス先輩は戦場へと向かうのであった。

 その右手に剣を握り、左手をおもむろに懐へと忍ばせながら……


 おぉ、シトラス先輩、本気だな?

 本気で、緑の国流の戦い方を一端なりと見せてくれるおつもりで?


 シトラス先輩は青汁の護衛兼お目付け役だ。

 当然ながら本人も緑の国ご出身で高位の貴族家に生まれたこってこての緑の国民である。


 ところで前世でプレイした乙女ゲームの話だけども、主な舞台は魔法学園でありながら、攻略対象どもはそれぞれ別の国生の別の国育ち。出身地が異なるが故に、それぞれにも特色がある。そう、お国柄というやつである。魔法なんてファンシー(笑)でファンタジー(笑)を主軸にしてるんで、みんな魔法にかすりはするけど、生態の違いが端々に滲み出る。個々の戦い方や、戦闘時のポジションもそれに当てはまった。

 赤の国だったら元祖魔法の国と言われるだけあり、国民全体がそもそも大陸全体の平均値より高めの魔力を持って生まれるし、魔法系技能への適性が強い。本来の【魔法】が廃れて精霊魔法を代用するようになった今でも、適正の強さ故に(精霊)魔法使い人口は多めだ。そんな我が祖国の軍の特色として、魔法騎士団の存在が挙げられる。なんか他の国は騎士団作れるほど魔法騎士いないっぽいよ。

 青の国だったら知識の国って言われるだけあって知略軍略に優れていて、細部まで作戦の行き渡った行軍をこなすという。逸し乱れぬ集団戦と搦手がお家芸だとか(結果、陰湿と言われる)。

 黄色の国だったら物理特化の精強な騎士団が有名だ。代々の国王はパワーブーストなしに象だって持ち上げちゃうとかなんとか。本当かよ。

 あそこは魔法に頼る=軟弱って思考の、真·脳筋の国だからね。さすが肉壁の国。一度は行ってみたいね。

 桃介んとこは回復、医療系に特化していて後方支援に当たらせれば間違いはない……が、前衛もいる。いは、するんだけれど……回復系特化の前衛という謎の存在だ。

 奴らは一般に『白騎士』と呼ばれる……が、一部からは不死の軍団って呼ばれとるそうな。ゾンビかよ。いや、怪我を負っては自己回復し、ふっ飛ばされては自力で復活して攻撃を続けるそうなんで、絵面はまさにゾンビアタック。トドメを刺さない限り戦い続ける為、継戦能力は同盟国一と謳われている……。大陸で最も戦いたくない軍として名高い(気持ち悪いから)。


 さて、以上を踏まえて緑の国ですよ。

 緑の国の特色は、ずばりモノ作り。

 あそこって何でも手広く研究、作成に明け暮れる職人の国なんだわ。

 そんな緑の国の、軍人の戦い方とは?

 前世の私はこう呼んでいた。


 −−ド●えもん殺法、と。


 だって、お前らどっからそんな取り出すの?ってくらい。どこからともなく、種々様々な不思議なアイテム取り出すんだもん。そんで敵にぶっ放すんだもん。腹に四次元ポケットつけてるの? ねえ?

 正直、お前らだけ若干、なんかジャンル異なるんだよ。うっすらと。

 なんつうの? ちょっと違うかもしんないけど、強いて言うなら奴らだけ微妙にスチームパンクみがある。

 

 前世、ゲームで戦闘シーンを披露した緑の国キャラは私が知る限り二人だけ。シトラス先輩は、そんな貴重な緑の国の戦闘員。果たして一体、どんな戦いぶりを−−?

 私は内心、ワクワクしていた。ソワソワしていた。

 これは期待を裏切られたら……失意のあまり、シトラス先輩にニードロップを炸裂させてしまうかもしれない。


 私の期待を知ってか、知らずか。

 どっちでも良いけど、裏切られたと私の主観が感じるか否かでシトラス先輩への対応は変わる。

 シトラス先輩が懐からぬるっと取り出したるもの。

 それは細長い……うん? なんかアレ、前世で読んだヤンキー漫画に似たようなの出てきたような?

 具体的に言うと、警棒に見えますね? 折りたたみ式の。

 片手に剣、片手に警棒。

 なんともシュールな……その組み合わせの二刀流って、ちょっと早々見ないような。

 ……おや? シトラス先輩の、左手(警棒握っている方)の親指が謎の動きを−−?


 バチッと。

 乾いた空気が弾けるような音がした。


 ……ん?

 んん?

 私の目は良い。とても良い。

 視力も悪くないけど、それより非物質な精霊様方を幼い頃から瞳に映し続けたせいか……人より、魔力的なものを見る方向で目が『良い』。

 そんな私の目は、いましっかりと。

 シトラス先輩の握る警棒に、弱くて小さい『黄色』の精霊様がちょろちょろとたかり始めているのを視認していた。

 あれ、微弱な電流が流れてるんじゃね……?


「グロリアスは緑の国の戦士が戦うところを見るのは初めてか?」

「え? あ、ああ……話に聞いたことはあります。でも、実際にこの目で見るには初めてですわ」

「そうかー。では、少し驚くかもしれないな」

「なんでも、多種多様な道具を駆使したトリッキーな戦い方をするとか?」

「そうそう。使う道具によって、同じ緑の国の戦士でもまた色々違うんだよ。ただ使っているだけか、使い熟しているのかでも変わるし。いざ敵に回すと、何をしてくるのかわからん得体の知れなさがある。絶っっっ対に披露してくれた以上の何かを隠し持ってるしな」

「奥の手は見せない、というやつでしょうか」

「敵に回したら、どう戦うか。想定を立てにくくはあるが、この戦いを見てみるだけでも勉強になるだろう」

「そうですわね……余計な先入観は一旦置いておいて、シトラス先輩を仮想敵と見立てて勉強させていただきまーす」


 おや? なんだか今、シトラス先輩のいる方から「今なんか不穏なセリフが!?」とかなんとか聞こえたよーな……まあ、気の所為だね! 幻聴幻聴!

 さーて見るのも勉強。がんばるぞー。


 シトラス先輩が戦闘地帯へ近づくと、魔法騎士コースの先輩達がチラリと横目でシトラス先輩を確認し……次いで、ずざざっと後ずさるようにノキアから距離を取る様子が見えた。うん、皆様、反応良すぎない?

 いきなり距離を取られて、困惑するノキア。今まで激しく打ち合っていたのにね。

 だけどそこに、シトラス先輩のド●えもん殺法が襲いかかる……!


「せいっ」


 掛け声とともに掲げ、投げつけ……って剣を投げつけおった!? 警棒の方ではなく!

 私も、きっとノキアも予想してなかった。

 けど諸先輩方が半ば予想通りって顔してるのはなんでだろう?

 慌てず騒がず警戒の顔つきで飛び退るノキア。

 波が引くように、更にずざざっと距離を空ける先輩達。

 ノキアの両足が完全に地を離れたタイミングで、シトラス先輩が叫ぶ。


「緊縛拘束、発動−−!」


 …………いま、なんて?


 きっと私は、怪訝な顔をしていた。

 そしてノキアも、怪訝な顔をしていた。

 私達の思考が止まっても、時は止まらない。


 ノキアの足元近く、地に突き刺さったシトラス先輩の剣。

 一見何の変哲もないそれが、シトラス先輩の声に反応して激しく振動した。

 え、アレ自爆でもすんじゃね?

 私のそんな感想は、思いっきり外れて。

 

 ぞる

 ぞるるるる……っ

 ずろろろろろろ!!


 えっ何アレ。

 剣から触手生えたんですけど。

 イソギンチャクの触手を、太く太くながぁーくしたかのような、生々しくも肉々しい触手。

 目測になるけど、太い部分は直径15cmくらい?

 そして長さは半径3mくらいかな……?

 それが一気に一斉に、最も近くにいた獲物(ナマモノ)−−ノキアに襲いかかる。


「そいとぉおおおおお!?」


 地に足つけていなかったことが、裏目に出たな。

 宙にいて、一瞬の動作の遅れ。

 加えてシークレットな履物のせいで、足元が不如意だったんだろう。

 まさに獲物に襲いかかり、獲物を逃さぬ軟体動物のように。

 ノキアの手に、足に、胴に首にと触手は絡みついて離れない。まるで生贄を深淵に引きずり込む、地球産邪神の如き絵面だった。捕食、捕食されそう……まさに軟体動物(イカやタコ)に捕まった獲物が如く。

 そこにすかさず、死角に回り込みつつ、駆け込んでくるシトラス先輩。

 身動きが自由にならないながらも、ノキアはそれに速攻で気づいた。

 手にはいつの間にか大ぶりのナイフ。せめて腕一本でもと自由を求めて絡みつく触手にナイフを下ろすが……ぼるぉぉん。そんな感じの鈍い効果音とともに、ナイフを弾き返す触手。反動で、ノキアの手から零れそうになるナイフ。ノキアは間違っても取り落とさないよう、ナイフをしっかと握り直す。

 さあ、どうするノキア?

 こうなってはもう、触手に巻き付かれたままシトラス先輩を迎撃するしかないぞー?

 ノキアが触手に拘束されてチャンスなのに、魔法騎士コースの先輩方が攻勢に転じないのもなんか怪しい。あれは十中八九シトラス先輩の手にある電撃警棒を警戒しているな? つまり、シトラス先輩の手を、少なからず知っている……?

 一体何が起きるのかと、私がワクワクする中。

 シトラス先輩がノキアの攻撃圏内からわずか外側で足を止める。おおっと、その位置じゃノキアの攻撃はナイフを投げないことには届かない。だけどシトラス先輩の攻撃だって届かないはずだ。

 ……つまり、近接戦闘ではない?

 見学しながら考察するのも、楽しい。

 シトラス先輩は何をするつもりなのかしら?


 皆が見ている前で。

 シトラス先輩はおもむろに構えた。


 近くに置いてあった、消火用水(焚き火用)入のバケツを。


 ……あっ(察し)。




 3分後、触手ごと濡れネズミと化したノキアの悲鳴が木霊した。南無三。

 



シトラス先輩のお道具メモ

1.剣

商品名『縛鎖の剣』

メイン武器の顔をして、主な用途は拘束用の武器。普通に剣としても使える。

使用者登録した声で発動用、解除用のキーワード設定が必要。※誤作動を防ぐため、日常会話では使用しない単語を推奨。

一度発動させる度、一々解除しないといけない。連続使用不可。

 魔法騎士コースの先輩方と研究コースの生徒達はシトラス先輩がこの剣で青汁を拘束する光景を一度といわず目撃している。


2.電撃警棒

商品名『雷撃棍棒ビリー11号』

7歳の青汁がいたらん好奇心を爆発させて完成させた電撃魔道具。完成直後に親御さん(王妃)が青汁から没収したが、普通に魔道具として優秀だったので製品化された。取り扱いには注意を要するため、治安維持や国防に関係する者にのみ配られている。

 手元のスイッチ操作で対象へ与える電撃の強弱が調整可能。肩凝り腰痛改善モードから殲滅モードまで。

 魔法騎士コースの先輩と研究コースの生徒は、一度ならずシトラス先輩が青汁(護衛対象)をこの警棒で無力化させる光景を目撃している。

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― 新着の感想 ―
中々ぶっ飛んだ武器だけど 元々のゲームにもあったのか気になるところ。 C○ROさんがA判定するのか的な意味で。
スタンバトンはバイオでシェリーが使ってたやつみたいなのかな?イメージしやすいな。 触手剣は……ケンすけ? ドラえもん方式……。ぶっちゃけ、武術極めるよりは練度の高い雑兵をそろえられそうで、有りなんだろ…
質量体積無視した拘束具だなぁ(無粋) どう考えても片手剣で収まるサイズちゃうやん。 この辺の物理常識を覆してるのも青狸殺法と呼ばれる所以か? 真面目に考察すると剣に収納してるんじゃなくて召喚魔法の類…
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