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8-8

お待たせして申し訳ないです。

獣王国 アーネット


 敵の雑魚が、一斉に飛び掛かってきたので相手をしていたが。

 その間に大将らしき者を逃してしまうとは、思わなかった。


「ちぃっ! 一瞬で終っらしてしまった」

「いやいやいや、普通一瞬で終りませんからね。相手が数十人も居るのに……」


 俺が、悔しそうにしているとカレドが若干引きながら声をかけてきた。

 確かに、俺の周りは肉片と血の海となっている。

 だが、全然物足りないのだ。


「そうは言うがな、カレド。相手は、恐怖に駆られて束になってきただけで、全く俺としては脅威では無かったんだ。分かってくれないか?」

「分かれないな~、その感覚だけは。トリスタンと語り合ってください」

「トリスタンが居ないから、お前に言ってるんじゃないか」


 俺がそう言うと、カレドはやれやれといった様子で首を横に振った。

 この感覚が分かるのは、トリスタンしかいないのか……。

 俺が、若干しょんぼりしていると報告の兵が声をかけてきた。


「報告します! 敵勢力に動きがあり、迎撃態勢を整えています」

「分かった。全軍に通達しろ。今日は休め、と」

「はっ!」


 俺がそう言うと、報告に来た兵は少しホッとした様子で陣内に命令を伝えて回った。

 まぁ、今回の場合はこれで良いだろう。

 相手は、来もしない俺達の幻影と戦っていただこう。


 翌日の朝、途中で起こしたので寝不足の者も居るが、まぁ概ねよく寝ていた方だろう。

 兵たちは、すぐさま準備を整え日が高くなり始める頃には、進軍を開始していた。


「敵襲! 敵襲ぅぅっ!」


 こちらが進軍を開始して、少し行ったところで敵の物見の声が響いてきた。


「お? 敵もやる気だな」

「多分、夜襲を今か今かと待ち構えていたはずですから、ボロボロでしょうけどね」

「はははは、それだったら悪いことをしたかもしれんな」


 カレドと二人で、そう言って笑っていると、ローエンが目の前に進み出てきた。


「アーネット様、先陣は私に切らせて頂きたいのですが」

「……良いだろう。先の夜襲の功績もある、張り切ってこい」


 俺がそう言うと、ローエンは一礼して兵を率いて敵陣目掛けて進んでいった。

 正直、俺が乗り込んで全て倒しても構わないのだが……。

 俺がそんな事を考えていると、カレドがジッと俺の方を睨んでいる。


「そう睨むな。ちゃんと自重しているじゃないか」

「そうですね。ちゃんと部下に功績を譲ったのは良かったです」

「全く、いつからお前は俺のお守になったんだ? お前が見張るのは、トリスタンだろうに」

「トリスタンの方が落ち着いてきましたよ。全く、一時は将軍になったという事で、落ち着いてきたかと思ったんですが……」


 そう言うと、カレドは深くため息を吐いてきた。

 まぁ、俺がちゃんとしているのは、国王であるディーの体面を保つためだけだ。

 それ以外に関しては、正直あまり気にしていない。


「ディーの前でちゃんとしているんだから、良いだろ?」


 俺がそう言うのと同時に、敵陣から喚声が上がった。

 それと同時に、こちらのローエンの部隊が突撃したのだ。


「突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 意外とよく通るローエンの声に呼応して、歩兵隊が一斉に走り始める。

 それと同時に、隊の後方から魔術師と弓兵による防御魔法と援護射撃が展開される。


「よし、ローエンが突撃している間に、中軍は後詰。後軍は陣地を作っておけ」

「はっ!」


 前方の戦闘を見ながら、俺が指示を出すと兵たちが動きだした。

 俺が指揮する中軍は、前軍との距離を少し詰めた。

 軍の間をあまり詰めすぎると、前軍が崩壊した時にこちらまで混乱しかねない。

 そんな事になれば、こちらが惨敗する。

 そうならない為に、前軍に逃げ道を用意しておくのだ。


「もう少し詰めますか?」

「いや、ローエンなら大丈夫だと思うが、念のためだ」


 俺は、カレドにそう言うとジッと戦場を睨みつけた。

 戦況は、正直思わしくない。

 ただ、ローエンの部隊運用が的確なので、混乱には至っていなかった。


「とりあえず、柵だけでも壊せたらあとが楽なんだがな」

あれ(・・)もありますからね」


 俺達がそんな事を呟いていると、ローエンにも思いが通じたのか部隊が柵にたどり着き引きはがし始めた。


「よし! ローエンは中々いい動きをしている」

「しかし、相手の槍兵が少なくはないですか?」


 冷静に戦場を見ていたカレドが、そう呟くと俺ももう一度見回してみた。


「確かに少ないな……。いや、少ないんじゃない。前方に居ないんじゃないか?」

「……あぁ~確かに居ませんね。そうなると、相手は――」

「騎兵の後方突撃を、警戒しているという事だ」


 なるほど、それで森の中へと入って行ったのか、あの黒騎士は。


「しかも、前方は奴隷兵ですね。さっきからどうも装備がぐちゃぐちゃで見難いんですよ」

「なるほど、それでローエンがあそこまで押し込めているのか」


 俺達が、話している間にも戦場は動き続けていた。

 先ほど柵に取り付いた歩兵たちが、一斉に柵を破壊し始めたのだ。

 対して、相手の兵は遠目から見ても統制が取り切れていない。

 野戦なら、数で押し切れただろう。

 だが、陣地に籠ったのが仇っとなったのだ。

 特に奴隷兵の統率は、かなり難しい。

 無理矢理戦場に駆り出しているのだ。

 戦意が低いのは当たり前、としか言えない。


「ん? ローエンの歩兵隊が柵を壊したところで、退きましたね」


 押し込んでいる状況で、兵を引き上げる?

 俺も、カレドも一瞬ローエンが何をしているのか、それが分からなかった。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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