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7-11

北方諸領土連合国 アレクサンド王


 ここ最近、連合の北の果てで内乱が続いている。

 こちらから兵を派遣してはいるのだが、何度派遣しても撃退されて帰ってきてしまうのだ。


「えぇい! 我が国には将は居らんのか!?」

「アレクサンド王、此度の反乱はただの部族独立運動とは訳が違うのだぞ」

「ぐぬぬぬ! 分かっておるわ! ドローレン王!」

「だ、だが、手をこまねいてるわけにはいきますまい。そろそろ我が領内の内陸でも怪しい動きが出始めており……」


 この北方諸領土連合国は、小国の王が寄り集まって会議で国家運営方針を決定するという極めて珍しい国だ。

 そのおかげで、これまで間違った動きになることは少なく、帝国相手にもジーパンの海賊相手にも遅れはとっていない。

 もっとも、決定的な一撃もあげられていないのだが……。


「クルクス王の言う通り、この状況で手をこまねいてはいられない。これまでは三者で別々に兵を派遣していたが、今回は合同で行こうと思うが?」

「事ここに至っては致し方ない。俺は賛成する。クルクス王はいかがか?」

「わわ、私も問題はない」


 まったく、儂が提案した話をまるで自分の提案の様に話おる。

 このような若輩になんで気をつかわねばならんのだ。

 儂が不満に思っているのは、ドローレン王の事である。

 彼の王は、今年やっと25の新進気鋭の若き王なのだ。

 対して儂は、既に在位30年を数え、今年で65。

 そして、クルクス王は……確か、40半ばである。

 

「……さて、では儂の提案が通ったので派兵の時期だが――」

「今すぐだろう。準備ができ次第叩く。敵に時間をくれてやる必要はあるまい」

「な!? こんな時期に行軍だと!? お主は何を考えておるのだ! ドローレン王!」


 儂がそう言うと、ドローレン王はこちらを見てニヤリと笑ってきた。

 こやつがこういう顔をするときは、決まって難癖をつけてくる。


「フン! どうやらアレクサンド王は、臆病風に吹かれたらしい! なぁクルクス王!」

「あ、いや、その、そうと言う訳では……」

「ぐぬぬぬ! 良かろう! 我が軍が精強なることをお主たちにも見せてやる! では各々領地に戻って即座に派兵の準備を進められよ! 後ほど日付を決めて送る故、遅れることだけは許さぬぞ!」


 儂がそう言うと、クルクス王は額の汗を拭いながら、ドローレン王は自分が主導権を握れたと思って満足そうにこちらを見ていた。



北方諸領土連合国 最果て ????


 おいの目の前には、少し気の弱そうな顔をした男が座っちょる。

 そん男は、こっちを見るなり一瞬ぎこちない笑顔を向けたか思うと、すぐに顔つきが変わった。


「さて、どうにか卿の計略通りに事が進みそうですぞ」

「それはよか、おいの考えだけでなく、おまんの腹芸のおかげたい」


 おいがそう言うと、男は頭振って謙遜ばしてきよった。


「いやいや、ナカズカサ殿。卿の言う通り議題を提案したら、あの二人すぐに仲違いを始めて意地の見せ合いになったわ」

「それは、よかちょ。ばってん、これからが勝負じゃ」

「うむ、後は兵を上手くあの地に追いやらねばならない。その為の方法だが」


 男は、おいにいくつか考えた策を聞かせてきよった。


「……ふん、そんた良かね。全部やってしめ」

「一安心した。ナカズカサ殿の意見があれば上手くいくだろう」

「じゃっどん、不自然にならん様にそこだけ気を付けや」

「うむ。その点に関しては細心の注意を払おう」


 男はそう言うと、おいの住んどるボロ小屋を後にした。


「さぁ、ここでもやってやろう。異国ん地で沖田畷や」



 1ヶ月後。

 男が言うちょった通りに、街道が封鎖され、迂回路を進むように仕向け、湿地帯へと誘い込むことに成功しよった。


「しかも、こけきて濃か霧まで出てきた。こいで我が計成れりだ」


 山間の湿地帯に誘い込まれた敵の兵たちは、後から後からやってくる割りに道が狭く、完全に行き詰まっちょった。

 それに対して、おいの兵たちは山間に潜ませ、食事も何もかもをしっかりと取らせ、鋭気は万全。

 負ける気配なんぞ微塵も無かと。


「ナカズカサ殿、兵の配置完了しました。後は皆、合図を待つのみとなっております」

「よろしか。まだしばらく引き寄せっ。しっかりときばいもんせ」

「き、きばい?」

「ん? あぁ、えっと頑張れじゃ」

「了解しました」


 おいの言葉を伝えに、また兵が動きだすと、じっくりと相手を見ちょった。

 馬のいななき、兵の声。

 それらが、徐々に広がって来るのを感じた。


「まだ、まだ、まだ……。今! 合図を挙げよ! 全魔法をぶっ放せぇ!」


 おいの合図と同時に、全魔法兵が一斉に沼地へと魔法を放つ。

 それと同時に、おいが先陣切って走り始めた。


「な、ナカズカサ殿が突っ込まれたぞ! 後につづけぇ!」

「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」


 そっからは、簡単な戦。

 ただただ、兵を殺し、将を殺し、目の前の敵を屠り続ける。

 首だけを、大将首だけを全員が取りに行く。

 相手は、重い鎧でぬかるみに足を取られて動けん。

 じゃっどん、こっちは軽い鎧短い刀で敵を切り裂いていく。

 恐らく後になって思うじゃろ。

 倍以上の兵力持って、自分らが負けたと。


「ナカズカサ殿! 敵が撤退を始めました!」

「ここからが戦いだ! あん山超ゆっまで敵を追い殺せ!」


 北方諸領土連合は反乱勢力とのこの戦いで、ドローレン王とアレクサンド王の二人に兵数千を失う大敗を喫する。

 そんな状態の折に、「無傷だった」クルクス王は北方諸領土連合を実質的に支配できる地位へと上り詰めるのだった。

次回更新予定は4月26日です。

今後もご後援よろしくお願いいたします。


※鹿児島弁?博多弁?って感じになるかと思いますが、すみません。読みやすさを入れながら書いたのでその辺はあまり突っ込まないでください。もし、これは確実にどっちでもない!ってのがあったらメッセージで該当箇所と一緒に教えてください(;´・ω・)

※感想にあった部分を修正+語尾の一部を修正。2019.04.24

※感想にあった部分以外も全面的に修正をかけました。セリフのみとなりますが違和感はだいぶ消えるかと(;´・ω・)2019.04.24

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